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KYさんの恋愛0キロメートルの長文感想

ユーザー
KY
ゲーム
恋愛0キロメートル
ブランド
ASa Project
得点
86
参照数
1523

一言コメント

破天荒な設定と容赦ない下ネタの裏で一貫して描かれる「家族の絆」。シナリオは平凡だけど、ひたすら笑いながら時折家族の温かさにほっこりさせられる、そんな作品でした

長文感想

前作と同じく、ハチャメチャな設定とヒロインにも躊躇なく下ネタを言わせる体を張った(?)ギャグが売りの作品。
開始数分で顔芸が炸裂するなどギャグに関しては前作に負けず劣らずのクオリティを保っていて大満足です。
個別のシリアスはどれも斜め上の展開だったり肝心な場面がアッサリ描かれたりして手放しには褒められない出来ですが、
それを補って余りある笑いと萌えと、時折描かれる家族の温かさにほっこりさせられる物語でした。

『家族交換』という一風変わったアイディアですが、意外と段階を踏んで展開する為すんなり受け入れられましたね。
ちゃんとお互いの家の事情が描かれた上で両親が提案し、主人公の他にも反対した人がいる。
もちろん常識的に考えれば色々と問題がありますが、何だかんだで「交換してもおかしくないんじゃ?」的な空気は作れていたように思います。


全体的に男一家・女一家の家族ぐるみでの付き合いという設定がうまくいい方向に作用してるな、という印象。
何といってもただでさえ登場人物が多い上にそれぞれが密接に関わっているため、
常に画面にたくさんのキャラが出てくる賑やかな日常が繰り広げられます。
他キャラ視点による主人公がいない場所での会話もしばしば入るのも◎。

個別でもそれは変わらず、シリアスに入っても主人公とヒロインの二人だけでなく
姉妹・兄弟達と一緒に解決していく展開が多いため終始ワイワイとした空気を楽しめます。
その点、前作のサブライター担当ルートの「個別に入ると途端に登場人物が減って世界観が狭くなる」という欠点は改善されていますね。


共通の序盤はとにかく顔芸と下ネタに笑いながら楽しく進める事ができました。乃来亜の顔芸は完全にヒロイン捨ててるw
前作はまだ優由が周りを唆して…というパターンが多かったですが、今作のヒロインは誰も彼もが自重することなく下ネタを連呼します。
実咲が主人公の下着を洗う時に興奮したり、代わりに男一家に行った咲耶が主人公のベッドに奇声を上げながら飛び込んで匂い嗅いだりと
(どうにも変態的ですが)萌え描写もちょくちょく入っていていい感じ。

なんと言っても「0キロメートル」の言葉の通り、ヒロイン達との距離が近く感じられるのが良い。
このヒロイン達だからこその、下ネタ混じりの砕けた会話や家でのダラダラした生活描写などによって
他の共同生活をする作品ですら中々感じられない「身近さ」や「気安さ」といったものがよく出ています。

また、そうやってヒロイン達=家族が身近に感じられるからこそ
所々に入る家族の温かさ、姉妹全員が家族を大切に想っているのが分かる場面がより重みを増して伝わってきますね。
そんな、他メーカーの「綺麗な」ヒロイン達では絶対に出せない距離が描けているのがこの作品の魅力なんじゃないでしょうか。


主人公は基本突っ込み役のいいキャラしてますが、一部ルートでヒロインに八つ当たりしたり本気で口論したりする場面も。
共通の雰囲気を壊してるという意見も出るでしょうが、その内容が主人公の恋愛に対する未熟さから来るものなので
むしろ年相応という感じがして個人的には好印象でした。ちゃんと後で反省もするし…
やはりというか咲耶と実咲の恋愛感情にはかなり鈍感ですが、まぁこれに関しては二人のアタック不足も原因なので(笑

もちろん主人公一家の男共もいい味出してます。
本田は他のゲームなら間違いなく下品でモテない男友達ポジションに収まるキャラなのに、このメンツだと至って普通に見える不思議。
不良の夕空が咲耶のおかげで丸くなっていく様子を見て喜ぶ父親の姿なんかを見ると、こちらも家族だなぁという感じがしますね。
彼らも単なる数合わせに留まらない登場頻度で物語を賑やかしてくれる重要な存在です。


さて個別ですが、今作はルートによって笑いのレベルやシナリオの出来に多少の差はあれど雰囲気はさほど変わらず一安心。
その中でもメインである天都さんが書いたであろう双子のルートがシナリオ的にもギャグ的にも一番高いレベルで纏まっていたんじゃないかな。

とはいえ、上述の通りどのルートも展開が斜め上だったりしっかり描くべき場面がアッサリだったりと何かしら残念な部分はありますが…
まぁ、シリアスの中にも笑いを入れていたり、他キャラと一緒に賑やかに解決したり、そもそもシリアスパート自体が短めだったりして
あまりダラダラと重さを引きずるようなルートは無かったのでそこまで悪いというイメージは無いですね。


決定的に違うのは萌え描写とHシーンの濃さ。
マヨと華は付き合う前後であまり変化がなく、Hシーンも控えめな感じでちょっと微妙。
特に華は結ばれてから一気に甘えっ子になるんじゃないかと期待していたので、最後までツンデレのままだったのは残念…

逆に乃来亜と咲耶は萌え描写が素晴らしく、Hシーンもかなり濃かったですね。
乃来亜は結ばれてからの変化が一番大きいキャラで、デレッデレになって一気にバカップルに。
咲耶は主人公のシャツの匂い嗅ぎながら自慰からの枕をハムハムなど主に変態的な面でインパクトが…
前作の優由といいこのメーカーは遠野そよぎに何やらせてんだ。

実咲は上4人の中間という感じで、萌え描写もHシーンもそこそこ。
ただ共通から続く咲耶との三角関係がらみのイベントはなかなか萌える場面が多いです。
…まぁ、この辺りは個人の好みによって大きく左右されると思いますが…


という訳で、シリアスはどうでもいいから萌えて笑えればいい、という人には間違いないであろう作品ですね。
ただパロディやメタ発言が所々に入っているため、それらが苦手な人には向いてないかも?