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KYさんの星空のメモリア -Wish upon a shooting star-の長文感想

ユーザー
KY
ゲーム
星空のメモリア -Wish upon a shooting star-
ブランド
FAVORITE
得点
93
参照数
1821

一言コメント

EH後再びプレイ。改めて綿密に編み込まれた設定に驚かされた ※後半にネタバレ考察あり

長文感想

本編を始めてプレイしたのはもう半年以上前の事。
当時は10数作品程度しかやっていない状態だったので、
今ならあの頃とどれだけ違う感想を抱くだろう?とか思いながらプレイしてみました。

ネタバレについて語りたい事も多くあるので、前半はネタバレ無し、後半にネタバレ含めた考察という形になってます。
未プレイの方はドラッグしすぎないようにご注意を!


共通だけ見るとあまり高評価は与えられないかもなぁ…
序盤はヒロインの魅力があんまり表れてないと思うのです。
明日歩と千波との掛け合いが序盤の展開の推進力になるのだけれど、どちらもアクが強くて少しウザいと感じる人がいるかもしれない。

他にも、
メアはこの時点ではまだ『よく分からない存在』という立ち位置であり、
こさめは「詮索は悪趣味ですよ」と何度もしつこい、
こももはしばらく天クルにとっての敵役として登場する、
衣鈴はツン期でデレの片鱗さえ見せない…などなど、
何かしら序盤のヒロイン達に魅力を感じ辛い部分があったりします。
主人公の洋も、最初は頭でっかちな部分が目立ったり。こちらはまだ地の文でフォローされてるだけ救われてるけど…

ここらへんは萌えゲーとして考えず、個別ルートへの前哨戦と割り切ったほうがいいのかもしれない。
…とはいえ、その前哨戦である共通がなかなかの長さなんですが(汗
色々と伏線も張られているので、それを考えながら進めるのが楽しいかも。

また、選択肢から個別ルートまでがかなり長いのでスキップをしても十数分待つことになったりするのが面倒…
「次の選択肢へ」があればもっと便利だったんだけどな。


個人的には個別ルートからこの作品の真価が発揮されていると思う。
家族や死神など様々な設定が複雑に絡まっていて各ルートでそれを小出しにして行く形になっているのだけれど、
明日歩→衣鈴→千波→こもも→こさめの順番でやるとちょっとずつ設定が明かされていって面白いんじゃないかな?
まぁ、こさめと千波は元々ロックが掛かってるんですが。

また、それぞれのキャラがちゃんと「人間してる」のも良いポイント。
たまにストーリーの進行役としての意味深な発言なども出てくるけど、丁寧に心情が描写されていて感情移入しやすかった。

何より萌える!
序盤ではあまり快く思わなかったヒロイン達も、個別に入ってからはハズレと感じるようなヒロインはいなかったですね。


■衣鈴ルート シナリオA+ キャラA

こももとは違うタイプのツンデレなんだけど、デレ期が丁度シリアスな場面と重なっているので
シリアスなのに萌えるという不思議な現象が。

ただ、大部分がツン期orシリアスのどっちかなので純粋に萌えられる場面が少なかったのもまた事実。
よってキャラの評価は少し下げてます…が、下げてAなのでその破壊力はお察し。

展開の後押しもあって、一番ヒロインの心理描写が丁寧だったルートで、特にヒロイン視点での語りを効果的に使ってるのが◎。
シナリオについては少し(主に物理的に)現実的でない場面があるものの、
そもそもメアが洋の悪夢を刈ったりする世界なんだから細かい事だと笑って流せるレベルではあったかな。


■明日歩ルート シナリオB キャラS

萌え。この一言に尽きる。
明日歩だけ回想枠が3つもある事がそれを物語っています。
特に3つ目のシーンは行為の前の会話が破壊力高くて一番のお気に入り。

逆にシナリオは?というと少し気になる点も…
彼女が思い込みが強すぎる故に極端な行動をとっちゃう場面があるので、そこは特に納得できない人が多いんじゃないかと。
序盤からメインヒロイン格な扱いを受けているけど、最初は少しテンションの高さに抵抗を受ける人も多いかも。

一番設定のネタばらしが少ないルートでもあるので、評価云々を無視するなら始めに手をつけると良いかもです。


■千波ルート シナリオS キャラB+

共通でも言えますが、「さすがに頭弱すぎだろ」と思う方も多いのでは?
ルート中盤からはそれも顔を出さなくなってきてはいるんだけど、
それまでの時点でかなり好き嫌いが分かれるかも…という意味でもキャラの評価は低めにしてます。

とは言え洋と千波の掛け合いは非常に面白い。
なんだかんだで洋の行動や無意識な言動から妹を大切に思っているんだな、と伝わってくるのも良かった。
…少しあからさまな気がしなくもないですが。

シナリオは家族の絆、また家族とはどういうものか?を描いたお話。
詩乃・洋・千波それぞれの心情がしっかり描かれていることに加え、
千波の深層心理とでも言うものが話のメインに据えられており非常に深い話でした。

兄妹での恋愛というタブーにはあまり触れてないのも良いですね。
このルートはそんなところで重くするような話でもないので。


■こももルート シナリオA+ キャラS

こちらは衣鈴と違って正統派(?)ツンデレで、金髪ツインテというステレオタイプな風貌に負けぬツンデレっぷり。
衣鈴にも同じような場面がありましたが、デレをヒロイン視点で表現するのは反則だと思う。萌え死ぬ。

こもも、こさめの2人については、これまでの3人とはベクトルを変えて姫榊家でのいざこざをメインに据えた話。
また、「死神」「悪夢」の定義(実態)についてもそこそこ触れてます。

内容に関しては激しくはないが熱い展開。ほとんどネタバレになってしまうのであまり多くは語れないんですが…
ただ、ファンタジー的要素に関する説明が少々難解で、しっかり理解しないと終盤の展開でついていけなくなる可能性があるかも。
しっかり理解して楽しむためには、少なくとも万夜花が星天宮について話をする場面はしっかり聞いておいて損はないです。

余談ですが、「セミがうるさいんだけど~」というセリフが何故かやけに耳に残ってて個人的名ゼリフ。
…いや、特になんという事もない場面のセリフなんですが(笑


■こさめルート シナリオA+ キャラA

ルートロックされていることもあって、こちらではこももルートで明かされた設定は軽く触れる程度に。
どちらかというとこさめの心情をメインにした内容になってます。

こももルートでのこももとの会話で散々「姫榊は頭の回転が速い…」などと言ってるけど、
むしろこちらのほうがよっぽど理知的な会話をしてる気がする。
あと、このルートだけ洋のカッコ良さが3割増し。…いや、むしろ口説き文句のクサさが3割増しか(笑

ただ、ラストが必要な事を書いているとはいえ無理やり伸ばしたように感じるのは少しマイナスかな。
もう少し綺麗に伸ばすことも出来ると思うんだけど…

エロシーンは2回ですが「Sを屈服させるS」が楽しめて良かった(ぁ
案外濃い内容で満足。


■謎の少女ルート シナリオS キャラA(EH入れるとS)

EHが出た今、もはや名前を隠す必要性を感じないのだけど一応。
明日歩を(必要性があったとはいえ)当て馬にして話が進み始めます。

死神とは何なのか、家族についての補足、などなど語られていなかった部分がどんどん明かされていくのだけど、
やはりきちんと一個一個理解していないと途中で?が出てくる事必至です。
特にかーくんについての場面などは…

次元や電磁波などの小難しい話題がよく出てくるけど、調べてみるとどれも(ある程度は)現実にも存在する話らしいですね。
とはいえ厳密に考えていくと矛盾が生じそうなので、あくまでもこの物語の設定という事で割り切っちゃうのが吉。

突拍子もない展開も多いけど、しっかり順序立てて考えていくと意味と根拠がある事が分かる内容(だと思う。完全には理解できてない…)です。
シナリオはこれまでの設定の集大成+泣き要素ということで十分今までで最高のS+を上げても良いのだけど、
もう少し分かりやすく出来たんじゃないか?という事もあってSに。

キャラについては見せ所は少ないけど、それでも十分魅力を感じられる部分は多かったですね。
かぷーとかぺろぺろとか、そんなの。
ヤバい。
という訳で(?)A。


■メアルート 計測不能(EHではシナリオS、キャラA)

オマケすぎて笑えた。何か補足があるわけでもなく、FDに丸投げ!って感じが(汗
物語として謎の少女ルートで終わらせたほうが綺麗に終われる、しかしルートが無ければ非難轟々だろうという板挟みの結果でしょうが…

でもEHが出たから結果オーライ!


CGも綺麗、コンフィグ周りも雰囲気を演出する良いポイントとなっており、十分名作と呼んで間違いない作品だと思います。
謎の少女とメアに関してはEHがあってこそのルートなので、同時にプレイする事をお勧め。
もうすぐ2つを纏めた「星空のメモリア Complete」が発売されるので是非。





---------------------ここからネタバレ-------------------------




纏めるのが難しいので箇条書きにして挙げていこうと思います。

☆考察☆

・悪夢=「まつろわぬもの」=「従えたくても従わないもの」
 「従えたく」と自動詞になっているが、衣鈴の望遠鏡のようにその人の自覚無しに悪夢になっている場合もある。
 元々抽象的+物語の都合でどうとでも取れる以上定義するのもアレですが
 A「意識的に自分を苦しめている何か」+
 B「無意識に新たな一歩を留めさせている何か」という解釈にしておきます。

 洋の悪夢=B
 1回目も2回目も夢に関する記憶。本人はそれを大事にしていたが、夢の願いの「自分を忘れて他の人と…」を妨げる障害となった為悪夢に。
 なぜか2回目は夢の事自体を忘れるなど効果がパワーアップ。…まぁ、1回目は刈っても結局夢とくっついたりしてますが(汗

 明日歩の悪夢=A(時によりB)
 悪夢の内容自体は展望台の彼女の存在だけど、刈ったものは本人の記憶的なものではなく短冊。その繋がりは、
 「(短冊を見ると)洋ちゃんが彼女を好きだってことを思い知らされて……」
 という明日歩の一言で説明がつくんじゃないかな。

 千波の悪夢=AとB…の中間?これ一番自信無いんですが
 内容は自分自身、もっと言えば自分の生まれた経緯と影響による罪悪感、かな?
 刈ったらさっぱり罪悪感消えちゃいました!だと話的にアレなのでレンと高次元空間で二人で話をする場面があったけれども、
 それだけなら別に三次元でも出来たと思うんで意味がない気も(汗
 せっかくの高次元なんだから千尋と歌澄に会わせてあげるぐらいしたほうがよっぽど辻褄も合うし感動的だと思うんですけどねぇ…

 衣鈴の悪夢=B
 内容は望遠鏡。あの時点で衣鈴自身は満足していただろうけれど、
 未だに雲雀ヶ崎の星空を好きになれず南天の星空に未練があった…ということで刈られる対象になった、と考えるのが妥当かな?
 しかし粉々になった望遠鏡を直すのはさすがに無理が…(笑

 こももの(幼少時の)悪夢=A
 万夜花は刈られたのは記憶ではなく星霊の儀ではないか、と説明していたけど、
 それだとこさめの「いつからか本当に忘れたような素振りを…」+こももの「(メアに刈られた)その夜から…事故の記憶を失った」
 というセリフと合わない気がする。
 「星霊の儀の方法に関連して記憶も刈られた」よりは、「記憶に関連して星霊の儀の方法も刈られた」のほうがまだ納得いきますし。
 しかし洋の場合は夢の存在ではなくピンポイントに名前だけを忘れたあたり、刈る悪夢の範囲もかなり差があるようですが(笑
 もしくは単にこももが当時からうろ覚えだった星霊の儀を忘れただけでは…

 こう考えるとBは「他人の願いを悪夢に変換する」とも解釈できるかもですね。
 洋の場合は夢が、衣鈴と明日歩の場合は洋が願った内容が悪夢になってるので。


・人間以外の存在について

 星神=メア・レン・かささぎ?
 星神もどき=こさめ  
 星霊?=歌澄・千尋    がそれぞれ登場してます。

 星神は隕石と一緒にやってきた宇宙人もどき(ただし三次元の存在ではない)。
 普段は眠っているけど、人々の願いや約束によって生を受けるそうです。
 レンはおよそ60年前に雲雀ヶ崎に落ちてきた隕石に眠っていて、大河の姉の「大河を見守って欲しい」という願いを受けて。
 メアは6年前(7年前だったか)に落ちてきた隕石に眠っていて、夢の「洋が自分に関する事を忘れてほしい」という願いを受けて。

 隕石さえ残っていれば、送り還されても数十年後にまた復活するらしい。
 また、隕石から遠く離れる事は月の光パワー的な何かを消耗するらしい。
 
 かーくんについてですが、隕石が劇中に登場しないので確定は出来ないけどレンとの会話を聞く限りどうやら星神のようです。
 

 星霊は星砂を使って人が死んだ者の魂を降ろした姿。
 恒久的な存在で、星神と違って遠くにも行けるかもしれない。

 こさめはこももが星霊の儀を使って呼び寄せた魂ですが、
 星砂ではなく星神の寄代ともなる神社の隕石を使用しているので星神に近い星霊というイレギュラーな存在のようです。
 恒久的な存在+遠出も問題ない+感覚を自在に操れる、などお互いのいいとこ取りをしていてセコい。

 千尋と歌澄の2人は星霊かな?とも思いましたが
 ・正常な人間の前で姿を現す事は出来ない
 ・千尋の言葉によると死んでから留まるのを許されたらしい
 などから、どうやら触れられていないまた別の種類みたいですね。


☆ツッコミや疑問など☆

・衣鈴ルートで下校は衣鈴と一緒の下校を許した洋だが、
 ではなぜ登校時わざわざ千波を待ったのか?千波と望遠鏡を直す時間を作ることが目的であれば登校も構わないハズだけど…

・明日歩ルートで展望台の彼女を恐れる気持ちだけで、
 耳の障害がバレた時の反応はあそこまで行くかな?少し結び付け方が強引な気も。

・結局マスターがあそこまで明日歩の手伝いを拒んだのは何故だろう?
 洋がいるので、「一人にさせたくない」という当初の手伝わせる理由は無くなったけど、わざわざ追い出すまでしなくても。
 明「お手伝いしてても夜に一緒にいるし」→マ「夜だと星見くらいしかできないだろう」
 →「(星が嫌いなので)正直言うと洋と星見するより他の事で遊んでほしかった」
 という解釈は出来るけど…少し強引な気がする。
 まぁ、単純にマスターが頑固オヤジになってただけかも(笑

・千波ルートで詩乃さんが傷ついたのは、
 子供を産めない体だった+夢見がちな性格だったことによる憧れであった「子供を支えてあげるのが母親だ」という
 思い(思いこみとも言える)を洋が壊してしまったから?解釈が難しいな…

・(どの時期においても)こももの悪夢がこさめ自身というのはどうだろう?
 いくらこさめがこももの呼び出した星神の類だとはいえ、
 こももを刈ればこさめが消えるというのは明日歩の悪夢を刈ったら夢が消える、というのと同じレベルだし、
 そもそもその程度でこさめが消えてしまうのであれば最初にメアがこももを試し刈りした時にこさめは消えてた気がする。
 「もうこさめが悪夢ではなくなった」とこももが言う時期はともかく、それ以前に刈ったとしてもまた事故の事を忘れるだけじゃないかなぁ。

・かーくん達星神が、願いが果たされる事で還るのであれば、
 メアも2回目に洋を刈った時ではなく1回目の時点で既に還るのでは?

・A 詩乃「あれから二十年もたってるのに」 レン「…時間は関係ありません」
  +マスター曰く「僕と年が10も離れてない」
  =40代前半中年男性×レン
 B 大学在学中の旅行の時に中学生の歌澄に一目惚れ 
 
 洋のロリコンは遺伝だったんだな…

・夢が洋を甘えさせる場面。
 洋が強がっているという事があまり印象付けられて無かったのでもう少しその前にそれを強調したほうが良かったかもしれない。
 あと、甘えさせる=体を許す、というのは何か違う気がw

・巻き戻しネタについては唐突な上に、最初見た時は
 「なんで夢普通に出てきてんの?物語上死なせたほうが良くね?」と思ったけど、ここでの中心となるキャラは夢ではなくメアだと考えると納得できると思う。
 それまでは夢が中心になって物語が進んでいくので分かり辛いけど、あくまでこの場面は「メアがいなくなること」が重要なシーンですね。

・千尋と夢の祖母が同姓+病気の内容が一緒だったということは、夢と千波は遠縁という事になるね。

・最後は幻想的に締めてあるので細かく言う事は野暮だけど一応。
 二人の願いによってメアが生まれたので、その願いの光を二人に返すことで洋と夢の今の願いである「夢が助かる事」が叶う、という解釈や
 メアを形作る要素である「人の願いで生まれる光」が月の光から夢を守ることで夢は助かる、という解釈など色々できますが、
 するとメアが願いを果たして還る事になった巻き戻す前の世界では光はちゃんと2人のもとに戻ってくるのかな?
 夢が助かってるのでそういうことなのかな… 


…とまぁ色々揚げ足取りっぽくなってしまいましたが、所詮人の心なんて分からないものだし
設定に関してもこの作品自体がお伽噺のような雰囲気も持っているので、細かい所は気にしない方針で。


これで長々と書いたレビューとネタバレ考察はおしまいです。
ここまで読んで下さった物好きな人に感謝。