鬱ゲー?泣きゲー?いやいや、あえて言うなら「考察ゲー」。 ※5/3追記、後半にネタバレ考察/感想
発想とか構成とかを考えるにもう少し中央値とか高くていいんじゃないかなぁ…と思うんですが、
まぁ原因は明らかで、萌えゲーと見せかけて案外重いシナリオを扱っている為
純粋に萌えを楽しみにした方々は少なからずショックを受けたであろう展開、
そして何よりも「ハッピーエンドでは無い」というのはどうしても賛否両論分かれますね。
また、歩がメインヒロインであり一部ヒロインの個別が歩ルートの伏線という役割に徹している事など
特定のヒロインに惹かれて…という方が少しガッカリするであろう面もあります。
コンプするまで全く意味のわからない終わり方をする個別もあったりするので…
やってみようと思う方は、まずこの辺りを念頭に入れておく事をお勧めします。
知っているのと知らないのとではショックが段違いですから。
さて、一言感想の意味についてですが、個人的にこの作品は
他の方々が思っている程に「感動」や「泣き」を押し出しているようには思えないんですよね。
というのも、泣かせ所である場面を敢えてあっさりと纏めているような印象を受けたから。
それが狙ってのものなのか、はたまたライターの技量の問題なのか…まぁ恐らく後者だとは思うんですが(汗
こういう作品は、一気に進めてしまうよりはむしろ
1人ないし1文進める毎に仮説を立ててじっくり進めていく方が合ってるんじゃないかな。
ヒロインの言動や状況を元に、世界やヒロインの抱える秘密について考えてみたり、
新しい情報が出てくるたびに一喜一憂しながら自分の推理を修正したり追加したり…
そういう楽しみ方が好きな方には(推理難易度は低いですが)十分な作品だと思います。
更に、この作品は終わった後も考察の余地が多く残されているので、
プレイ後に設定について思い返してみるのが好きって人にもストライクでしょうね。
決してハッピーではない終わり方、ちょっと泣かせるには足りないテキストなど、
純粋に感動や泣きを求めている人にはおいそれとお勧めできない作品ではあります。
しかし考察好きな方、先の展開を読んでやろう!とか考えるひねくれた人には是非お勧めしたい。
とりあえず個別ルートの感想なども一応。
■つかさルート シナリオB+ キャラA
物語の大筋に関係ないという事で何かと批判されがちなルート。
しかし、設定の為に殉職(?)したルートが多い中、このルートは設定を生かしつつ設定に潰されずに纏め切っている、
という点で評価できるルートなんじゃないかなと思ったりもします。
まぁ、そんな事よりとにかくつかさが可愛いんだけどな!
○○化するっていうのは全く想像しない展開で超萌えました。設定を使ってそれを違和感無く理由づけしたのも上手い。
他のルートが案外重くなる中、息抜きとか清涼剤とか、そういうイメージのするシナリオでもあったかな。
ただ、テキスト力の問題なのか、なんか会話に危なっかしさがあり、
物語にのめり込めない薄い「壁」みたいなものがある気がする。上手く説明出来ないんですが…
■はるかルート シナリオS キャラA
共通~個別序盤ではダントツな可愛さだったんですが、仲が進展するにつれて段々普通になってしまった悔しさ。
何故…何故呼び方を「兄様」で止めなかった!?
シナリオについては単体では訳のわからない内容。急展開ですしね。
しかし全部終わった後だと演出も含めて良い内容だった事がわかります。
初回プレイの時は色々悩んでみると楽しいかも。
※5/3、二周目の良さも鑑みて高評価に。
■真樹ルート シナリオB キャラB
頭のいい僕っ子ヒロインっていそうで中々いなかった印象。
しかしタイプの人以外にはもう一押し足りないかも?天才ヒロインはエロい、みたいな定番をもう少し(ry
シナリオについては泣きゲーによくありがちな展開ではあります。締め方的に、感情移入すると絶望するヒロインNo.1かも…
しかし、この個別だけで評価するのでは無く、作品全体の設定について考えてみる事が大事かと。
4人の初期ヒロインの中で一番核心に近付いているのがこのルートなので。
ちなみに歩のChapter4が出てこない!という場合、もう一度最初から初めてキャラ選択で真樹を選んでみましょう。
■羊ルート シナリオS キャラA
こちらも序盤が一番可愛かったような気もしなくもないですが(汗
というか、その後に控える暗い展開が分かっていながら純粋に萌えるって案外難しい…
しかし、シナリオは全ルートの中で一番良かったかもしれないですね。
個人的には内容云々より、非現実的なアプローチかと思いきや…ってのが非常に良かった。
その逆は「ご都合主義」と言われたりしてあまり良い印象では無いんですが、こちらは中々そういう展開のさせ方が少ないこともあって、とても新鮮でしたね。
ただ、惜しむらくはやはりその魅せ方か…もっと泣けるテキストに出来た気もします。
キャラについては上に書いたとおり段々失速…と思ってたんだけど、
どれだけ感情移入できるか、という点においてはかなりのレベルだったんじゃないかと。
■歩ルート シナリオA+ キャラB+
見た目とは裏腹にダメ幼馴染タイプでびっくりした。
序盤純粋にキャラ萌え、後半一気にシリアスな展開に。…とは言えシリアスは歩1人のルートと言えない程話が大きくなりますが。
前半のキャラ萌えについては良くも悪くも無くと言ったところ。真樹やはるかのルートで感じた印象と似てるかも?
ただ、独特なイントネーションで使われる「ひくわー」という口癖に中毒性があり、何回も聞き返してしまう(笑
これまでの伏線に対する解答が次々と出てきます。ここで答え合わせをするのがとても楽しかった!
誰もが言うとおりハッピーエンドではなく、人によっては鬱エンドとさえ取れるので注意。
歩以外のヒロインの中で推奨攻略順と言うものはありませんが、真樹を最後にするとモヤモヤする期間が少なくて済むかも?
キャラの好みは人それぞれでしょうが、羊ルートは多くの人が良シナリオと認めている、と言う事も頭に入れて攻略順を考えると良いでしょう。
-----------------------5/3追記ネタバレ感想&考察---------------------------
今更僕が設定を詳しく纏める事でも無いので、感想も交えて書いていこうと思います。
案外うろ覚えな部分も多いので的外れな事書くかも(汗
■プロローグやらナツユメやら
ロビンソン症候群として夢の世界に入ったキャラクターは歩・羊・有場さん・つかさ・まさきの5人。
観測者として夢の世界に入れるキャラクターは音々・夢先生の2人。
夢の世界で、患者たちの願いで創り出された存在が渚・はるか・夕実?の3人。
渚の正体は、
有場さんにとって父親と母親の想いを見せてくれる存在、
羊にとって自分の火傷の傷を受け入れてなお愛してくれる存在…などなど、
5人の理想が合わさって生まれた幻のような存在でした。
最終的に歩1人の理想のみとなり、本来の「郡山渚」に近づきますが…
観測者である夢先生はサナトリウムで夢と現実を行き来出来る訳ですが、
ループ世界を自覚している彼女にとって11/24のスタートに至るまでの過程はどうなっているんだろう?
サナトリウムで目覚めて学校に行ったら確実に渚がカウンセリングに来てるんでしょうか(笑
ルートによっては後半、時間が流れた事を示すシーンで日時が書かれなくなりますね。
幻想的な印象が残るなかなか良い演出だと思います。
実際夢の世界なので「1日」という杓子定規が意味を持たなくなると本当に時の概念がなくなるのかも。
■羊ルート
「クリスマスの下に行き願いを唱えると必ず叶う」的な言い伝えは現実世界から存在していました。
となると、患者たちの願いが集まって生まれる夢の世界で大樹が本当にその効力を持つのも当然と言えます。
彼女が図々しく「火傷を永遠に消してください!」とお願いしていたなら
夢の世界ではいつまでも怪我の痕無しに過ごせていたかもしれない?
ネタバレ無し感想にも少し書きましたが、このシナリオの凄いところは非現実的な展開を想像させておいて、実は現実的な展開な所だと思うんですよね。
猫の生まれ変わりって話は、他のルート先にやってたら信じた人も多いんじゃないかな。僕もその一人;
…まぁ大樹に願いを叶えてもらってる事については疑いも無く非現実的なんですが。
疑問に思う所があるとすればやはりエピローグですかね。
現実の世界である⇒隣の男は誰だ?という事を考えると悲しくなってくるので×、
夢の世界である⇒夢から醒めてしまい、またもや羊は孤独に打ちのめされてしまうので×。
じゃあどうすりゃいいのか。ある意味妥協案と言えますが、
『夢の世界であり、なおかつ羊がそれを自覚している』という状況だと仮定するとどうでしょう。
「でも夢だから。やっぱり覚めちゃって」
「美浜はここにいていいんだよね?」
夢の世界で、こんな自分でも愛してくれる人がいることを知ったから。
いずれ醒める夢と知りながら、最後まで穏やかに先輩との暮らしを望む…
やりきれない悲しさはあるけど、希望を持てる終わり方ではないでしょうか。
そう仮定してエピローグの美浜のセリフを読み返すと思わず泣きそうに…
いずれにせよ、
「ある夏の日。海の見える部屋で。」
という詩的な締め方に来るものがあります。
■つかさルート
まず疑問に思うのが、何故彼女は現実世界でサナトリウムにいたのか、と言う事。
母親との確執がルートの主軸な訳ですが、それだけの理由で
サナトリウムに入院するほどの大きな精神的な病にかかるとは到底思えないんですが…。
また、夕実はロビンソン症候群ではないので恐らくつかさによって創られたキャラでしょうね。
しかしぶっちゃけ渚やはるかと違ってあまり存在する意義を持たないような気も。
ここらへんは判断材料も少なすぎるので、あまり考察できないのが残念。
「許さない」のくだりがそのままだったり、あまり設定について深く考えなかったのかな?
その割に、エピローグが冬=現実の世界である事がCGで判るという小粋な仕掛けをしていますが…
※5/29追記。俺は何を書いてるんだろう、「許さない」は明らかに歩ですね。今更見返して気付いた…
ただ、現実から来た人たちとその人たちが創り出した人たちだけでは当然1つの世界を作るのに人員不足なので、
夢の世界だけに存在するNPCとも言える人たちがいるであろう事は確実です。(夢先生も「見た事のない生徒がいる」って言ってたし)
もしかしたら夕実はそこに属するキャラクターかもしれませんね。
母親との確執うんぬんが一応ありますが、
このルートはつかさ幼児化のドタバタノリを楽しめるかどうかにかかっていましたね(笑
呪いだと思っていたものが実は願いだった!という発想は中々良かったですが。
個人的には重くなりがちな他ルートのクッションになってたという意味で意義のあるルートじゃないかと。
■真樹ルート
OHPの声優や渚の好みなど、隠す気はあんまり無かったみたいですね(笑
どちらにせよまさきが出てくるのが後半の歩ルートなのであまり問題は無いんですが。
しかし、渚の好みを完璧に再現するとはなんて健気な子…
両親の出るパーティーに同席する(=島を出る)事によって真樹は姿を消しましたが、
あの時おそらく図らずも現実の世界に戻っていたのではないでしょうか?
渚との恋愛を短い間でも楽しんだまさきは自動的にロビンソン症候群から解消され、
結果的に夢の世界に存在する権利を失う=夢の世界で存在を忘れられる事態になったのではないかと。
手紙は夢先生に出してもらったと考えれば一応つじつまは合います。(音々はまさき=真樹という事を知らなかったのでアウト)
しかしそうなると真樹2周目やナツユメルートのまさき/真樹の存在が説明できないですね…
真樹2周目は、夢の世界で渚が時間を戻した事で現実の時間も巻き戻った、
ナツユメルートは、音々や夢と同じく観測者として入る事が出来た…というのはちょっと厳しいかな…
ただ、音々や夢が観測者として夢の世界に入れる理由が明らかになっていませんが、
メンバー的にロビンソン症候群を克服したまさきも観測者になる資格があると思うんですよね。
ラストは↑に書いた解釈の場合の羊ルートと同じく
「いずれ終わる世界と知りながらもそこで生きる事を望む」タイプですね。
真樹の心情描写とかあったらもっと感動できてたんじゃないかな。ちょっと惜しい。
■はるかルート
これまた発想が素晴らしいと思うんですが、サブヒロインが物語の主人公だった、という展開はとても新鮮でした。
個別だけでアリアの物語なんだ、と気づいた人は凄いと思います。
はるかの名前や容姿は恐らく有場さんの母親そのものだったんじゃないでしょうか。
両親に対して、母を犠牲にしてまで自分を生ませた父と自分自身を人殺しと揶揄する、
そんな有場さんに対して今は亡き母親は平手打ちと共に彼女を叱りつける…
このルートは2周目からその真価を発揮するルートですね。
ただ単に事情を知っているか知らないかだけの違いではなく、改めて読むとはるかの母親としての立ち振る舞いが素晴らしかった。
終盤~エピローグをきっちり説明するのははっきり言って無理ですが、
・自分を生んだ時の両親の強い思い・願い
・子供の頃の両親に対する感謝の気持ち
という2つは夢を通して有場さんにしっかりと伝わったんじゃないでしょうか。
というか、有場さん=アリアだと気づくのが超遅かった自分は一体…
人によっては二人がどちらも出てきた瞬間に気づくんでしょうね。髪の色そのまんまだし…
■歩ルート
大樹に「約束の日」に連れていく事を願う事が出現条件という隠しボス。
トゥルーシナリオであるが故に逆に書く事が無い…
夢先生が言うようにロビンソン症候群が治ったヒロインはルート終了時に現実世界に戻る事になりますが、
その後、夢の世界でそのヒロインはどういう扱いになっていたのでしょうか?
真樹の所で書いた解釈を用いれば「元々存在していない」扱いにされる事になりますが…
ナツユメで渚が4人の事をおぼろげに思い出す(「誰かの幸せな夢になれた事もあった。」)場面があったので、
実際には現実に戻ったヒロインは、その時点でいないorNPCになってたんじゃないでしょうか?
ゲームとしては性質上それを表現する事は出来ませんでしたが…
妥協案として、一度クリアしたヒロインはコンプまで再び攻略出来なくしたら良かったかも。
最後の別れと言う場面でウェディングドレスでのHシーンが挿入されていて、いらないと感じる人も多いとは思いますが、
個人的にはこっちのほうが最後の別れっぽくて好きですね。なんかこう、言葉以上に別れを惜しむ感じが出てるというか…
もちろん泣かせるぐらいに展開が上手ければそれでいいんですが(笑
やはりハッピーエンドではなく、心にやるせない気持ちがわき上がるラストでしたが、
この設定で主人公が生き延びるような展開に持っていったら逆に非難が大きかったんじゃないかと。
この作品をプレイするとどうしてもKeyの某作品を想起する人も多いでしょうが、最後の締め方だけで考えるとこっちのほうが好きかもしれません。
まぁ、あちらは生:死の比率が尋常じゃないのでハッピーにしないと大変なことになってましたが。
やはり考察できる作品ってのはプレイ後も楽しめて良いですね。
クリア直後は90点台超すのはちょっとさすがに…と思ってたんですが、
これだけ楽しく考察出来た事を踏まえて点数を若干上げます。