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ITTENTOPAさんのCrescendo ~永遠だと思っていたあの頃~ Full Voice Versionの長文感想

ユーザー
ITTENTOPA
ゲーム
Crescendo ~永遠だと思っていたあの頃~ Full Voice Version
ブランド
D.O.(ディーオー)
得点
89
参照数
161

一言コメント

傷ついた事も辛かった事も、いつかは笑って話せるようになる。そんな青春

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

全ヒロインの魅力が凄い。萌えゲーでもないのにここまでのものは初めてかも
最初にバッドエンドを一通りクリアしたので、BGM「To favorite you」を聴くだけで涙が溢れるようになって、
グッドルートでHシーンになる度に、泣けてきて若干困りました(笑)

場面によって、キャラが別人に見えたり(特に香織が車を運転している時と、美夢が片手でピアノを弾いている時)
半目になっている時以外の歌穂と美夢の立ち絵が、眼が大き過ぎると感じたりと
CG、立ち絵ともに癖が強いのですが、差分の豊富さや使い方の巧さはとても良かったです
原画が女性だという事もあってか、Hシーン時における下着のデザインも中々良かった

卒業までの五日間を描いた作品なので、回想シーンが多かったり(一箇所回想内で回想するという場面まであった)
主人公が文芸部員かつ映画好きな為か、映画や小説からの引用が多かったりするのが、引っ掛かる人もいるかも

香織ルートはヒロイン自体は一番魅力的だったのですが、本編のストーリーはあまり気乗りしませんでした
他ルートのヒロインが協力してくれる事や、大人の柵に囚われたヒロインを子どもならではの突っ走り方で
救い出すという展開自体は結構好みだったんですが、お見合い相手の事を思うとどうしても……
逆にアナザーストーリーは中々好みでした。特に終わり方が、この二人らしくて好き
本編では何故か初日しか見る事の出来なかった眼鏡姿を、結構見る事が出来ましたし
仮面を外した状態とのギャップも中々良かった。北都南さんの技量が光ってました

優佳ルートは本編とアナザーストーリーのギャップに面食らいました
本編の天使を絡めたテキストや終わり方が好きだっただけに、心苦しくなりながら進めていました
白衣の天使、看護婦になるという決意が無ければ、本編でもこうなるんじゃないかと思ってしまって……
それでも二人の過去や思い出が無駄にならなかった、寂しくもどこか清々しい終わり方で悪くはありませんでした
いつかは笑いながら話せるようになるというのが、最もしっくりくる終わり方だったかもしれません
バッドエンドも中々好みでした。グッドエンドでは果たされなかった遅刻のやり取りをする場面が特に

歌穂、杏子ルートは4人の関係は然ることながら、最後の追い出しコンパの場面が素晴らしい
染み入るように寂寥感を感じさせるテキスト、展開に涙がじわじわ
卒業という設定に最も見合ったストーリーだと思います
杉村はあまりにも出来た親友で、本当に良かった
デートに制服で来た所は、立ち絵省略したろって若干思ったけど

あやめルートは一番好きな場面は、本編の最後の息子と母の会話シーンでした
春子役の声の人の演技がまた良いんですよ
アナザールートは、一番力を入れて作られていたような印象
唯一本編後を描いている上に、選択肢も設けられてるし
あれだけ愛深さを見せていた彼女が、涼のいない生活に耐えられるかというと、やっぱり無理だった訳で
本編、アナザー共に魅力的で、声を担当した一色ヒカルさんの演技に圧倒されました
嗚咽時もそうですが、日常時の耳障りの良さが素晴らしい
立ち絵は本編のがかなり好きだったので、変わっていてしまっていて若干残念だったけど

美夢ルートは本編の終わり方でボロ泣きしました
最後の最後で一気に急加速した上で、あのEDは反則クラス
一部疑問が残る場面もありましたが(アンティークショップの店長や、回想の病院のホールで待ってたり、入り口で
待ってたりする涼の行動の食い違い)
幻想的ながら、もの悲しい雰囲気がとても好みでした
アナザールートも決して悪くありませんが、最後の場面で歌穂も登場させてくれればもっと良かった
彼女達の女友達としてのやりとりも良かったので
涼だけじゃなく、歌穂とも関係を続けている描写があればなぁと素直に思いました
ネタバレ配慮の為か、美夢だけCG鑑賞の名前がその他になっているのが、若干可哀想かも


他にも、どのルートでも最後に必ず読むことになる卒業式、記念撮影の描写や、
絶望した人間が何を求めるか、音大を目指す友人等、他ルートの内容がさりげなく絡む事
音楽回想の背景のスタインウェイなど、好きな要素はたくさんあります
いつまでもPC内に留めておいて、思い出を辿るように幾度もプレイし直したくなるような
素敵な作品でした