ErogameScape -エロゲー批評空間-

KetTさんの夢喰い -つるみく式ゲーム製作- Re:dreamの長文感想

ユーザー
KetT
ゲーム
夢喰い -つるみく式ゲーム製作- Re:dream
ブランド
つるみく
得点
64
参照数
38

一言コメント

現代を舞台にした「そんなわけないシチュエーション」は意外と気持ちが冷めた。考えているとき何も疑問に思わなかったのだろうか? 主人公が本当にクソ野郎なので嫌悪感も強い。思っていた以上にプレイ感は良くなかった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※本レビューでは次作『HOUND』の内容に触れる箇所がありますのでご注意ください。

つるみくさんはなんだかんだ3本目のプレイとなりました、本作は『夢喰い』。作品としては初期の作品で、レビューに残している『HOUND』の一つ前の作品となります。
作風に関しては今更特別驚くこともないのですが、思いのほか主人公が受け付けないタイプで辟易することに。
反面ヒロインは粒ぞろいでさすがつるみく!・・・なのですが、やっぱり何の落ち度もない娘が堕とされるのは気分のいいものでは無く。。。
エロは概ね〇なのですが一般人の衆人環視で犯す展開だけは×。あれは全エロゲとエロゲユーザーを冒涜していると思う。個人的には最低のエロシーンでした。
お仕事パートも間延びしていて展開差分も多く、制作側のサービスは必ずしもユーザーライクにはならないということを体現してしまった作品。
ただ、ゲーム内ゲーム『払って‼巫女ッchu‼』がしっかり作られていた点は◎。


・ストーリーについて
広告代理店の男がアレやコレやでゲームを作らせて成り上がるお話。次作の『HOUND』もそうですが、普段馴染みのない業界のお話を覗くというのは楽しい体験でした。
まぁ実際の業務とは似ても似つかない部分はあるのでしょうが、それでも十分に引き込む力はあったと思います。
ただ、本作の傾向を考えると少し展開が冗長。
本作は「エロゲ制作」と「エロ」の二軸では無く、あくまで「エロゲ制作にエロを絡めた」一軸の物語。ゲームの本質はお仕事紹介とは別のところにあったはずなので、構成はもっとシェイプした方が良かった。
展開差分も多すぎて煩雑。追いきれないので、一通りCGをオープンさせたところで終わりにしました。この辺はメーカー側のこだわりやサービスでもあるのでしょうが、ユーザー視点から見れば親切さより面倒くささが勝ってしまう結果に。これに関してもシェイプした方がプレイしやすかったように思います。

ゲーム内で制作される『払って‼巫女ッchu‼』に関しては(『祓う』じゃないのか?)、あくまで本筋の為のフリだと思っていたのですがしっかり作られていたのは望外の驚き。
劇中劇のようなものを挿入する場合、あまり力を入れ過ぎると本編への批判の対象にも成り得てしまう(その分の労力本編に費やせよ、とか)ところですが、本作はその本編もしっかり作った上での『巫女ッchu‼』なので尚のこと印象は良かった。
それなりの量を代役でも収録する手抜かりのなさは、あくまで本編の進行に絡むとは言え徹底した作品作りへの姿勢として特筆するべきでしょう。


・キャラについて
本作の難点を上げるなら2点、その1点目が主人公にまつわる部分。
まずもって印象が悪い。行為はもとより言動が下衆畜生のそれなので彼に好感は全く抱けなかった。
展開上仕方ない部分はあるにせよ、ウンザリして手が止まってしまう事が多くプレイ時間が予想以上に伸びてしまったのも個人的には残念。
これは次作『HOUND』の感想でも書いたことですが、「コイツ悪人なんだけどなんかカッコ好いんだよなぁ」という部分は意識して描写して欲しかった。やり手という設定でありながら有能さが伺える実エピソードも特に無く、好き勝手に女を使っただけの印象に落ち着いてしまったのは×。
ヒロインについては声質演技力共に質が高く◎。
ただ設定として、快楽漬けで大の大人を奴隷のように扱えるのかは大いに疑問が残るところ。理由付けとしてもう一つ踏み込んだものがあればもっとキャラに説得力が生まれたように思います。
後は、やっぱり何ら落ち度のないただ頑張ってるだけの姉妹が堕とされる展開はどうにもしんどい。。。泉や静菜・秋穂みたいに理由があればまだ良かったんですけども。
響子はまぁうん、、、と言いながらも実は一番好きなキャラでした。


・エロについて
難点の2点目がここ。というよりここが本作で一番足を引っ張った部分。
基本的に凌辱メインであることは当然理解してのプレイでしたので、過酷なプレイもなんのその。スカも固形派なのでイマイチではありましたが、内容については概ね満足の出来栄え。
…なのですが。。。後半にかけて来る衆人環視の下で行われるエロシーンは特大の×。
流石にリアリティが無さすぎる。いやまぁエロゲ凌辱にリアリティを求めるのもどうかという意見もわかるのですが、あくまで「現代を舞台にしているのならば肌感覚はユーザーに合わせるべき」というのが私の持論。その意味からいうと”完全に理に適わない状況”は不自然さが際立ち、気持ちを萎えさせるに十分でした。

だって成立し得ないでしょう?新人声優が道端のゲリライベントで一般人から輪姦されるなんて。学生ライターが同人イベントで輪姦されるなんて。学生原画家がイベントで一般人にフェラするなんて。エロゲ店員がエロゲの特典のオナホに成りすますなんて。。。まずおかしいと気付かれ騒がれるし、そんな状況まかり通るはずがない。
ユーザーを馬鹿にしてるのかとさえ思った。
エロシーンってただエロ行為していれば良いわけじゃないはず。あくまで状況心情込みでのシチュエーションが根底で成り立って意味を持つのであって、そこにリアリティが欠片もないのであればそれは最早制作の都合でありただの茶番。興奮からは最も遠いところに離れていく。
本当に何でこんなエロシーン入れたんだろう?と。エロシーン見て「おいふざけんなよ」という感想を抱いたのは初めてのことでした。


ということで、見所はありながらも肝心のエロの部分で大コケしたゲームという総評。
特にエロシーンは今までプレイしたゲームの中で最低と言ってもいいかもしれない。
プレイ感が良くないゲームというのは一応頭にあったのですが、それを差し引いても期待を下回ったゲームでした。
とは言え、ヒロイン自体は魅力的ですしエロの傾向的にも好きな部類に入るメーカーですので以後も追う予定。
次にプレイする作品では良いレビューを書けることを期待しています。