エロゲ初心者にはとても良い教材。しかしながらサブヒロインの設定にこそ、このゲームの真価があったように思う。
Hulotteさんの神ヤバ、調べればシリーズモノらしいのですが同社作品は初めてのプレイとなりました。
本作は軽快なテンポに嫌みのないキャラクター、笑いに多少のシリアスなどもありまさにエロゲ入門書的な内容。よく出来ていました。
初心者でもとっつきやすくプレイしやすいというのは最大の強み。半面活かしきれていない設定や粗があり、多少エロゲに慣れた人にとってはもう少し突き詰めていれば・・・という消化不良がイマイチなところという感じでしょうか。
エロシーンは平均的な萌えゲよろしく5シーン程度ですが、下着や濡れの差分など下ひn。。。細かい部分にしっかり手が入っていたのは好印象。内容も長さも私にはちょうど良くて、「これでいいんだよ!」を地で行った久しぶりの作品。
ただサブヒロインはもう少しシーンが欲しかった。そしてこのゲームの設定の神髄は正しくサブヒロインにあったと思うので、ここをメインに据えなかった判断は悪手だったように感じます。
総合的には良くも悪くも気楽にプレイでき、エロゲ初めてたての人にお勧めする内容といった作品。
・ストーリーについて
縁結びの呪いをやりにやったが為に縁がこんがらがった絶望的な状態の主人公がなんとかヒロインと結ばれようと頑張る話・・・なんだけども、総理大臣の娘とか現役アイドルとの縁がある時点でとんでもなく恵まれてるじゃねぇか・・・というツッコミは野暮なんでしょうか?
期限内に縁カウンターのカウントをゼロにして女の子と結ばれないと一生DTという話だったのにゼロにする前からセックスしてんのはなんなんですかね・・・?
とかいろいろ(個人的な嫉妬による)腑に落ちない点はあるものの、作品としては笑いあり涙ありシリアスあり悪意あるキャラなしという初心者向けバラエティパック。よく出来ている。楽しい。
しかしながら魅力的に誂えられた設定を生かし切れていない側面があるのも確か。
縁カウンターなんて面白い設定を持ち出してきたのにその実ただのエスカレーターでユーザーが介入できる余地は無いし、総理大臣の娘や探偵といった要素もはっきり言って必要がない。(詳しくはキャラで後述)
縁カウンターについてもう少し言うならば、数字に対する目安がないのもプレーヤー心理をモヤモヤさせる。結局のところ数億だろうが十幾つだろうが何も変わりがない。
更に言えばこの設定の肝は『縁カウンターが見えない相手と結ばれるために奔走すること』ではないかと思う。どうあっても結ばれることのない運命にいる相手を好きになって、それでもなんとか運命に抗って勝ち取っていくことこそ本作設定における最大の魅力だったのではないかと。
その意味では本作サブヒロインにあてがわれた設定こそメインにふさわしかったので、ここが作品としてピックアップされていなかったのは非常に勿体なく残念に思った。(麗は仕掛けにおいての肝なので例外として)
と、細かくつつけば粗はあるものの、総合的にはよく出来ていると評していいと思います。単純なエロ・ギャルゲに収まらず、同調圧力の怖さや踏み出すことの大切さや難しさなど社会的な切り口も備えていて考えさせられる部分もある。
エロゲ始めたての人には入門に、ちょっと慣れた人には箸休めに丁度良いといった作品でした。
・キャラについて
どのキャラも魅力的に描けていて悪い印象のあるキャラがいないのは好ポイント。
個人的にはヒロインをおさえ、親友ポジの泰然が一番好感を抱くキャラに。笑。彼はすごい。男から見てもカッコいいしモテない理由がわからない。
ヒロイン勢では個人的に珍しく(?)好きになれないキャラがいなかった。どのキャラも可愛く描かれているのは文句なくこの作品のストロングポイントでしょう。鈴天!鈴天!
半面もう少し設定の方は食い込んで来て欲しかった。
総理大臣の娘といわれてもその設定が必要なエピソードが特に存在しない。お付きの花夜さんの存在にしてもそこそこの大企業の令嬢でも通る設定でしょうし。
ゆかりの探偵要素にしてもルートでそこがピックされることはなく、よくある単にエラく察しのいい後輩キャラといっても代替は効く。
鈴奈さんくらいでしょうか。アイドルという振り分けられた設定と真っ向から向き合ったキャラは。このあたりの突飛な設定の割り当ては『単に学生というだけでは弱いから』という消極性が見え、活かしきれていない半端さと併せて明確に作品の質を押し下げていた。
麗に関して、手厳しいレビューも散見されますが、私見としてはまぁアリではなかったかと。幼くして亡くなった・生まれることができなかった子は神様になる、という土着信仰も今なお聞く話ですし。
消えてからの復活はもう少し引っ張ってもよかった気はしますが、あくまで神様という設定を安易に崩すことなく、且つ実妹とも言い難いスレスレの設定を活かして描き切ったのは感触が良かった。麗ルートを経て他ヒロインをプレイするとなかなかにつらい心情も透けて見え、二度味わえるキャラというのもgood。
ということで、やはり初心者向けのお手本というような寸評。
設定等を深く考えなければ、小気味いい掛け合いにクスッとさせられるしキャラのかわいさでプレイの満足度はそれなりに得られる。
エロは長さも描きこみも私的には丁度良く、ダレることもなかったので終始楽しく(意味深)プレイできたのも高評価。
確かに不満もあるものの、プラマイで言えば十分プラスの方に傾き、良作と評して問題はないでしょう。
それだけにもう少し練られていればもっと上に行けたなと思うと惜しいところ・・・。
それにしても久しぶりにこういったゲームをプレイして何か浄化された気分。。。はぁ~。。。