萌え描写は及第点だが、デュエル=決闘を軸にしたシナリオには首を傾げざるを得ない。…とはいえ、実在した決闘のハチャメチャさを考えると一概に否定はできないのかも?
架空の王国「コラングレイン」に残された遺産を相続する為、その国籍を持つ女性の中から一人を選んで結婚する…という粗筋の萌えゲー。
現実世界における決闘とほぼ同じ「デュエル」を軸にしたシナリオが特徴的な作品です。
攻略ヒロインは5人。共通・個別ともに中々のボリュームがあり充分な長さでしょう。
CGに関しては絵師が二人いる影響か、素晴らしいものもあればやけに崩れているものも。
特に椿のは安定してなかった印象がありますね…
Hシーンは一人あたり2~3&クリア後のアフターストーリーで1、計18。
エロさは平凡で、アフターのHシーンが少し濃いかな?という程度でした。
萌え要素のみ抜き出せば及第点。
キャラの特徴を掴んだ萌え描写が盛り込まれており、萌える場面はそれなりにあります。
イチャラブの尺が長いという訳でもないけど、好みのキャラがいれば満足いくんじゃないかと。
日常描写は家でのヴィオレッタや巴との生活が中心となっており、温かみがあって良かったですね。
サブキャラが多いのでワイワイとした雰囲気なのも◎。
性質上メインヒロインの中でも椿や雛菊の登場頻度が少ないのが難点といえば難点か。
主人公は容姿端麗、家事万能、運動神経も抜群とかなりのハイスペック型。
多少女々しい印象も受けますが、シリアスな場面では流される事なく自分の意思で行動出来る良主人公でした。
しかしシナリオ、特にデュエル関連の流れはかなり微妙と言わざるを得ません。
バトル描写については文句ないどころか中々上手く描けてると思うんですが、
デュエルに至るまでの経緯がかなり強引で納得しがたい展開が多かったりします。
デュエルで懸けるものは名誉に限らず物、人など半ばなんでもアリなんですが、
お互い大事なものを賭して決闘する筈なのにアッサリ代役(代闘士)を立てたり
詭弁を用いて内容を捻じ曲げたり賭けるものを変えてしまったり、
「とりあえずデュエルで勝てばいい」とばかりにデュエルから無理矢理大団円に持っていったり…
デュエルがもたらす結果は絶対なのに引き替え、どうにも軽い感じで扱われてる印象を受けます。
特に、代役で他のヒロインなどと戦う事になった時の「なんで戦っているんだろう」的グダグダ感。
なまじ端々で動機付けというかフォローはしてあるので地雷とする程に白ける訳でもなく、
しかし素直に納得出来ない展開が多いためどうにも煮え切らないまま終わるルートばかりでした。
まぁ、モチーフにしたであろう現実世界の決闘も負けず劣らずハチャメチャなため
一概にこの作品が悪い、とは言えないのですが…
かじった程度なので微妙に間違っているかもしれませんが、
「貴殿は勇敢だと聞いたので」というよく分からん理由で命がけの決闘を始めちゃったり
時代によっては誰でも代闘士に代理を頼むことが出来ちゃったり…
作中と同じく、死という結果の重さに引き替えどこか軽い感じで扱われていたようです。
そもそも決闘の方法も剣や銃に限らず変なものがあったようで、
2丁の銃の1つだけに弾を込め、それを決闘者がくじで選ぶ…なんてものも。
そんなのただのロシアンルーレットじゃん、と。
…等々、元がヘンテコなためあまりこの作品のデュエルを悪く言う事も出来ないんですが
逆に言えば元々変なものをそのまま使ったらそりゃ変に思うのも当然な訳で…
作中では上記のトンデモさに比べればまだ現代の常識で受け入れやすいようになってますが、
それでももう少し上手く料理してほしかったですね。
主題歌やBGMは素晴らしく、特にオーケストラ調のBGMは世界観を作る上で大きく貢献していたと思います。
ただ動作が重いのが残念。表情が切り替わるたびにいちいち止まるので進めるのが面倒でした。
以上、日常や萌えはそれなりの水準ですが肝心のシナリオに不満が多く、
キャラ萌えゲーと割り切ろうにもシリアスパートの尺も長いためなかなか萌えられず…と、
良い要素が悪い要素と相殺しているためなんとも勧めづらい作品となってしまっています。
少なくともライターの前作「夏ノ雨」クラスを期待していると痛い目を見るのは確かでしょうね…