最終的にこれが短いと思った僕は確実に異端。 ※軽いネタバレもあります
WLOという組織自体がまず破綻してる上にNOAとWLOがどう違うのかよくわかんない上に、
全然機能していない伏線、あまりにも多い誤字、展開どころか設定すらご都合主義万歳…
…敢えて言おう、カスであると!(ぁ
でも、悪い部分が多いからと言って他の作品にはない「光る部分」をも否定する理由にはならないんじゃないかと。
例えば序盤の蛍のセリフ。
「恋愛の入り口の場合、なぜ外見が重要視されるか?」
「最初は相手の事が分からない。話せば人間性というものが徐々にわかってくるけれども、それには時間がかかる」
「そこで、まさに一目瞭然。人は外見から相手の事を知ろうとする」
「寝癖がついてる、この人はズボラな人かな?
襟が汚れてる。この人は洗濯しない人かな?
耳が汚い。細かいところまで気がつかない人かな?」
「困った事に、相手を知る手段だったのに、いつしかそれは相手を判断するものになっていく。それに気づいた人は、外見を磨こうとする──」
「もしその外見が悪ければ、人間性がいくらよくても、相手の貼ったレッテルでしか見てもらえなくなる」
…感心しました。当たり前だけどこんな事他のゲームでは書かないし、書けない。
エロゲでこんな事を真面目に書くチャレンジ精神が特に良かったですね。
また「ダメ人間を更生させる」というコンセプトの中、明らかに現実的ではない周りの人間の中で、唯一現実的に成長していく等身大な主人公がある意味一番良かった。
CGを見れば分かるように、最後まで外見もどことなくショボさが残っていたり、まだまだ言動が不用意だったり…
これが最後には完璧人間に変貌していたら面白くなかったんじゃないかと。
さて、一言感想に書きましたが、テキスト量6.5MB(前作「G線上の魔王」は2.02MB)とアナウンスされていたこの長編ゲームを何故短く感じたのか?
長くてダレるという意見がありますが、それは「大きな起伏が1つ」が基本の、他の大多数のエロゲーに慣れているからそう感じるんじゃないかな。
少なくとも僕は、一人当たり3時間で8人攻略できるゲームより、一人当たり6時間で4人攻略できるゲームのほうが好きですね。
長ければ長いほどそのエロゲに、世界に、そして人物に感情移入しやすいので…
人によって属性などの好みは違うのだから、ニーズ的(商業的)には攻略対象は多ければ多いほどいいのでしょう。
けど、属性から固めたような「キャラクター」をたくさん生産したゲームより、数は少なくともきちんとした「人間」を軸にしたゲームのほうが好感を持てます。
また、始めてから終わるまでたかだか5時間ぐらいの物語の中で、ヒロインについて納得いく描写が書けるライターなんて中々いないだろうし、
それなら、長くなってでも、攻略人数が少なくなってでも、しっかりと人間らしさを表現できる物語を作っていってほしい。
それを実現してくれていることも、このゲームを気に入った理由の一つです。
誤解無きように言っておきますが、ここでいう人間とキャラクターの違いは決して境遇や身体能力などではなく、感情の変化が作為的ではないか、かいつまんで言えば「人間らしい」かどうか。
話をライターの都合のいい方向に持っていく為、あり得ない方面に感情を持って行かされる「キャラクター」は今までたくさん見てきたので…
もちろん人間の感情それ自体が複雑なのでどこまでが普通でどこまでが異常なのか、それは人によっても捉え方が違うけど、
それがいったん目に付いてしまえば、その後の話も全て作為的に思えてくる。
逆に、周囲の環境や展開がいくらご都合主義万歳であろうが、その中に出てくる人間さえしっかりしていれば途中で醒める事はないんじゃないか。
…という観点から考えて、一番長いアリサルートが自分にとって最高でした。感情描写やその変化が丁寧に描かれています。
途中少しだけダレる場面もありましたが、基本的に起伏もしっかりしており、それでいて長い。
感情移入が出来た分、他のルートよりもクリアが速かった気さえします。
勝手な意見だけど、優梨子ルートと伊那ルートを削ってでも、アリサ以外の3人のルートをアリサ並みにして欲しかったですね…
他のルートはこれでもまだまだ薄い。いくら付き合った後の愛奈が可愛かろうが、蛍がSであろうが(?)、付き合うまでの描写が丁寧に書いてないと萌えられない。
そんな人も多いと思います。
やはり登場人物の数が多いのはいいですね。クラス全員にちゃんと名前が付けられているとかっての大好き。
例えモブキャラで誰が誰か分からなくなってでも、たくさんの人間がいることを示したほうが物語の雰囲気は現れやすい、伝わりやすいのではないでしょうか。
さりげなく所々で良い事言ってる先生がある意味このゲーム一番の聖人君子だと思う。
音楽について。曲数が半端ないらしい(150曲ぐらい)のですが全然気付かなかった…。
あるメロディーを基本にしてたくさんの曲を作ってるからこそ出来る芸当ですね。
その基本になるメロディーが少し幼稚っぽいので最初は気に入りませんでしたが、段々慣れたかな。改めて聞くといい曲も多いです。
Hシーンの数もかなり多いですが、やはり感情移入できたキャラとのHシーンはじっくり読んだ(読めた)し、そうでないキャラは半ば手動スキップのような状態でした。
サラサとか好きなんだけど、いまいち短いせいで感情移入できずにHシーンで萌えることは出来ず。残念…
誰かが書いてたけど、妄想でもいいのに姉妹丼がないなんて
おかしいね、うん、おかしいよね。
─CGがあるならテキスト入れてくれたっていいじゃない…ッ!
FDで、攻略不可なキャラクターとのシナリオよりもメインヒロイン達とのエピローグ後が好きな人、
また、エロゲに限らず小説や漫画などが終わった時まだ続きが見たかったと本気で悲しむことの多い人とは仲良くなれそうです。
なんかこのゲーム云々よりもエロゲ考察が多くなってしまいましたが、このゲームが長さ故に人を選ぶのは確か。
このレビューを見て共感してくださった方は十分に楽しめると思いますよ。