主人公が変態紳士なのを除けば良くも悪くもありふれた筋書き。キャラの魅力が主人公>>>>ヒロイン達>>敵役の稀有な作品
正直なところ無印の方は共通ルートと朔ルートの一部(黒船戦とか)を除いて普通のシナリオでした。
無印はプレイ時間が20時間も無いのに、ヒロイン四人は詰め込みすぎと言わざる負えない。そのせいで描写、エピソード不足が目立ちヒロインとの交流が少なく物語を楽しむには感情移入が足りない。
口から語られるだけの事柄が多いのもこれに輪をかける。例えば、復讐の動機(後述)、黒船の動機とかヒロイン同士の友情を感じられる具体的なエピソードが少ない(これに関してはSEルートである程度補完された)など
復讐の動機が一枚絵と僅かな語りだけで描写不足、この作品に限った話では無いが復讐もので始まりの悲劇の詳細を描かないのはいかがなものか(幸せな日々とそれを奪われた凄惨な場面を声入りのセリフとCGをつけるだけでもだいぶ変わりそうなものだが)
しかも復讐対象が全員、客観的に見ても死んで当然のクズなうえ、妹があの様なので後半は復讐ものというより勧善懲悪な感じが拭えない。主人公の復讐を否定するのも復讐対象者ばかりでヒロイン達は割とすぐに受け入れるのでそれも拍車をかける。
一言感想でも書いたが主人公に対してヒロインや敵役が力不足なのが無印の最大の欠点である。主人公の中身に関しては議論の余地があるだろうが少なくとも上辺は上出来である。セクハラと言い回しが鼻につかなければ言動に関してはケチのつけるところは無いだろう。
個人的にエロゲの中では五本の指に入るカッコよさである。
これらのヒロインが好きな人には悪いが珠緒、空子、エルルートはバトル系ノベルに有りがちな小出しで数合わせにしか思えなかった。
空子に関しては仇の娘で幼馴染という美味しいポジションなのに存在感が薄いのは非常に残念だ(SEルートではさらに薄くなる。あと二重人格ヒロインが嫌いという個人的な理由だが好きにはなれなかった)。
エルルートは新たな謎も増え悪くは無いがラストに主人公があまり戦わずに終わるという何とも言えない感じ。
朔は悪くはないのだが、他のキャラと比べれば良いのだがそれでもやはりエピソード、交流不足である。規律ある真面目なヒロインは好かれそうなものなので惜しい。
このルートに限ったことでは無いが、戦闘が出来る敵役が黒船、メイド、瑠璃ぐらいしかいないのはどうなんだろう。黒船は文句は無いがメイドは隊員Aと表記できるレベルのキャラで瑠璃も伏線があったとは言えぽっと出な感じは否めない、これから本格的に悪事を働こうとする生まれついての悪がラスボスを務めるのは個人的にいまいちだ。
大義がいきなり恋をしていたと言うのもぽっと出感を加速させる。いきなり妹を出して驚かせようとしたのか？ だが、メタいがコンフィグで枠が空いていたり、メイドの顔や人為的なHMIなどの伏線で分かった方は多いだろう。
朔ルートの明確な不満はラストの拍手のシーンである、このシーンは笑ってしまった。溢れる出るB級感。
ライターは主人公を妹殺しにしたく無かったのだろうか？私は殺しても良かったと思う。主人公は何某が殺されて再び立ち上がるのだから完遂(復讐)して欲しかった。復讐もので最後の標的にトドメを刺せないのではカタルシスが得られない。
あとはエンディング後のヒントのギャグがダダ滑りだった。本編のギャグは良かったのに……ここだけ素人が書いてるのか疑うレベルである。
燃えゲー、能力バトルにおいて敵の魅力は非常に重要なので、無印単体で評価するなら、70点後半代の出来だった。
菱吾ルート。ほぼ朔ルートの別視点なだけという……。それでも黒船戦は良かった。
美鳥ルートは良かったです。声有りの独白によりヒロインにも感情移入しやすく無印から改善が見られた。
SEルート。他のゲームならトゥルーに相当する新ルート。全員パワーアップでインフレのお祭り感嫌いじゃないぜ！これくらいの勢いが各ルートにあれば良かったのだが。
このルートをプレイするまでいまいちな作品と思っていたが、勢いに飲まれて楽しめた。復讐劇と兄妹対決に終止符を打ち、満足いった(最後に主人公が倒れるが本当に死んでも綺麗で良かった)。しかし、CGの使い回しが目立つ。
それと、殺し合いに慣れてないような描写が無印の朔と美鳥にはあるのだが、SEルートでは殺意の高さに些細な違和感を感じた。防いで無かったら大事な学友は死んでますよ？。まぁこれに関してはそもそも実戦経験ある朔と美鳥が殺し合いで狼狽える無印の描写の方がおかしいかも。