無茶な展開をノリと勢いで突っ走る、これこそ正に青春物語。「ちょっといい話系シナリオ」という路線も変わらず、テンポの良い会話&萌え描写を楽しめる良作です
『しにきす』『リアル妹』『キッキン』などの過去作品の良い所を足して割ったような作品で、
おるごぅるの変態テキスト・保住圭のキャラ萌え&イチャラブという過去作の強烈な要素にはどちらも一歩及ばずですが
それでも笑えるネタを散りばめたテンポの良い会話に吹き出しながらサクサク進められ、
かつ個性的&魅力的なヒロイン達との恋愛で十二分に萌えられる出来となっています。
もちろんこれまでの「ちょっといい話」という路線もしっかりと踏襲しており
どのルートも無茶苦茶ながら勢いのある展開は青臭い青春物語という感じで楽しめました。
短いながらもテキスト・萌え・シナリオ全てに見所のある良作。
■
何よりもヒロイン全員に個性があって素晴らしい!
特に桜は藤咲ウサのナイスな演技もあり、独特なタイプのヒロインを作りだす事に成功しています。
いつもの飄々とした振る舞いと時折見せる真面目モードのギャップや、本音を語る時にのみ見え隠れする「弱さ」に萌えるキャラですね。
『キッキン』でたいちょーが好きだった人は是非に。
妹の藍は兄への愛を開けっぴろげに語る駄妹で、こちらも声優の名演で「うざカワイイ」タイプの中でも特に個性的な妹キャラに。
一応、義妹という事もあってタブー的な展開はほとんど無かったですね。
ただ(他メーカー作品で申し訳ないですが)『星空のメモリア』の千波に通じるウザさも無くはないため苦手な人もいるかも?
夏海は他二人に比べるとかなりテンプレっぽいツンデレで
共通では序盤あまり出てこないこともあって地味な印象を受けますが、個別ルートに入ってから本領発揮。
言外に匂わせる主人公好き好きアピールが尋常じゃなく、焼きもちや遠回しな甘え方など萌え転がれる要素満載です。
主人公を想って自分で慰めるシチュもあり、個人的に一番破壊力の高いキャラでした。
自分と同様「ヒロイン視点による好意の独白」というシーンが好きな人にはストライクじゃないかな。
関西弁キャラでボケもツッコミもいける真奈先輩や、事あるごとにホモ臭いネタで笑わせてくれる敦などサブキャラ達も個性があって◎。
自分はあまりキャラに魅力を感じない作品だと主人公やヒロインの名前がなかなか覚えられない事がままあるんですが
この作品はかなり早い段階で自然と全キャラの名前を覚えてましたね。
■
シナリオは音楽そのものにはあまり深く踏み込まず、それを土台として他の話が展開していきます。
…正直な話をすれば、「特待生資格の剥奪」だけでなく「家庭の問題」や「旧友の死によるトラウマ」などなど
そのボリュームに反して風呂敷を広げ過ぎた感は否めず、どの題材も6・7割くらいしか描けてない感はありますが
どの話にも必ずグッと来る場面はあるので「ミドルプライスだししょうがないか」と思わせる程度にはなってたかな、と(笑
また、上にも書きましたが感動系エピソードが随所に入っていることや
ラストはいかにも青春っぽい展開で〆るなど勢いがあったためシナリオの完成度はあまり気にならなかった、というのもあります。
あまりシリアスな空気は作らず、作ったとしてもギャグで空気を柔らかくするパターンが多いのもプラスに作用してますね。
ただ、桜ルートで「悪役モブキャラを仕立ててシリアスの発端にする」という個人的にあまり好きじゃない手法があったのは少し残念。
シナリオの重さは藍<夏海<桜かな?
桜ルートは終盤かなり重いんですが、桜が孤独感を紛らわすために主人公に体の関係を求める、という展開がツボでした。
夏海ルートはどうやらロックされてるようで、他の二人をクリアすると開放されるみたいですね。
Hシーンは一人3回。藍はプラス1回、行為の途中で邪魔が入って中断するHシーンがあり計4回となっています。
惜しいのは、せっかくキャラは魅力的なのに夏海以外の二人は告白シーンがほぼおざなりでイチャラブも少ないこと、
Hシーンがこれまでの作品に比べると薄いこと、藍ルートのみ出てくる新キャラが超かわいいのに攻略不可だったこと。
また、それ自体をメインにしている訳ではないのでそこまで気にはならないのだけど
演奏描写や楽器の扱いなど音楽に関するアレコレはあんまり勉強してないのかな?と思うような所も。
あ、あと「G線上の魔王」でも思ったのだけどやっぱ作品の肝となる曲くらいは生演奏だといいのになぁ、と…無茶な注文ですが(笑
■
という訳でいろいろと細かい欠点はあれど、それを補って余りあるテキストとキャラ萌えに満足。
個人的には濃いエロもこのメーカーの強みだと思っているので、そこがパワーダウンしてしまったのが非常に残念ですが
これまでのハニカム作品が好きな人には引き続き安心して楽しめる物語になっているんじゃないかと思います。