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KYさんのあまつみそらに!の長文感想

ユーザー
KY
ゲーム
あまつみそらに!
ブランド
Clochette
得点
84
参照数
1846

一言コメント

前作より全体的に少しだけ劣るかな、という感じ。「キャラ萌えありきのシリアス」この言葉にピンと来れば高得点、そうでなければ中得点

長文感想

前作「スズノネセブン!」同様、抜け目の無い出来にはなってるんですが
シナリオ・キャラいずれも少しずつ劣ってるかな、という感想。
キャラについては好みの問題もありそうなので多くは書かないけど、
題材の非柔軟性がシナリオ微劣化の原因かなーと。

前作は魔法+(解釈の余地のある)課題、と自由度が高かったのに対し、
今作は神様繋がりという神奈と深景以外には応用し辛いもの。
前々作「かみぱに!」と似た題材(深く突っ込めば大分違うけど)を選んだ辺り、
制作スタッフのリベンジ精神(?)が伺えるような気もしますが…

設定自体はかみぱにより洗練されてると思うんだけど、
やはりこの設定で全てのヒロインを神様繋がりの話に持っていこうとすると
多少強引にせざるを得ないルートが出てきてしまったんじゃないかと。
複数ライターである事も考えて、もう少し各ライターが
自由に書きやすい題材のほうが良かったんじゃないかな。


閑話休題して別の視点から。
このメーカーには「日常の延長としての個別=シリアス」ってのが一番合ってる気がします。
キャラ萌えを最優先とした上で個別を作り上げていくというか…
シリアスを控えめにし、合間にギャグor萌えパートを挟んでいるあたり
メーカーもそれを意識して作っているんじゃないかな。

悪く言えば安全運転とも取れるけど、
「萌えゲー」という言葉通りの物を追及していくなら
極論、何の事件も起こらずとも日常とキャラ萌えのみで退屈になる事なく纏められれば
それもまた萌えゲーとしての1つの完成系なんじゃないかと。

そういったものを踏まえての「キャラ萌えありきのシリアス」という言葉。
シリアスが中途半端なんじゃなくて、キャラ萌えのためにシリアスを控えめにしている。
ただ、シリアスも穴の少ないしっかりした作りになっている事は確かで、
「そうでなければ中得点」という言葉はそれを評価しての言葉。

…という訳で、「キャラに萌えられればいい」って人にまずお勧め。
全体的にシリアスがキツい訳でもダメダメな訳でもないので
好みのキャラがいればかなり萌え倒せる作品になるんじゃないかな。
そうじゃない人も、シナリオが物足りない!と思う人も出てくるだろうけど
少なくともハズれる事は少ないんじゃないかと。


ここからは内容について。
日常のにぎやかさと俗っぽい?会話のやり取りはやはり楽しい。
神奈とか一部の会話だけ見るととてもヒロインには思えないw
前作の雰囲気をいい感じで引き継いでいるのは確か。

個別については神奈と深景が神様つながりの設定を深く書いていて、
残りはまた別視点から見たお話、という感じ。

神奈ルート シナリオB キャラB+
バカップルっぷりがハンパないのがこのルート。展開が粗削りなのもこのルート。
戦闘描写が少しだけ厨二な感じですが、まぁ神の力だもんなぁ…
付き合い始めて以降のイチャラブ期間が非常に長いので、
シリアスを気にせず存分に萌えられれば勝ち。

深景ルート シナリオA キャラB+
まさかの触手!?しかしエロは無い…。残念(ぁ
シナリオがまんま神奈の別視点&上位互換って感じなので、
神奈→深景と攻略すると内容の補完が出来て良いんじゃないでしょうか。
流れがしっかりしているのでシナリオも評価できるルート。

しかし、このルートのウリは何といってもエロ。
イチャラブがあまり無いので急激な乱れっぷりが唐突な気もするけど、
まぁ…エロいことはいいことだ、うん。

芹夏ルート シナリオB キャラB
本の知識と多少の経験で、スポーツ本気でやってる人の指導って出来るのかな?
いや、皮肉じゃなくて本気で。コーチ自身は強くなくてもいい、とは聞くけど…
どちらにせよ主人公が夏帆よりテニス強いってのは少しグレーゾーンな気も。

テニスにおける芹夏のメンタル面の話を軸として、神様繋がりの設定をくっ付けた内容。
このルートは特に神様繋がりの設定が無くて良かったような…
まぁ、流れを上手く持っていったのでそこまで気にはなりませんでしたが。

千紗ルート シナリオC+ キャラB+
シリアスは薄い…というより終盤に一気に消化しちゃったって感じなので
少し唐突さも感じて手放しに良い、とは言えない内容だったかな。
しかし、それ以前の…ツンデレ?クーデレ?デレへの変化はかなり萌えます。

美唯ルート シナリオB+ キャラA
深景もエロいけど、こちらは特殊なシチュがエロい。
シチュと言える程ではないかもしれないけど、短いながら
自慰があったり見られて感じたり嗅いで感じたり…

エロがやけに濃いのもこのメーカーの良い特徴。
妹としての魅力はかみぱに!の誇るツンデレ妹瑞希のほうが個人的に上ですが。
ありがちな兄妹の壁なども重視しておらず、シリアスと呼べるような場面も少なく
この「エロっ娘(神奈命名)」に萌えられるかどうかが全てなルート。


というか、

な ぜ 夏 帆 ル ー ト が な い

スズノネセブンに続いてFD?
…いや、FD出すこと自体は全然いいんですけどね。
スズノネFDもしっかりしてたので。


最後に。
完成度というか安定感は段々上がってきてるんだけど、かみぱにで一番感じられた
「何が何でもプレイヤーを萌えさせよう」とか
「萌えゲーだからってエロは自重しない」みたいな、
そういう意気込みは作品を重ねるごとにちょっとずつ失われていってる気がします。
…僕が作品を多くやりすぎた所為で慣れてきてしまっただけかもしれないけど。

次回作はもっと自重せずはっちゃけてもらって欲しいものです。
…あ、さすがに触手シチュとかあったらビビりますが。
次の「~!」はどんな作品になるか、今から楽しみ。