ザウスやフォグの凋落は、本作で日本の神々や怨霊をぞんざいに扱ったことが、原因の1つではないだろうか。
PS2版とPCフルボイス版は事前にプレイ済。本作は名作「久遠の絆」の18禁リメイク版であるが、
内容は原作とほぼ別物。当サイトの先人諸兄のレビューを見ても、本作の評判は芳しくない。
理由は色々とあるが、他の多くのレビューで既に語り尽くされているので、本稿ではその辺の
ことは割愛する。
そもそものプレイ動機だが、本作では内容と設定のほとんどが原作とは大きく異なる。
私自身は原作の雰囲気(特に平安編)が大好きなので、内容の異なる平安編をプレイして
みたかったというのが最大のプレイ動機。丁度中古価格が手頃だったこともあって、
つい衝動買いしてしまった。
以下、簡潔に総評。原作とのテーマの違いの問題、登場人物の設定&性格改変の問題、章毎の
内容不整合の問題、CGの統一性の無さの問題、微妙なエロシーンの問題、「再臨詔」&おまけ
シナリオ削除の問題、マウスオンリープレイ不可の問題など、他のレビューで取り挙げられている
諸々の問題点は、確かに私自身も気になった部分であり、原作と比べてマイナスの評価となって
しまうのも必然の結果であると思う。
一方で、平安編や神代編など、原作に引けを取らないレベルで鮮やかな世界観を作り出している
部分も確かに存在し、少なくとも私の場合は、これらのパートに対して没頭してプレイできた。
よってこれは評価に値する。また、故・風水嵯峨氏によるBGMは原作同様に最高品質である。
フルボイス版には及ばないものの本作のボイスも悪くない。
結論として、本作を「久遠の絆」と見做すことをせず、完全に別物の二次創作作品として
認識すれば、相応に楽しめる作品であると思う。少なくとも、巷に氾濫している工夫の無い
作品群よりは遥かに完成度の高い作品ではないだろうか。
(以下、ネタバレのオンパレード。ご注意下さい。)
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まず、本作の神代編では、日本の神々が多く登場する。大国主、事代主、建御名方、建御雷、
天若日子、下光比売など、日本の各地に祀られている天津神・国津神が、神代編という物語を
紡いでおり、記紀マニアやメガテニストであれば、垂涎物のたまらない世界観になっている。
ここで問題なのは、本編におけるこれら神々の扱いがかなり酷いという点である。建御雷を
除く神々はほぼ全員、大した活躍も無く、黒幕に殺されるか利用されるかという結末である。
普通の人間のモブキャラと大差が無いこの扱われ様は、メガテンシリーズも真っ青だろう。
上述したように、私はこの神代編に対しては評価しているが、これら日本の神々の扱われ方に
ついては、もう少し何とかならなかったのかと思わざるを得ない。この時点で、ザウスとフォグは
神々に祟られても仕方が無いと思う。
次に、本作の平安編について。原作における代表的な悪役である藤原道綱の代わりを、本作では
崇徳院が務めている。作中での崇徳院の描写については、史実・伝説を鑑みても大きな違和感は
無く、かなりリアルに再現されているのではないかと思う。これは評価したい。
しかし問題は、制作陣は事前にきちんとお祓いをしたのかという点である。何しろ崇徳院と言えば
平将門公、菅原道真公と並ぶ、日本三大怨霊の一柱である。例えばメガテンシリーズにおける
常連キャラの将門公の場合、開発元のATLUSは新作開発の前に、公の首塚参りを恒例行事として
実施している。未然に祟りを防ぐためである。
それ故、もしザウス&フォグが、本作開発前に崇徳院に対する鎮魂の儀を怠っていたとしたら、
祟りを受けても止む無しであろう。日本の怨霊は決して軽々しく扱ってはならないと思う。
最後に、本作の万葉√終盤について。本作のラスボスは、日本の御祖神である伊邪那岐命である。
はっきり言ってビジュアルも扱いも酷い。物語の展開としては面白いのだが、伊邪那岐命を
ラスボスにする必然性は無い。これもまた、祟られても文句は言えない所業だと思う。
以上の論点はあくまで私自身の脳内的お遊びに過ぎないので、あまり本気に捉えないで頂きたい。
しかし近年のザウスやフォグの凋落振りは、本作で日本の神々や怨霊をぞんざいに扱ったせいで
祟りを受けているからじゃないかと思えてならない。今一度穢れを清め、本来の姿に立ち返って
頂くことを切に願う。