傑作。満点をつけたいところだが、惜しむらくは、この作品、未完成である。
まず断っておかねばならないのは、この作品は未完成だということだ。
それは、明確に解答の示されない謎が何点か残ること、
周回を重ねる度に進む category が 1,2,5 しかないこと( 3,4 がない)、
未使用 CG があったこと( OP ムービー中にも本編にない CG が見られる)、
などから、企画段階で意図された未完でないことは明らか、と言ってしまっていいだろう。
一応、謎に関しては答えを想像出来なくもないだけの情報は開示されており、
未完成のまま完結する作品内での理由付けも最後にきちんと述べられはするのだが、
かと言ってこの作品が完成しているとは言い難い。
故に、未完成作品は評価に値しない、とそう言う人もいるだろう。
だが、おそらくはあまりの大作故に完成させ切れなかったのだと確信するこの作品、自分には、未完成というだけで酷評することは、とてもではないが出来ない。
未完成作品は論外、という方は勿論避けるべきだが、
少しでも寛容な方には、未完成という点を踏まえても、この得点で勧める傑作である。
町外れの廃工場を「聖域」と集う七人の少年少女達。
彼らは、人付き合いも不器用で、それぞれ問題を抱えていて。
そして。
やがて待ち受ける「敵」との戦い。「戦争」。
「戦争」を乗り越えた先に見るものは、彼女に導かれた、最果ての今――。
前半は少年少女達の悩みを中心に描いていくジュブナイル ADV 、
後半は衒学的な内容の続く SF ADV となっている。
フルボイス版なので、フルボイスの他、 3 名のエッチシーン追加。
声優の熱演が光るボイスは良い感じ。数は少ないがシステムボイスもついている。
追加エッチシーンはというと、本編とは当然ほとんど無関係なのだが、多少設定に矛盾があるよーな。
要は、入手できなければ、通常版でも問題はない。
BGM は、サティのジムノペディ第 1 番の引用を始めとして、
非常に雰囲気に浸らせてくれる良曲が多い。
OP 曲、 ED 曲も共に作品の雰囲気によく合っており、高く評価できる。
UI は慣れると不満なく使える内容だが、
【 Blog 】システムは不便過ぎたか。
脚注のようなシステムで、サブシナリオや専門用語の解説といったものが見られるのだが、
リンクのはられた単語が表示されている間しか見られない為、読み飛ばすことが多発。
また、解説が短くないことも多い為、話の盛り上がりを阻害されることもあった。
どこかにまとめられて、後でも見ることが出来れば、便利だったように思う……。
少年少女達の悩みからヒトというものの苦悩までを描いた展開、
「戦争」編で明かされていく重厚な設定、
そして、最果てで辿り着くこの作品の真実、カタルシス。
万人向けの傑作かと言われると、確かに違うきらいはある。
謎が謎のまま進んでいく前半は退屈かも知れない。
衒学的な設定に後半は辟易とするかも知れない。
だが、これらの要素に少しでも心動かされるものがあったなら、
是非やって欲しい、自信を持ってお勧め出来る、傑作である。