面白い。少しだけシリアスを加えて、なんだか懐かしい昔のアサプロが帰ってきた。 ルート的に紫→天使は最後にしたほうがいいかも。
いや、面白かった!
こういうのでいいんだよ、こういうエロゲがやりたかったんだ。そんな作品でした。
全般通して掛け合いが楽しく、特に下ネタ会話の下品になりすぎない塩梅が絶妙。
ストーリーは後述するとして、つまらないと感じるところはほとんど無かったですね。日常会話が楽しいって本当に大事だなと感じました。
絵については原画が複数なので雰囲気は違います、そこまで違和感はないですが、できれば少人数のほうが好ましいかな。顔とか体つきとかのサイズ感がちょっと違うんですよね、紫が太って見える。
個人的にはうなさか氏の画風が好きです。
さてストーリー、天使ちゃん以外のルートはヒロインらに大した過去は無いと思います。ヒメがちょっと拗らせているぐらい、少なくとも紫とワンコは主人公がいなくとも普通に生きていける。
加えて展開が実にエロゲ、ラノベテンプレなのが特徴的。
わかりやすいところで紫を。
人気モデルのクラスメイトが偶然好意を持ってくれて、何故か自分のことをやたらと持ち上げてくれる。しかも短期間に、大した理由もなしに。
リアリティの面から言えばとても納得はできないですし、そもそもモデル活動についてほとんど描写がないのです。モデルとしての苦悩も挫折も栄光も感じられず、モデルという属性だけが彼女の属性として残っている状態。
プライベートでは暴飲暴食とかだらしないとかのマイナス要素も彼女の魅力を大して損なわせないのですね。
そんないいところを切り取った彼女に好かれる、そして周りが驚き羨む。他の男からの恋愛的な嫉妬もないので三角関係もない。
こんなことリアルであるでしょうか、普通ないと思いますよ。あったら私は嫉妬してしまう。
でも、これでいいと思うんですよ。少なくとも私はこういうのが好きです。
周りに下駄を履かせてもらって流れにのって流されて、言われるがまま口を開いたらエサが入ってきたようなあまっちょろい状態、なにかあったら簡単に崩れてしまいそうな、成長もほとんどしていない主人公。
コンセプトの成り上がりはともかく、しっかりとした主人公になるという成長物語として見た場合、正直微妙に感じるかもしれないです。
でも、「こんな青春があったらいいな、を存分に味わえる」というキャッチコピーには合致していると思うのです。
自分に青春があったかどうかはさておき、妄想するのなら楽しいほうがいい。友人と軽口を言い合って、女の子に好かれてイチャイチャしてエロいことをしたい。
だから私はこういうのが好きです。
私が最近やったアサプロはコイバナ、フタマタ、ロワイアル。これらの作品は本作のように単純ではなく、人間関係の機微とか登場人物の過去に起因する闇みたいなものがあって、いわゆるシリアス味があったのです。
多分、ライターの八日氏の持ち味なのでしょう。
そこを見ると確かに本作は物足りないのかもしれない。
しかし、私はこのテイストがとても懐かしくて好きなのです。
私が昔々にやったアサプロはアッチ向いて恋。他にもやったはずですがもう内容は覚えていません、しかしワチャワチャして、勢いで押しきって、なんだかとにかく楽しかった。
そんな昔のアサプロテイストを織り込んだストーリーを、八日なのかという人間の機微を得意とするライターに書かせたものが本作なのだと私は思います。
天使ちゃんルートはライター的なスパイスを感じられたので完全に昔のアサプロというわけでもないですしね。
そういう理由で、この作品は昔から今まで続く、アサプロらしい作品だと私は評価します。
以下、各ヒロインごとに感想を。
◯風雅 姫乃
不格好な感情の発露を形にしたようなキャラという印象。
自分の学校でうまくいっていない、鬱屈した思いがあってもそれを押し留め続けはせず、ネトゲだったりオフ会だったりと空回りを恐れず挑戦する行動力と姿勢が魅力的でした。
一般的に年上属性に期待される包容力はなく、それでも年上ぶろうとするがうまくいかないところがとても可愛らしい。
特に好きなのは学校の前で出待ちするところ、あのシチュエーションはコテコテの定番ですがやはりいい、他校生ならではの武器ですね。
天使ちゃんとの相性も良く、ネトゲの中での二人の掛け合いはとても微笑ましく眺められました。
エロシーン、授乳テコキはさほど好みではないので刺さりませんでしたが、巨乳年上属性ならではのシチュエーションはいいものに違いなく。
個人的にはファーストフェラからのイラマチオが好み。できればもう少し尺があると嬉しかったですね。
◯犬屋 恋丸
ワンコ系後輩は定番、ワンワンお手と従う様子はだいぶネジが外れているレベル。こんなのリアルにいたら痛い子ですがエロゲならオッケー。
彼女は基本的に常時前向き。
個人的には同じ犬なら捨てられることを恐れるような、捨て犬のようなダウナーさを見たかったところでしたが……多分求められてはいないのでしょうね。
エピローグでの落ち着きを見せた大人の彼女には賛否ありそうです。
ここをひねくれた解釈で考えてみると、青春という時間でワンコ的なロールプレイをしていたのかも。こんな自分でありたい、みたいな理想像の追求、大人になって振り返ってみれば黒歴史になるようなものですね。
ただまぁ、プレイヤーの立場から見た彼女の属性であるワンコ系要素をそこに落ち着けるのはちょっと寂しい気もしますけど。やっぱり彼女らしさはそのまま保持するか、それを残した犬らしい成長をして欲しかったです。
さて、彼女のルートにはさっちゃんの存在が欠かせません。彼女がいてこその恋丸ルート、ぶっちゃけ恋丸よりもさっちゃんが好き。だからルートもシーンもないのは業腹でしたね。
恋丸とのセックスをドア越しに覗き見る描写はシコリティが高かったのですが、どうせなら直に見るとか、さっちゃんにもフェラだけさせるとか、そういうのがあってくれたらと思わずにはいられないのです。
恋丸自身のエロシーンについては首輪を使ったところが良かったかなと。個人的には恋丸にシコリティを感じないのですが、ああいうシチュエーション特化ならば別。できればそこにさっちゃんがいれば……。
◯藍沢 紫
先述したとおり、実にリアリティの無いテンプレ的なヒロイン。
モデルで人気のクラスメイトに好かれるって単純にいいですよね、好き。
お茶渡し間接キスは何回あったかわからないぐらい大量、でもそこまでくどさを感じないのが不思議。何度見てもブヒブヒ感じさせてくれるのです。
彼女は基本的に自信満々で飄々としていますが、告白後に不安な内心を吐露するところとか、天使ちゃんに敗れた際の呟きなどに滲み出るちょっとネガティブな感情を見せてくれるのが素晴らしかったです。
恋愛感情を覚える描写は正直あまりなかったですけど、彼女はこれでいいんじゃないかなと。
書こうと思えばモデルの苦悩とかいろいろ描けるかもしれないですよ、でも正直無くてもいい、というか無いほうがいいです。彼女の暗部を描くのは、少しこぼす弱音だけで十分。
少なくとも私は、ふわふわとして、気づいたら隣にいてくれるような彼女が好きです。
奥手で不格好な主人公を引きずり出して、巻き込んで、駅のホームで告白。
主人公の成長というと不足気味ですけど、こうやって引っ張ってくれる、本当に「良い女」だなと思うのです。
後ろを楚々として歩くのではなく、前を向いて手を引いてくれる。気づいたら主人公が前にいるときもあるかもしれない、そうしたら逆に手を引いて、また引かれて。
私が感じる紫はこんな感じでした。
エロシーンで気に入っているのはそんな彼女の優位性が際立つモーニング騎乗位。
全裸エロには大してシコリティを感じなかった私にもぐっさりと刺さりましたね。できればモーニングフェラもあるとなお良かったかな。
◯柏木 すみれ
まさかルートがあるとは思いませんでした、満足。でもそれならすーちゃんルートも作れただろ畜生。
彼女は実にちょろいですね。紫との関係性に悩む主人公にちょっと優しくされたら逆に攻められて。
名前呼びされて押しこまれてそのままベッドイン。ザ・チョロイン、こういうの大好きです、実に可愛いですね。
最初だけ拒否していた中出しをすぐ許容するところも堪らなく可愛いですね。紫のことを考えるとどうなんだろうとも思いますが、こういうサブのルートで考えるのも野暮かもです。
◯天使ちゃん
さすがにリアル天使はないだろうと思っていましたが、まさか青春コンプレックスを抱えた無職とは。
彼女は反抗期だったりモラトリアムを通した精神的成長を経られなかったわけで、その後悔と反動がギャルめいた服装や言動などにも現れていると思うのです。
公式HPの羽と輪っかを付け膝座りで飴を舐めた姿勢の天使ちゃんは、それを非常にうまく表現されていました。
彼女が自ら堕天使というのも納得、大学を出て就職も何もままならない様子は自分の力で飛ぶことが出来ず地に落ちた鳥のよう。
そんな弱い自分を押し隠して、きらり輝く天使として主人公を支える、もとい自分に投影して、リプレイ、検証のようなものでしょうか。
作中で言っているようにどうせ主人公もダメなら自分も諦めが付く。でももしも主人公が青春を謳歌できたら…?
天使ルート以外では本心はさておきひとまず祝福できていました。
でも彼女のルートでは思わず「そんなのヤダ」とこぼすのですね、これが堪らない。置いていかれる恐怖みたいなものがひしひしと伝わってきて切なくなります。
このシーンから始まる天使ちゃんルートは他とは違い、辛かった過去とか苦悩描写に結構な尺を割いているのです。
近年のアサプロらしい、いわゆる八日なのかテイストの文章と言っていいかも知れません、そして天使ルートだけにこれを入れたのはいい按配だと思います、全ルートだと正直くどくて重い。
他がふわふわしているからこそ天使ルートの重さもちょうど良いと思うのです、加えて紫の失恋と繋げて展開することによりシームレスな移行で違和感が少ない。
ただ、あえていうならルートロックがあっても良いんじゃないかな、と思ったり。
エロシーンで気に入っているのは玄関先セックスですね。寧ちゃんが加わることでスリルと興奮が増す流れは最高でした。バレてるのもまたヨシ。
◯微妙に感じたところ
・プレイ時間、ボリューム
私のプレイ時間で13時間ぐらい。
一般的なフルプラと比較した場合、シナリオボリュームはちょっと少なめかなと思います。とはいえ詳細な恋愛描写や過去話を入れ込んだとしても面白くなるとは思えないんですよね、正直なところ。
じゃあ本作の日常描写を倍のボリュームにしたとして、今度は冗長だとか言われかねないと思うんです、私は好きですけど。
どうやっても帯に短し襷に長しになる気がするので、個人的にはこれで満足です。
・男友達の扱い
ヤンキークラスメイトの雄華、ヒメルートでは出番が多くていいポジションでしたが、紫・天使ちゃんルートでは存在感ほとんどないです。
全く接点のないコミュニティなら仕方ないですが一応紫ともクラスメイトなので、そこまで排除しなくてもなぁ、と思いました。
章吾らがいろいろな場面で活躍していたのと同じぐらいとは言いませんけどもっと出番が欲しかったなと。
・サブエロシーン
なんでさっちゃんのエロがないのか、大変に不満です。すみれにあるならこちらも入れてほしい、マジで。あんなに淫乱でむっつりなのにノーエロとかホントにもったいない。
あとできれば3P。
さっちゃんと恋丸、紫とすみれ。
二人でバニーコスするならそのままいけよ、頼むから。