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HARIBOさんの猫忍えくすはーとSPIN!の長文感想

ユーザー
HARIBO
ゲーム
猫忍えくすはーとSPIN!
ブランド
Whirlpool
得点
77
参照数
175

一言コメント

確かに面白いのだが…これは「猫忍」なのか?猫忍の定義などあってないようなものだが、さらによくわからなくなってくる。なんだか無性にスズメによだれを垂らす猫忍に会いたい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

過去作と比べて掛け合いやギャグなどとても洗練されている。勢いで押し切る意味不明さは消えて、とても読みやすい。ストーリーもしっかりしていて筋道立っていて面白い。

確かに面白いのだが…これは「猫忍」なのか?
「猫忍」がなんであるかなどと語るのはそもそも無粋の極みということは承知の上なのだが、私の1~3までの猫忍像からするとだいぶ乖離している。

朝のスズメの鳴き声を聞いて「美味しそうですな、ニンッ」と語ったり、あつかましく要求しては尻を噛まれたりとしょうもないドタバタコメディを想像していた立場としては面食らわざるを得なかったのだ。
ゆらとたまとマヤの腹パンしたくなるぐらいのクソウザい掛け合いが懐かしく思える。拙者なんだかんだあやつら嫌いじゃないので?


ナナコ、チカの存在は「猫忍」らしさもあり、掛け合いの良さは確かにあった。気安さというか菊丸のツッコミが地味にいいのだ、普通にナナコのケツとか叩くし。ナナコも「亀ならコケでも食べる?」みたいなこと言うし。ハルキと猫忍たちには無かった主従とは思えない一幕だが、これはこれでテンポも良く読んでいて楽しかった。

ただ、チカは前半敵サイドにいるので掛け合いというものに参加する機会が乏しい。中盤にマヤらが参加した際の掛け合いは素晴らしかったので、そこで終わってしまったのはどうにも惜しかった。


菊丸はまったく主人公らしい主人公であり、物語は彼を軸にして展開されていく。
血筋がある、才能がある、努力もできる。
側に控える藤花は主人公を甘やかさない。優しく、厳しく慈しみ育てる。そして恐らく作中最強に近い。
まぁ彼女は生まれ変わるなどの設定を鑑みれば他の猫忍らの様に能天気でもいられないのだろうが。


ストーリーは菊丸の成長物語が主軸、ただ過去作と明確に違う点に「敵」がある。

過去作では他の里や雑賀についてふわっと語られることはあってもこれまで明確な敵は存在しなかった。戦う相手も最終的に和解して仲間になるし、戦う理由も意見の食い違い程度。

本作では果心居士や王牙らのような明確な敵が設定されたことによりストーリーに筋道が引かれ、読みやすく、面白さがわかりやすくなった。勧善懲悪というほど単純ではないかもしれないが、王道はやはり強い。
王道を用いたからといってうまくいくとは限らないが、過去作設定をうまく組み込んで再構築している様は、失礼ながら正直同じライターとは思えない。成長というとなんだか偉ぶっていて嫌だが、人口に膾炙する文章を書けることは確かな強みだろう。
その分粗削りな、意味不明な猫忍というものは薄まってしまったように思えるのが個人的に残念なのだが。


ただ、ここで私が語っていることは最初から明示されていることなのだ。公式サイトのSTORYで紹介されているとおり

「なんだかちょっぴりシリアスめに(?)、今、再び幕を開く猫忍新章。」

加えて、今まで実装されていたあらすじ機能が排除されていることからも過去作との距離感が見て取れる。どっちがいい、というよりはスピンオフ作品としてこれはこれでいい、と受け止めるべきなのだろう。
そして行く末には過去の猫忍たちとのクロスオーバー作品が見られたら…これは見えたでござるな?天下。ニンッ!


※猫江チカが3Pから省かれているのは許せない。なんで4Pないんや…。