前作から更に進化した萌エロは文句なしに最高。ただ、全ルート題材がほぼ同じで代わり映えのしないシリアスを考えると手放しに高評価には出来ないかも
前々作『スズノネセブン!』のコンセプトを受け継いだであろうクロシェットの新作。
洗練されたインターフェースのデザイン・コロコロ変化する立ち絵などADVとしての完成度はかなりのもので、
特に豊富な差分を使ったセリフ中の表情の変化にはかなり力が入っており、キャラの魅力を引き立たせるのに大きく貢献しているんじゃないかと。
シナリオや絵といった部分だけではない、あらゆる部分に作りこみを感じさせられた作品。
中身は期待通りシナリオも頑張りつつ萌え&エロに力を入れた出来。
シリアスパートの比率がそれなりに多めなので、イチャラブなどの萌えるシーン自体は意外と少なめですが
キャラが魅力的なためか普通の日常パートでも萌えを感じる事が多かったですね。
エロに関してもさいろー氏を起用するだけあって萌えゲーとしてはかなり濃いレベルになっています。
共通ルートではアルゴノートの設立から依頼発生→解決、という流れを繰り返して話が進行。
全体的にこれまでのクロシェット作品にあった「砕けた感じの会話」が感じられなくなっているのが残念ですが、
菜緒の存在もあって代わりに所謂「頭の回転の早い会話」が多くなったような印象も。
最初から主人公に好意を持っているヒロインが多いため、主人公争奪戦のような雰囲気もあります。
主人公のいない場面が多いのも特徴で、そういうシーンでのヒロイン同士の会話も萌えられるポイントですね。
個人的には主人公がモテモテな事にあまり違和感は感じませんでしたが、
理屈っぽい・たまに好奇心から軽率な行動をする、など人によってはあまり好きになれない可能性も?
また、男サブである航平は最近のエロゲには珍しくなってきた「エロい事言って引かれる友人」を地で行くキャラです。
所々でフォローがしてあったり、ルートによってはいい仕事をする所なんかもスズノネの真とそっくり。
しかし、個別に入ると色々と不満点が…
第一に、複数ライターの影響か個別ではルートによって主人公の性格が変わる事。
例えば琴羽ルートでは琴羽の事を考えて部屋で悶えたり、付き合い始めには猿と化したりとかなり人格崩壊しています。
その分バカップルさが増しているので悪い事ばかりではないのだけど…
逆にまなみルートでは恋愛に理屈を持ち込んでぐだぐだと自分の気持ちを説明しようとする場面も。
妹から恋人へ…という展開上、心情の変化を説明する場面も必要だとは思いますが、さすがにちょっとやりすぎかなぁと。
こんな感じで、性格がルート毎にバラバラなのでどうしても目に付いてしまいますね。
そして一言にも書いたシリアスの問題。
個人的に萌えゲーのシナリオはよほどぶっ飛んでさえいなければ良い、という感じで
今作も1つ1つのルート毎に見れば多少のツッコミ所はあれど概ね満足する出来だったのだけど…
全ルートで「水没ビル」というキープレイスから事件の黒幕まで、題材が殆ど同じなのが残念。
『スズノネセブン!』では「各々出された課題をクリアする」という前提こそ同じだったものの、
その中身はバトルだったり冒険だったり特訓だったりとルートによって様々な色を楽しめました。
しかし今作は全ルート途中まで似たような内容のため、ルート毎で変わり映えしない展開になってしまっています。
率直に言えば、シリアスに関しては3人目くらいで飽きてしまう。
別に同じ事件を5つのルートを使って多角的な視点で見る、という訳でもなく…
琴羽ルートはシナリオ的には完全に美汐ルートの下位互換となっています。
せっかく複数ライターなのだから、ここは手抜きをせずに全ルートで違う題材を用意して欲しかった所。
ちなみにネタバレの観点上、個人的には琴羽→まなみ→風花→美汐→沙織の順番が良いんじゃないかと。
特にラスト二人は敵役の心情も分かるルートになっているので。
萌えゲーでも容赦なく変態プレイを入れる事で有名なさいろー氏が今回担当したのは沙織ルート。
シナリオは中盤グダグダ気味だったり途中端折っていたりと欠点も目立ちますが、ラストは中々の盛り上がり。
メティスについても厨二心をくすぐられる説明や論理が展開され、全ルートの中で一番力が入っていたんじゃないかと。
エロに関しては今回も露出もどき・アナルセックス・プチSMなどかなりやらかしてくれています。最高。
スズノネのすみれほど強烈な萌えシチュはありませんでしたが、今作の貧乳枠も別の意味でプレイヤーに強烈な印象を残す事でしょう。
…人によっては若干引く可能性もありますが(笑
という事で、萌えだけならかなりの高評価だけどシナリオ面を鑑みてこの点数。
素晴らしいシナリオを求めている訳では無いので、退屈しないようになっていればそれで良かったのだけど…
もちろん萌えゲーとしてかなりの完成度である事は間違いないので、点数以上にお勧めしたい作品ではあります。