追加された新佐倉ルートと美空ルートについてのみの長文感想。ベクトルは異なるが個人的にどちらも好きな味付けだった。
〇新佐倉ルート
まず七海との対比構造として非常に秀逸。原作の要素をうまく活かして構成されており、最初からこれを作るつもりだったのではないかと感じさせる程の出来栄えだった。
七海は正当派幼馴染として、お隣さんという距離感と家族ぐるみの付き合いを幼少期から付与されている、ある意味「運命的」な立ち位置。
対して佐倉は、徒歩40分という距離、遠方の駄菓子屋の娘という薄い立ち位置である。
これを幼馴染として定義するためには相当の努力がいる。例えば通学の時間をあわせてみたり、ラムネを持ち寄り印象付けてみたり。
そのようにして本来は存在しえなかった関係性を積み上げていく過程は、最初から土台のある七海との対比になっているのである。
これは原作で引っ越す際に健次と七海に対して、安穏と過ごす日常がいかに脆くて崩れやすいものなのかと忠告を残していったシーンを思い出すところであり、その忠告に含まれた悔しさと願望を具現化したものがこのルートなのかなと窺えるものだった。
最後に、エピローグで引っ越した後のお隣さんとのあのワンシーンは見事。新たな出会いの象徴であったCGを活かして、健次と関係性を象徴する展開によく繋げていったものだと驚いた。
〇美空ルート
彼女はたまたま通りすがって足止めを喰らっただけの旅行者。ラムネのヒロインズに共通する幼少期のイベントは無いので、立ち位置が明確に異なる。
積み重ねもないのでこの町に対する肯定的な意識は当然ない。むしろ否定的なポジション、まぁステレオタイプな田舎への先入観程度だが。
そんな彼女が不本意ながらこの町で過ごす内に、町のいいところを見つけて、健次を好きになっていくという王道な流れ。
正直なところ、このルートに特筆する点はない。というか、他のルートと違いテーマ性がほとんどないのだ。美空の過去になにかしらの闇のようなものは当然なく、解決すべき過去もない。
ただ二人と周囲の人々の中で育まれていく普通の恋愛物語である。
ただ、これはこれで悪くはない、というか美空の外見とキャラがかなり好みなせいもあり好きなルートである。
原作ヒロインたちが過去に何かを抱えていたがゆえに、逆にこの普通さが新鮮さすら感じさせてくれるのだ。
美空が素直に可愛いなぁと思えた、考察なんて無粋な、いいルートだった。
気になる点を挙げるとすれば、初期の言動がぶっ飛んでいることだろうか。
美空の田舎を下に見たり農作業を非効率と馬鹿にする様子はその後の考え方の変化に繋がるので良いのだが、健次がナチュラルにクズなのだ。
バイクぶっ壊して責任を感じないし、やることなすこと無責任。こんな主人公に美空が惚れたことが一番の疑問である。
そういえばキーホルダー、チュパカブラというか竹中半兵衛のあれ。一応「ラムネ色」らしいので、あれが数少ないラムネ要素と言えるのかも…しれない…いや、どう考えても無理があるな。
そもそもラムネ色に見えないよアレ……。