素晴らしかった!個人的にはジャンプの三大原則を別の視点から描いているような印象を受けた作品
公式サイトを見て女装もの萌えゲーだと思ってたら意外と超シリアス。
序盤こそ難しい言葉や言い回しの意味が分からず辞書を引いたりすらしていましたが
話が進むにつれてテンポが良くなり、テキストも簡単になってスラスラ読めるようになります。
ちなみに学園モノではありません。学園での生活は宮和との会話でそこそこに、基本的には放課後や休日の活動がメイン。
「呪い」という現実世界では精神的な事象が現実化した世界の物語。
これについてOHPでぼかして書いているのが萌えゲーと勘違いした理由だったりする…
途中で矛盾が発生して破綻しそうな難しい設定をライターが上手く纏めています。
たまに矛盾してるんじゃないかと疑う場面もありますが、よく考えると辻褄が合ってたりそこまで大事な事じゃなかったりして気にならないレベル。
また、エロゲな以上ルートがある訳で、
こういった「大きな1つの問題を解決していく」タイプのシナリオはルートの間に格差が生まれる事も多いけど、
このゲームはどのルートの結末も『if』として納得できる終わり方になっていて良かった。
(伊代シナリオだけはトゥルーへの伏線といった印象を受けましたが)
また、トゥルーエンドが安易なハッピーエンドでないことも、個人的には残念だけど作品としてはいい終わり方だったんじゃないかと。
呪いによって死ぬという若干ホラーな描写もありますが、襲われる視点に立った状態で殺されるような事はないので安心。
ただ、ちょっと怖い1枚絵やら不気味なBGMやらあったりするので夜に暗い所でやったりするとそれなりに怖いかも。
一言にも書いた通り、友情・努力・勝利という少年ジャンプの3大原則を思い出すような内容です。
…とはいえ努力とは友情のための努力であり、勝利したのは1部のルート限定ですが。
誰もが他人であり相容れない存在であることを自覚しながらそれを乗り越えていこうとする主人公(智)の姿勢には好感。
「同盟」から「仲間」になって行く過程を描いた描写は素晴らしいと思います。
また、終盤で出てくる「CAコーポレーション」や「2つの袋」の話のように、社会や人間の醜さ、正義や善とは何か、という問題にも触れた作品。
ただし考えさせられるとまでは行かず、単純に物語のスパイスとして使われた程度の物ですが。
結末はどのルートも良かったけど、伏線の回収やネタバレの度合の事を考えると確実に一本線の物語です。
裏を返せばルートの順番を間違えるとつまらなくなるという事。
るいと茜子は最初からルートロックされていますが、他の方も書いているようにるい→花鶏→こより→伊代→茜子の順番で良いんじゃないかと。
特に伊代を2番目にやってしまうと、こよりと花鶏のルートが5割はつまらなくなるので注意。
みんな智かわいい智かわいいって言いますね。「やぁの、それやぁのぉ!」と言う彼を愛でるその気持ちもよく分かりますが、どう考えてもこよりが一番だろjk。
ウサギっこの破壊力は抜群。
花鶏に身も心も調教されたこよりが見てみたいと思うのは僕だけですか?
花鶏が大活躍するFDを期待するしか、ない。
…それはともかく、キャラクターが個性的なため日常パートもかなり面白い。(序盤は面白いというか難解ですが)
伊代がかなり地味キャラなイメージだけど、実は日常ではるいが一番目立ってなかったような…
日常を面白くする要素はキャラの個性。どんなに個性のない主人公でもヒロインでも、
シリアスはそれ自体が面白ければ楽しめるものですが、日常はキャラクターに個性がなければ退屈になってしまう。
「るい智」のヒロインに萌え要素(萌え描写)はあまり感じられませんでしたが、そういう意味ではかなり良いキャラクター達でした。
なんにせよ、かなり重厚なシナリオ!
2009年発売の中でかなり上位に食い込む作品です。
FDに期待しつつ、さらに欲を言えばサブヒロインの攻略だけでなく日常のシナリオが欲しいところ。
…次はさっぱりとした物をやろう。