キャラ萌えという面「だけ」見ればかなり優秀。…なのに、萌えゲーに似つかわしくないアクの強すぎるシリアスでその評価を大幅に下げている勿体ない作品
大まかな方向性は前作「AngelRing」と変わらず、キャラを絞った代わりに一人あたりのボリュームを増やした今作は
前作同様萌えに関してはせっかく高いレベルで纏まっているのに
前作同様シナリオ(シリアス)でそれを台無しにしている勿体ない作品でした。
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基本的に、男子生徒のサンプルとしてお嬢様学校にスカウトされた主人公が、ヒロイン達と共に
年度末に実施される「共学化するか否かを決める投票」で過半数を得るために奮闘する…という流れを中心に進みます。
ただでさえ山奥の閉鎖的な学校で、当初は異分子として露骨に避けられていた主人公が
行事や事件などで良いところを見せて段々信頼を勝ち取っていく、という過程が見所。
共通は全16話とかなりの長さですが、サブも含めてヒロインを小出しに登場させ
主人公を認めるまでの過程を「男嫌いの克服」や「望まぬ婚約の破棄」といったイベントと共に一人ずつ丁寧に描くので
話数で区切ってある事もあって長さを感じさせず、飽きさせない工夫がされてますね。
好感度+から始まるキャラと-から始まるキャラの比率も丁度いい塩梅となっており、
「好感度が高いヒロインの協力を得て、低いヒロインの好感度を上げる」という流れがじっくり楽しめます。
最初から全員が主人公好き好きオーラ全開よりは、攻略している感が感じられて良いんじゃないかと。
個別に入るとまずは三角関係や嫉妬などの「付き合うまでのいざこざ」がじっくりと描かれ、
結ばれてからは余計なシリアス抜きで暫くイチャラブとHシーンが続き
シリアスが終わった後のED前にもきちんとHシーンを入れる…というように
萌えゲーとしておよそ理想的な構成になっており、それぞれの尺も長く大満足。
ヒロイン視点で主人公への想いを吐露する場面、やきもちを焼く場面など純粋な萌え描写も上手くかなり萌えられます。
Hシーンは1キャラにつき5回×4人と多く、エロさも萌えゲーの中ではそれなりに濃い目。
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と、萌えゲーに一番大事な「キャラ萌え」だけ見れば文句の無い出来なのだけど…
シナリオの完成度、それ以上にその方向性に大きな問題アリ。
どうもこのライターは悪役が不快なキャラになる事を厭わない方のようで、
前作では妹のルートにおいて他のヒロインを悪役にした挙句
空気を読まない行動で主人公と妹の仲をギクシャクさせる、という
非常にイライラする役回りをさせて批判を浴びています。
翻って今作ではヒロインがそういった役をする事は無いのでまだ良かったとはいえ、
校長や摩理香などのサブキャラが病んでるかの如く異常な敵意を持って
主人公を陥れるために犯罪行為にまで手を出す展開はやはり見ていて楽しいものではないですね…。
まぁ、エロゲにおいて理不尽な悪意や犯罪じみた行為といったものはあまり珍しくもないけれど、
おそらく多くの人がこの作品に無難な「キャラゲー」を求めていたであろう中で
明らかにキャラゲーの域を逸脱したアクの強すぎるキャラ付け&展開が多いのは拙いんじゃないかと。
個別シナリオの内容も誘拐や傷害事件など大げさな展開が目立つ上に
所々で矛盾や突っ込みどころが見えるのもマイナス。
お嬢様学校モノは性質上シリアスの話が大きくなりがちですが、
この作品はとくにその欠点が強調されているように感じます。
少なくとも冒頭での父親の屑っぷりや、入学までの経緯の展開に不満を感じた人は
イライラするばかりで純粋にキャラ萌えを楽しむ事すら出来ないんじゃないかな…
堪忍袋に不安のある方には絶対に体験版をプレイすることをお勧めします。
不快なキャラ筆頭の校長ですが、綾佳ルートで校長が主人公を認めない理由が明かされるので
綾佳を最初に攻略するとイライラが若干薄れるんじゃないかな。
共通でどうしようもない程嫌いになった人は「何を今更」と感じる可能性もありますが(汗
という訳で、萌え描写の良さをシナリオの悪さで相殺してこの点数。
前作はもう一人のライターのルートが中々良かったので個人的には高評価だったのだけど…。
ライターは不快な悪役を作る癖というか特徴を変えない限り、萌えゲーで高い評価を得るのは難しいんじゃないかなぁ。