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KetTさんのリベリオンズ Secret Game 2nd Stage BOOSTED EDITIONの長文感想

ユーザー
KetT
ゲーム
リベリオンズ Secret Game 2nd Stage BOOSTED EDITION
ブランド
FLAT
得点
83
参照数
48

一言コメント

デスゲームをエンターテインメントとして描き切った作品。前作より良く出来てるが、ならではの不満点も。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

FLATさんは前作『シークレットゲーム』に続いて2作目のプレイとなりました。本作は『リベリオンズ』、正統続編です。
1で感じた不満点は正直少なくなかったのでどのような作品となるかと思っていましたが、蓋を開けてみればそこはほとんど解消されていて驚きの出来。
ただ前作よりもショー寄りの群像劇的な構成で、1のような作風を期待すると少し肩透かし。2話以降はこれはこれでと切り離して楽しむのが正解なのかもしれません。
もう少しと感じる部分がないわけではないものの、概ね高いレベルでまとまっていると言って良い作品。
最後は…凄いですね。。。全く予想してなかった。。。


・ストーリーについて
突如デスゲームに巻き込まれた14人の少年少女たちが理不尽に抗おうとする話。初めは同年代で固めたことを懐疑的にも思いましたが、終わった今考えると本作はこれで〇。
前作で個人的に“惜しい”と感じた点はある程度カバーされており(良かったら1のレビューをどうぞ)、作品としてのクオリティは目に見えて上がっている。
特筆すべきは多くの場面で会話劇を多用したこと。信頼を結んだ間柄で殺し殺されるという最悪な状況を描くに、一番のキモとなる彼らの心理心情表現の大部分を不自然さ無く会話中心に成り立たせたのは高く評価出来る点。ここが実は1で一番引っかかっていた部分だったので、本作は文句なく良く出来ていたと評します。
しかしながら、期待した作品感とちょっと違ったのも事実。
前作が総一を主人公としたのに対し、今作は修平をベースにしながらもそれぞれにスポットを当てる構成。エピソード1こそ修平視点が主であるものの、エピソード2以降は主眼に特定のキャラを置かないスタイルとなり、一種のショーを見てるような観劇的な色合いが強くなる。
故にキャラクターから視点が一歩退いてしまい、思いのほか彼ら個々人の味わう緊張感や切迫感は俯瞰に追いやられてしまった。1はその辺りが良く出来ていたので、今作はそこが評価を悩ませる部分。
まぁ予告しかりメタ発言しかりでその辺りは割り切った上で狙って作った感じもあるのですが、続編タイトルである以上前作の作風を期待してしまうユーザ-心理に対し、あまりにも物語然としてしまったところだけは残念でした。


・キャラについて
気になったのは瞳の描写、一点だけ。
戦闘訓練を積んだキャラクターというのは理解しつつも、それなりに重量のあるチェーンソーで銃弾を捌くのは流石にやりすぎ。過度な描写は一気にフィクション臭くなってしまうのでここは常識的な範疇に納めたほうが絶対に良かった。
様々な指向のキャラをバランスよく配置して活かし切ったのは◎。特に1で不満点だった策士キャラもちゃんと機能していたし、慎重派と楽観派のキャラの落差・善性と悪性・過去と現在の対比など贅沢に盛り込んだ要素も全てがクオリティを上げるのに一役買っていた。

あと、やはり触れておくべきはまり子さんでしょうか。
ラストのラスト、前作文香さんの格好で出てきた一枚絵は思わず声が出た。「ええええええぇぇぇ!」ってド深夜に叫ぶというご近所迷惑をやらかす始末…。ごめんなさい。。。
見た瞬間「あ、そういうことなのか…」と一瞬で全てを理解する感覚はこの作品のまごうことなき強みの一つ。ただ宣伝はちょっと過剰だった気がします。私はプレイ前は必要以上の情報を極力入れないスタイルなので、1に繋がるということはプレイ中知りませんでした。だからこそ驚きや衝撃が強かったという側面もある。
終わった後にHPを見たのですが、衝撃の結末という文言と共に『必ず前作がプレイしたくなる』との煽り文句が。勘のいいプレーヤーならきっとそれだけで仕掛けの存在に感づくでしょうし、何かあると思ってプレイするのとそうでないのとでは情報の受け方に差異が生まれる。この過剰なアピールは本作では勿体ない要素です。
また、プレイ中のエンドロールでも『1に続く』とハッキリ描写されていて少し情緒と余韻に欠ける。ここまで自信をもって作り込むなら情報としては少し匂わせる程度の方がまとまりとしては上品だったように思います。
声優も、1に繋げるなら完全に変えた方が良かった。まぁこの辺りは制作過程による都合もあったのかもしれませんが。


・エロについて
特筆する部分は特に無いのですが、前作で不満点の一つとして挙げていたので少しだけ触れておきます。
今作では大祐が輝いていましたね、悪い意味で。ですが極限状態に追い込まれた人間の心理としては、特に不自然でもないのではないでしょうか。
結局のところ極限状態というのは想像するしかないのですが、それでもあまりに肌感覚と懸け離れてしまうとリアリティを損なうことにも繋がってしまうので、本作は人間の本質とサバイバルゲームを描くに概ね良いバランスを保ち続けたのではないかと思います。回想シーンそのものがないことは賛否あるかもしれませんが、それはそれとして。
主人公が固定されていなかったのはカップリングへの配慮もあるのでしょう。そりゃ琴美がいたらほかの女と寝る訳ないよね。。。ってことで、群像劇的な作風だからこそ納得できるエロシーンの使い方。
個人的には司と玲のカップリングが一番微笑ましく見られました。


ということで、正しくデスゲームをエンタメに昇華した作品という総評。内容の良し悪しは別として、描き方としてはこのジャンルの一つの到達点なのかもしれない。
終始わかりやすく状況描写が適量。この手のジャンルは瞬間的な理解のしやすさがテンポと緊張感を生んでいくので、『人を選ばないわかりやすさ』は非常に大事なファクター。読み手の手を止めるような難しい単語や言い回しを避け、ライター独自の独りよがりな表現をも極力削ぎ落したライティングは総じて高いレベルに留まっていた。
人の生き死にを扱う作品は変にお話を高尚にしたがってしまう傾向がありますが、本作は芸術性や崇高さよりもエンターテインメントとして誰もが楽しめるゲーム作りを突き詰めた作品という印象。
書き手の気概が感じられるお話はやっぱり楽しいなと思わされたプレイ後感でした。