ErogameScape -エロゲー批評空間-

KYさんの晴れときどきお天気雨の長文感想

ユーザー
KY
ゲーム
晴れときどきお天気雨
ブランド
ぱれっと
得点
78
参照数
2180

一言コメント

「相変わらずNYAONの作品は人によっちゃ一気に地雷と化す要素を詰め込んでるなぁ」というのが正直な感想です(笑 少なくとも「普通の萌えゲー」ではないのでご注意を。

長文感想

さくらシュトラッセに次ぐNYAON・くすくすコンビの新作。
泣き要素が売りの「もしも明日が晴れならば」、料理店を舞台とした「さくらシュトラッセ」の2つに比べると
神様という要素は入っているものの割とオーソドックスな学園モノの萌えゲー…に見えますが、
その中身は嫉妬など「負の感情」を隠すことなく描写した、修羅場の多い重めな展開が続く作品となっています。

通常ルートの出来は及第点といった程度ですが、
意外性のある展開に加えて泣ける場面もあったトゥルー(=香奈枝ルート)がよく出来ているため
平均すればそこそこ良作の域に入る作品だとは思うのだけど
苦手な人はとことん苦手な要素が多いNYAONの作風は今作でも相変わらずなので
人によってはそれだけで一気に地雷になり得る可能性を持った作品でもありますね…



NYAONシナリオの共通点は?と言われてまず真っ先に挙がるのが「主人公がダメ!」という事。
「さくらシュトラッセ」ではガキっぽい主人公が受け付けない!という方も多かったようですが、
今作の主人公もモテモテなのに優柔不断&煮え切らない態度で三角・四角関係を作りだし、
ようやく付き合ったかと思いきやなずなへの過保護っぷりがヒロインの嫉妬を生んでシリアスの原因になる事も。

一部ヒロインが尖ったキャラ付け(性格)なのも相変わらずですね。
これまたさくらッセと同じく、妹と幼なじみが時折不快さを感じるキャラになってしまってます。

…まぁ、幼なじみの水希は焼きもちの表現がうまく萌えに繋がっていない、という程度なのであまり気になりませんでしたが
妹のなずなは「良くも悪くも空気が読めない」という性格がプレイヤーからするとしばしば悪い方向に作用し、
他のルートでしつこく登場してはシリアス要素を振りまいていく(特に絢音ルート)為かなりイラッと来る場面も。
その上、恋愛がらみのエピソードで兄と同じくらい優柔不断というか「酷い女」になってる場面もあったり…


言ってしまえば「登場人物全員がダメ」なのがNYAONシナリオの良さでもあり欠点でもあるんじゃないかと。
基本的に主人公とヒロインのすれ違いを描いたルートが多いこの作品で、嫉妬や思い込み・言葉や配慮が足りなかった、
などといった登場人物たちの「未熟さ」&そこから来るシリアスを許容できるか、というのが楽しむための前提条件ですね。



…と、ここまで欠点ばかり挙げてきましたが、もちろん良い点も。

萌えに関しては、まず絢音のツン→デレへの変貌が良かった!
序盤の冷たい口調→心を開いた後の甘い口調、というギャップは声優の演じ分けもあってかなりグッと来ます。
心を開いてからは主人公への好感度もMAXなので、そのデレっぷりに萌える事間違いなし。
絢音に限らず、独り言や独白といったデレの表現・体を使った誘惑など萌え描写は多いのでここに関しては満足ですね。

サブキャラ達2組の恋愛模様も(そこまで深く描かれる訳ではないですが)見ていてなかなか微笑ましい。
シリアス場面でも常に賑やかなごんとりんの二匹は暗くなりがちな雰囲気を明るくするのに一役買ってますね。
ゲストキャラとして「もしも明日が晴れならば」から成長した珠美が登場するのも良かった。
もしらばを匂わせる発言をするファンサービスも当然あります。…なんか言動がおばさん臭くなってますが(笑


シリアスに関してはやはり香奈枝ルートが頭一つ抜けてましたね。
ルートに入るといきなりBADENDになって驚きましたが、後々「そういう事だったのか!」と感心してしまう良い演出でした。
ラストの盛り上がりはWHITE-LIPSの歌もあってかなりグッとくる出来になっています。
ただ、完全なハッピーエンドという訳ではないのでそこは注意。



共通は二人の神様を学校に馴染ませる、というエピソードの後で三角関係・四角関係へと話題がシフトしていきますが
その合間合間にヒロインのフラグを一人ずつへし折って先に進むような構成になっています。
順番は絢音→水希→なずな→香奈恵ですが、他の3人を攻略しないと香奈枝ルートに進めないという訳でもないようなので
好きなヒロインから攻略していって問題ないかな?

バトル描写は所々にありますが、バトルに勝利してハッピーエンド!といった安易な展開はなかったので一安心。
Hシーンは香奈枝4残り3と数はあるのだけど、あまり濃くはないため期待はしないほうが良いかと。
ただHシーンそのものより、Hシーンに入るまでの流れや発言が雰囲気出てるなぁと思う事もあったり。



という訳で、駄目な人はとことん受け付けないかと思いますが一般的な萌えゲーとは一線を画した味のある作品です。

まぁ、上記に挙げた欠点にも関係してくる事ですが
「個別に入ってすぐヒロインと結ばれた後、外部から襲い来る困難を乗り越えていく」というありがちな展開ばかりじゃなく、
「未熟な少年少女が泥沼状態に陥りながら、もがいた挙句に真の意味で結ばれる」という展開もたまにはいいんじゃないかなと。

成長物語と言う程には成長しない上、修羅場が続くためどうしても暗い沈んだ雰囲気になりがちですが
そういう意味では新鮮な気分で楽しめましたね。

…とはいえやはり萌えゲーとしては「さくらシュトラッセ」よりも癖の強い作品なので、人に勧めるとしたらさくらッセのほうを勧めます(笑
これまでNYAON作品をやった事のない場合は安易な絵買いはしないほうが良いでしょうね。