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KK315さんのCHAOS;CHILDの長文感想

ユーザー
KK315
ゲーム
CHAOS;CHILD
ブランド
MAGES.(5pb.)
得点
96
参照数
454

一言コメント

ノベルゲームに苦さを求めるなら絶対にやるべき傑作。刺さる人には、これ以上ないくらい刺さる。エンディングはシュタゲを超えた。未プレイの方に注意 ネタバレ画像が出るので検索はしない方が良いのと、このゲームの真髄はサスペンスでもミステリでも無い。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私はノベルゲームの中でこのゲームを超えるエンディングの余韻を味わったことがない。この作品はマイベストノベルゲームである。エンディング後にタイトル画面に戻り、物悲しくSILENT WORLDが流れるのを15分ぐらい放心しながら聞いていた。

一言感想で書いた通り、この作品の最大の見どころはサスペンス要素でもミステリー要素でも無い、これらは真意を隠すためあるいは結末への道筋でしか無く、この作品は宮代拓留と尾上世莉架の別れの物語である。



シナリオについて
序盤は主人公が痛かったり単なる野次馬だったりで、3章で来栖が刺され4章の渡部死亡あたりから事件が主人公達を追ってくるようにと本格的に面白くなった。
説明されない点やおかしな点がいくつかあるが(後述)、何度も言うようにミステリ要素が本質では無いので不満点にするほどではない。超能力が絡んでる時点で本格ミステリでもないので。とは言え、犯人や猟奇殺人にはそれなりの衝撃が真相には大きな衝撃がありサスペンスとしては充分だろう。

シュタゲのように完成度が高いエンタメ作品でもSFでも燃えゲーでもない。この作品は陳腐な表現だが人間ドラマである。
本作の最大の魅力は真実と嘘を乗り越え成長するキャラクター達とそのエンディングだろう。選択と結末、主人公と彼女たちの生き方には胸が打たれる。単に切ないだけで無く前向きさを含ませた結末に感動した。



キャラについて


宮代拓留 -男が……好きな子にすがりついて生きていくなんて、出来るわけないだろ-

彼は初めは妄想科学ADV特有のダメ主人公である。自分勝手で自分は周りとは違うと思っているリアルなイタさを持つ。そんな彼がヒカリヲでの戦いや和久井との対決で好きな女の子に縋り付く事を良しとせず自分のためではなく普通の女の子として生きて欲しいと願うシーンはエンディングに次ぐ名シーンだ。
彼の選択により妄想の友達から本当の意味で尾上世莉架となった。


尾上世莉架 -舞台の照明が、まるでスポットライトのように、私に降り注いでいた-

全ては宮代拓留の願いを叶えることが行動原理である言っていたが、乃々に対して嫉妬したり思考盗撮の能力で他者の感情がわかってしまう事への苦悩など人間臭いところも持ち合わせている。
そんな彼女がTRUEのヒカリヲで全てを思い出しても※1拓留の意図を汲んで知らない人と答え別々の道を歩み普通の女の子として生きていくのは非常に感慨深い。

後日譚で、初詣で人々が微笑んでいる光景に世莉架が涙を流す描写がある。この描写を見て主人公の選択は間違っていなかったんだなと思える。
思い出した後に拓留の望みとして普通の女の子となるから本質は変わらないという見方があるがヒカリヲで涙を流すシーンとこのシーンを見ればそんな事は無いと思う。


※1 思い出したかどうかは明言されておらずプレイヤーの想像に任せている(設定資料集より)



本作をプレイして面白かった人には是非、小説Children’s Reviveを読んで欲しい。ヒロイン達の後日譚が描かれており多少はカオチャロスを埋めてくれるだろう。世莉架が出るのは最後だけだが結人と伊藤の描写もある。公式資料集もオススメ。
アニメは見ないでいいです(見どころは有村のお洩らしシーンぐらいですw)。FDのLCCは尾上世莉架を目当てに買うのはダメ。有村が目当てならまぁまぁ楽しめる。



以下は完全に雑記

CC症候群の伏線。かなりの数があるので特に分かりやすいものだけ列挙

CC症候群について学生達は全く言及せずTIPSにも表示されない。
宮代拓留を騙った狂信者について久野里世莉架らが外見だけですぐに判断できた。神成が「CC症候群者では無かった」とのセリフ。
宮代拓留が体力が無く息を切らしたりする描写が多々ある。久野里に腕を掴まれた時に強く感じたり世莉架に引っ張られたり大学生や佐久間からひ弱さを指摘されるシーン。



疑問や明言されていない事に関して。私見であり色々と間違っていると可能性があるのでご容赦を


①なぜ、尾上世莉架はCC症候群を患っておらず顔も老化していないのに、碧朋に入学出来て外部の人間に怪しまれていないのか?

入学に関しては思考誘導や和久井との関わりがあるからどうとでもなるが、部外者(久野里と神成)はどうしたのだろうか。
CC症候群者が必ずも老化するとは限らないのか?だがLCCやアニメ等の作品、別媒体でも老化していないCC症候群者は出ていない。久野里は世莉架が老化していないので能力者では無いと推測していた。
ちなみに久野里は碧朋の制服を着ていたが、本当に転入してきたようである(設定資料集より)。


②世莉架と佐久間の協力関係

共通ルートだけのプレイではお互いに協力を結ぶ利が薄いと感じるかもしれない。
佐久間は面白い事(ギガロマ研究)のために、世莉架に協力しており委員会に戻るためという話は久野里を釣るための設定であった(委員会に存在をアピールするというのは本当かも?)。
和久井の正体が分かれば明言はされていないものの和久井と世莉架の関係が前提としてあったのだと予想できる。
コミック版では和久井から世莉架への指示があったという分かりやすい描写が入れられているらしい。世莉架は宮代拓留を特別にするために、和久井はCC症候群者の始末とワンワールドオーダー実験のために協力(黙認)をしていた。

おそらく佐久間と世莉架の佐久間への口ぶりから、佐久間はこの事を知らない。
思考誘導をかける前に思考誘導が無ければ殺していたと世莉架は言っているが、機械がなければ佐久間は普通の人間なのでいつでも殺せる。実際に来栖ルートで殺しており佐久間は完全にゲームの駒だった。
思考誘導をかけるくだりでやけに佐久間が、世莉架に対して素直だなと思うがこれは「そのほうが面白ぇだろ?」ということか。


③ラブホでのノック音はどうやったか、ドアロックをどうやって閉めたのか

思考誘導をした?世莉架が鳴らした?という説がある。映像に残っているのでノックしたのは確実(この時の映像でノック音がしている時は暗転していて世莉架が何をしたのかはわからなくなっている)。
有村が思考誘導を受けていた事から佐久間がラブホまたはその周囲にいた事は確定で、ロビーにいた警官は拓留たちを見て普通は補導するところを部屋に戻っていろと言って通したあたり思考誘導されていた可能性が非常に高いことがゲーム内で提示されている。ロビーを通り過ぎようと提案したのは、世莉架であり仕組まれていたので確実といえる。

思考誘導でノック音が外からしてるように聞こえ鍵が閉まっているように見せられていたか、警官を思考誘導しておこなったどちらかだと推測する。
前者だと拓留が血涙を流す描写は無いが、本編を見た限り思考誘導を受けた人物が必ずしも血涙を流す描写がある訳では無い、血涙を流すタイミングは絶命時や感極まった時が多い。
単に一人称視点だから気づかなかったというのもありえる。後者なら拓留の血涙描写が無いのは警官が思考誘導されてやったから、で説明がつけれる。
世莉架がノック音を出したのは、ともかくドアロックを閉めるのは思考誘導で無ければ無理だろう。ドアを開けたのは拓留が無意識に能力を使ったとあるが、思考誘導で無い場合に無意識にラブホのドアロックを閉めるのはおかしな話。

余談だがホテル3階廊下で「こっちの不安が楽しみでしょうがない誰かが、僕を見ている気がした。心の底の感情を覗かれているような」と書かれている。
そのまま受け取れば思考盗撮されている事に感づいたという事なのなのだろうが、この時の視野狭窄の様な演出は思考誘導されている演出かも?


④久野里が症候群者に対して当たりが強かった理由

設定資料集よりギガロマ研究で子供を見殺しにした罪から精神を守るために子供が死んだのはギガロマのせいと思い込んだから。私は未視聴だがドラマCDにて詳しく描かれてるとのこと。


⑤尾上世莉架は純粋なギガロマ、拓留に次ぐ強力なギガロマだった説について

都合がいい場面で宮代拓留が無意識にギガロマの力を使っていたと説明されているが、これらのシーンでは世莉架が拓留を誘導しており、そもそも拓留が無意識にギガロマの力を使うことを前提とする計画では杜撰すぎる点がある。
世莉架が思考盗撮の能力者にとどまらず強力なギガロマだった場合、計画の杜撰さが解決する(拓留が能力を使うように思考誘導を多用していたら検査や血涙でバレる可能性があるので思考誘導はしていないと思われる)。

根拠
地震の影響では無く世莉架は拓留の妄想で生まれCC症候群者ではない。
CC症候群者ではない=単なる思考盗撮の能力者ではない
力士シールの影響を受けていた描写が無い(これについては、純粋なギガロマでも影響を受けるのでただ単に描写が無いだけか、CC症候群者ではないので耐えれる範囲の影響の可能性。そもそも渡部殺害の際の力士シールはニセモノなので影響は受けている)
ディソードがあるとは言え思考盗撮だけでは拓留の両親や共通エンドでの警官殺害は難しい
佐久間が死んだ後に世莉架のディソードに貫かれた幻覚を見た

反論
思考盗撮の能力者だと自分で語っていた
ギガロマ研究に熱心な佐久間が一言も言及しない
思考盗撮以外のギガロマの能力を使ったことを明言する描写が無い
ヒカリヲでの戦いや来栖との戦いの際に思考盗撮以外を使っていない


この様に色々と腑に落ちない点はあるが、初めに言ったようにミステリー要素がこの作品の肝ではないので、不満点というほどでもないし言ってしまえば複数ライターの弊害なだけかも知れないので突っ込むのは野暮かも(メインライターは序盤終盤を除けばプロットのみ担当の模様)。



設定資料集の感想、わかった事。

力士シールが実在する
拓留が神成に昔の世莉架の事を饒舌に話すのは人が嘘をつく時にそうなりやすいから
力士シールをかぶった集団は思考誘導されたのではなく本当にただ集まっていただけだった
共通エンドはハッピーエンドのつもりらしい……
雛絵の母の犯行は世莉架が起こすように仕向けた
うきルートで渋谷駅が突然無人になるのはうきが渋谷の外を知らないから
宮代拓留を特別にするという世莉架の目的はリアルブートされた時からあった
来栖ルートのノーマルエンドがカットされた。川原に泉理がさされるというエンド
和久井が拓留の提案を受け入れたのは和久井も委員会では被支配者であるため
他にもあるがまぁそれは購入して確かめてください



個人的な話

数年前にプレイし私が三番目にプレイしたノベルゲームなので衝撃にやられて過大評価気味かもしれない(シュタゲ→カオヘ→今作)。
このゲームをプレイするために前作であるCHAOS;HEADをプレイした。CHAOS;CHILDの感想なので詳細は省き端的に言うと「つまらない上に不快な部分が多かった」ので初め今作には全く期待していなかった。期待以上だったというのも私の作品への評価を上げる要因になったていると思う。

あと共通のラストで強気な黒世莉架が泣きながら嫌がるのエロい!エロくない?(変態)