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Hareさんの創世奇譚アエリアルの長文感想

ユーザー
Hare
ゲーム
創世奇譚アエリアル
ブランド
あかべぇそふとすりぃ
得点
72
参照数
3759

一言コメント

個人的に歴代トップ3に入る惜しい作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

プレイ後に第一に思ったのが一言感想に書いてある内容でした。
あまりに惜しすぎて他の作品そっちのけでレビューさせて頂きます。

2012年は様々な大作もあり、製作者の方には申し訳ないのですがそこまで過度な期待をしていませんでした。しかし、プレイすると面白いのなんの・・・睡眠時間を削ってまで没頭する作品は本当に久しぶりでした。
とにかく先がきになって仕方が無い、早く続きを読みたいという作品だったのは喜ばしい誤算です。特に序盤においては自分でもこんなんでいいのかと思うほど作品の世界に引き込まれていき、のめりこんで行きました。
キャラクターも非常にいい味を出しており、世界観構想も独特でやっていて不快感は全く無かったのものめりこんだ大きな理由のひとつでしょう。

途中までは・・・。

この作品の序盤に関しては個人的には90点台を出したいほどの素晴らしい作品だと思っています。しかし、中盤から雲行きがかなり怪しくなっていきます。
問題点は大きく分けて6点。
1:周りのキャラや主人公の独白による「大人になる」部分がしつこい
2:ライターが戦闘機大好きなのかアエリアルより戦闘機の描写が多い。
3:報われない主人公
4:戦闘がワンパターン
5:ルートが一本道
6:凪ルートが存在しなかった

1:周りのキャラや主人公の独白による「大人になる」部分がしつこい
正直辟易するほど連呼されます。
ライターの方はこの作品にこめたメッセージとして
「人間は子供のままではなく大人になるために必死になるべきだ」
というメッセージをプレイヤーに示したかったのだと思いますが、さすがにここまで連呼されなくても十分伝わります。
それほどまで「説教」がしつこく、途中から何のゲームだこれ・・・?と錯覚するほどです。
おそらくこの部分についてはプレイヤーの「ナインティ・ナイン」が感じた感想では無いでしょうか。

2:ライターが戦闘機大好きなのかアエリアルより戦闘機の描写が多い。
作中にはアクアポリス防衛のためF-35およびF-40がメインの機体として登場します。
序盤は主人公がアエリアルを手にしていないため過度な戦闘機の説明により、如何に戦闘機がアエリアル防衛のために必要な物かというのを理解させるためにいい役割をしていたのではないかと感じます。
ところが、中盤~後半もどちらかといえばアエリアルよりも戦闘機のほうに主軸が偏っていました。
確かにアエリアルは未来が残した人類の希望なので、現代兵器と比べるとオーバスペックを通り越す性能の機体なためアエリアル無双になってしまうのを危惧したのかもしれません。
しかし、さすがにちょっと戦闘機の描写がくどすぎました。

3:報われない主人公
兎にも角にも報われません。唯一報われるのは未来ルートだけではないでしょうか?
特に涼子ルートにおいては世界を守るために頑張る主人公でしたが、後半は愛する人に対して毛嫌いされ兄貴に好きな人を持っていかれ「これでいいんだ・・・」そして結局ラストも結ばれません。
いや、良くないでしょうと突っ込まざるを得ません。
第1問題点で述べたように主人公に大人になる事を強制させておき、主人公は「身を引くのが大人だ」的な事を述べていますが、大人ならなおさら自分の物にするために抗い戦うのではないでしょうか。
そのあまりのひどさにルートを間違えたのかと錯覚しました。
こんな事なら深海でずっと涼子さんといたほうが良かったんじゃないでしょうか。

4:戦闘がワンパターン
アエリアルが出てくるまでは戦闘シーンも非常に楽しめていましたが、アエリアルが出てきてからは戦闘がパターン化されてしまいました。
敵が現れた!→戦闘機が敵を倒す→増援がきてやばい!→アエリアルが全部倒す
もしくは
アエリアルが敵に突っ込む→終了
2、3パターンぐらいしか無かったんじゃないでしょうか・・・?
やはり戦力が限られている、アエリアルが強いという時点で戦闘シーンの描写がある程度制限されてしまうのは仕方がありません。
が、アエリアルが戦闘機とは比べ物にならない速度で飛行できているというスピード感が全くありませんし、基本空中に止まってエーテル技で倒して終わりです。
最後の最後でシルフィードにより格闘戦が繰り広げられますが、地球でやった方が多分盛り上がったんじゃないかなと。
移民船が浮上しようとするも精霊力が思ったより増えない>あ、なんかついてる>アエリアルで戦闘するもまずい状況>涼子たちが慣れないながらもシルフィードで援護
人間は抗い続けるとかいいつつ傍観してるよりは、船内で生産できるのですからシルフィードはもうちょっと使ってあげるべきだったかなと思います。

5:ルートが一本道
攻略可能ヒロインは3キャラいますが結局最後は収束します。
このような作品は因果律のブレによりヒロインによりラストが変わるのがお約束だと思っていたため非常に驚かされました。
ぶっちゃけほぼ一本道です。そのためこの作品は自分の好きなキャラを一番最初にやって後は流すという形になってしまうのが非常に惜しいです。
作品中後半で「今回は我々の負け」とか、「このブレが出るのは今回運が無い」と平行世界やループを感じさせるセリフを出しているなら全ヒロインで結末を変えて世界のループ感を出すべきだった。
3人の攻略順を固定して貰って、死屍累々の脱出に始まり最後のヒロインのルートでは今までの全ての経験が重なり展開が大きく変わる・・・というのが非常に面白かったのではないでしょうか。

6:凪ルートが存在しなかった
私自身おっぱいボーンなキャラや年上のキャラクターが好きなため小さい娘にはあまり興味がわかないのですが凪は別です。
3人クリアしたらグランドルートで凪は燃えるな・・・とか思ってたらグランドすら無かった時の衝撃はプレイした方にしか解らない衝撃なのではないでしょうか。
一応エクストラがありますがあっさりしすぎて求めていた物とは全く違いました。
あれ程魅力がありながらルートが無いのはもうなんといっていいか・・・。ファンディスクが出るならば是非入れてあげてください・・・。


正直語り足りないところが多すぎますが以上の6点を各5点減算し、最後にライターの今後に期待をこめて2点追加で72点とさせて頂きました。
他人に勧めるかと言われるとなんとも言えません。合わない人は全く合わなくて早々にGiveUpするでしょうし、合う人は私のように楽しめる作品ではあると思います。
いろいろと文句を言っていますが最終的な感想としては「面白かった」ですし、主題歌は個人的にかなり好きです。(しかし、主題歌でも大人になれと説教されます)
演出やシステム面も上々でしょう。有る意味博打のような作品かもしれません。
細かい部分をあげると英語と日本語の混在のルールがよく解らない(パイロットはElemental Driverなのに精霊力はElemental Powerじゃなく精霊力のまま等)とかいろいろと突っ込みたい部分はありますが・・・。

最後にこのシナリオライターの方は小説に媒体を移したほうがいい作品をかけるのかもしれません。
というか、この人の小説が出たら間違いなく買います。
なんだかんだ言いましたが、今回の作品でこの人のシナリオの方向性は理解したため、次回作が出た時はある程度覚悟してやれる分もっと楽しめるかもしれません。