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Hisui-Konohanaさんの源平繚乱絵巻 -GIKEI-の長文感想

ユーザー
Hisui-Konohana
ゲーム
源平繚乱絵巻 -GIKEI-
ブランド
インレ
得点
87
参照数
659

一言コメント

大儀であった…

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな
吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞ恋しき


約1年ぶりにエロゲをプレイしました。
まぁ得点は多少、甘めでしょうかね(笑)


今作は忠臣蔵と同様に主人公たちのタイムスリップものでした。
主人公だけはその先でループもしますが、これはWヒロインの√を造るためにも必要でした。

<第一章 源平合戦偏:紫都香√>
主人公たちのタイムスリップから源平合戦、平泉で義経の終焉までが描かれていました。
吾妻鏡やその他の文献を参考にして概ね史実に基づいての内容です。
面白かったのは、富士川の戦いに於ける水鳥の羽音に驚いた平家側が退却したエピソードは有名ですが
水浴びをしていた紫都香が主人公に覗かれ悲鳴を上げたら鳥たちが驚いて飛び立った表現には笑って
しまいました。

残念なのは、屋島の合戦に於ける那須 与一による扇の的を射抜くシーンです。
私が源平合戦の中で最も好きな場面でしたのでもう少し尺を取って欲しかったです。


<第二章 義経北行伝説: 楼子√>
「義経には墓がない」と言うことから義経は平泉で自害しておらず生存している説を具現化した内容でした。
平泉で打ち取られた主人公はループし 源平合戦の壇ノ浦の戦い直後に戻ります。
ここからループしたことに気づいた主人公は歴史に贖うべく行動をとります。
この章で光るのは楼子の知識でしょう!これは歴史好きには面白いないようです。
そして楼子の言葉ですが…
「歴史を学ぶということは暗記する事でなく考えること」と言っていましたが正にその通りだと思います。

残念なのは、壇ノ浦からスタートしているので圧倒的にボリュームが少ない点でしょう。


<第三章 偽経偏:3P√>
某の考えですが、義経生存説を見た場合に大きな疑問が生まれます。
それは義経が生存していると分かっているなら何故、頼朝が追撃しなかったのか?と言う事です。
その答えとして以下の2説が考えられます。
 ①義経は鎌倉の手が届かない大陸へ渡った(小谷部全一郎著成吉思汗ハ源義経也などで多く語られている)
 ②頼朝に信頼される状況となった。

今章は作者が上記の②に相当する自説を展開した内容だと思います。
まぁ将門や八岐大蛇を登場させるのはどうかと思いますが、とても興味深い内容でした。
私的に2件の殺人を犯した水分さんが非常に気に入ってしまいました。(笑)



総評
総じて忠臣蔵、新選組に並ぶべく面白かったと言えます。
但し、ボリュームが少ないと感じる点は惜しいと思います。

今後に望むこと
①水分さんや弁慶を始めとする家臣たちとの伽も見てみたいと思います。
②今作に登場する武具の詳細を紹介して欲しいです。出来たら大虎と 楼子に紹介して欲しい…
この辺りをFDとかで出して欲しいです。


余談
某は義経生存説を支持せず史実通り平泉で自害したと考えております。
墓が無い理由は、鎌倉があたかも義経が生存し攻め込まれるという危機感を利用して家臣たちに警戒心と鍛錬のために利用したのだと思います。