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HARIBOさんのハミダシクリエイティブ凸の長文感想

ユーザー
HARIBO
ゲーム
ハミダシクリエイティブ凸
ブランド
まどそふと
得点
85
参照数
491

一言コメント

ハミクリ本編の続編要素も多いがどちらかと言えば補完的な作品であり、アンサーソング。 ハミクリ本編をプレイして気に入った方はぜひやってほしい。この凸でハミクリは完成を迎える。 ハミクリ本編で詩桜ルートなどに物足りなさを感じていた方もできればプレイしてほしい、大分補完されている。 まぁなにより、華乃が面倒くさくてエロ可愛くて甘々なんですよ。最高。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ハミクリ無印の補完的要素の強い作品です。
つまりハミダシクリエイティブという作品はこの凸をもって完成するのだと思います。
ハミクリ無印だけでも十分に楽しい作品ではありましたがこの凸を合わせることで倍率ドン!さらに倍、ドン!です。


正直ハミクリ無印をプレイする中で、ここが物足りないなとか思うところは多かったのです。とはいえ掛け合いやイチャラブなどがメインでしょうからあまり言及するのもナンセンスかなと飲み込んではいました。
そこを解説と言いましょうか、深堀りして描写していたのはとても良い点でした。

続編としての要素はありますがそれだけではない、かといってアフターストーリーやアナザーストーリー一辺倒でもない。別の視点から見たハミダシクリエイティブ、無印に対するアンサーソングのような位置づけなのかなと感じました。

テキストは前回と同じく軽妙で掛け合いの面白さは抜群です、本作随一の見せ場。
主人公:智宏は無印よりもおとなしくなったというか、尖ったオタク臭さが無くなった印象です、その分見せ場、彼の活躍の機会も多くなりました。
オタク要素と言えば戦デレの描写が一部ルートを覗いてほとんどなくなってしまったのはちょっと残念なところではありました。多くのヒロインたちを結び付けた一因であり一時の智宏のライフワークにまで位置していたと思いますので。

そしてこのゲームの本懐、キャラの魅力は抜群。
各キャラ個性的な魅力を引き出すべくシナリオが組まれています、特に無印詩桜ルートの補完具合、天梨ルートの完成度、華乃のエロめんどくさ可愛さは最高。
前の感想でも述べましたが華乃役の秋野花さんの演技はホント最高です。




以下に少し思いついたことを。



〇CGについて

立ち絵のバリエーション・表情はとても良いのですがイベントCGに迫力が乏しいなと思うものがあったのは気にかかるところでした(主観です)。
文化祭での一枚絵などはそのシーンで観客を唸らせるほどのインパクトを与えたはず。にしては普段の絵との差異が感じられず拍子抜けしてしまいました。
また、主人公は髪で目を隠す伝統の没個性スタイルです。それは別にいいのですが花火大会で天梨と華乃に挟まれるCGはちょっと…。
鼻もなく一本線の口しかない智宏は案山子のようで面食らってしまいました。もうちょっとこう、構図とか、視点とかでごまかせなかったのでしょうか…。


〇深堀りされた要素

各ルートでそれぞれのクリエイティブ要素について掘り下げられておりなるほどと思わされる部分は多かったのですが、個人的に天梨ルートでの服飾に関する描写が群を抜いていたように思います。
天梨のモデルという能力と直接イコールになるわけでは無いですが、親和性は高くうまく物語に落とし込めていました。
新川というキャラに見せ場を与え、手芸部部長の協力、生徒会全員での針仕事など団結展開に繋げたことも良かったですね。

設定や用語についての知識は私にはありませんが違和感なく楽しめました、そういえば服飾がテーマというと「月に寄りそう乙女の作法」シリーズを思い出します。似ている気がします、まぁ偶然ですね、偶然。

あとは華乃ルートでのエロゲ製作、特にディレクターに関する言及はやたらと真に迫っていて驚きました。急にテンション違いましたね、あそこ。どこか教訓めいていました。

ただまぁ、クリエイティブな能力を持たない人間が何かを形にしたいと願ったときにとれる数少ない選択肢にはなるのでしょう。
抽象的ですが、高いところからの景色を見るためには羽があれば飛べばいいのです。羽をもたない凡人はその足で登山するしかないのですよね、険しくてもそれしか道が無いのですから。多分そこで落ちちゃう人が多いんでしょう。

このお話、私はさして能のない凡人ゆえに身につまされるものがありました…。


〇各ルートでの設定の共有

伏線というほど大げさなものではないですが、小さな設定が複数のルートで共有されているのを見るのは面白かったです。

伊々奈ちゃんの「いいな、いいな」という自分の名前と重複する口癖がありますが、それについての言及が妃愛ルートであり華乃も意見を述べています。その場では擁護の形でしたが華乃の言動は少ししこりを感じさせていました。
対して華乃ルートで華乃は自分の名前が好きで本当は一人称で用いたいと叫ぶのですね。かわい子ぶっているみたいで見下しているといいつつも憧れていると。

この一人称に関する吐露、冒頭のエロシーンでされるのがまた良いのですよね。行為の最中であるからこそ思わず漏れ出す本音。華乃のような言いたいことが素直に言えないタイプに言わせてこそのセリフです、ポイズン。
エロゲーならではの要素をうまく使っており評価できるところです。

また伊々奈ちゃん含めた後輩の生徒会員二人は妃愛ルートでしか登場はしませんけど、華乃ルートでは仲良くなれそうなクラスメイトとして会話に出てきます。

夜に華乃に会いに出かけようとする智宏に対して自転車での深夜外出は危ないと止めるところも無印の詩桜ルートの展開になぞらえてますよね。

他にも細かいところでいろいろ出てきてあっ!とするところが多いのです。


〇ちょっとした小ネタ

個人的に気に入っているのが地域性を盛り込んだ小ネタなんですよね。

ボランティアで豚汁を作る描写がありましたけど読み方が「ぶたじる」「とんじる」。
そして使う芋の種類も里芋とサツマイモで割れていました、ジャガイモにも言及していました。

今川焼きも呼称が違いました、和泉兄妹は今川焼き、ミリ先生は大判焼き、あすみは二重焼き、華乃は回転焼き。これお互いに突っ込まないのがまたシュールなんですよね。あくまでちょっとした小ネタとして消化してほしいということなのでしょうか。

出身地は…とか考え出すとそれはそれで面白いですがまぁそれは蛇足かもしれません。





最後に各キャラごとの感想を以下に。





〇竜閑 天梨


おまけ程度の追加かなと思っていたのですが、全く違う。他ヒロインルートとは違う味付け、一番智宏が生徒会長として輝いていたといっても良いルート。
みんなで力を合わせて取り組む王道の生徒会、生徒たちとの関係性も一番良好であったと感じました。

天梨は一言でいうとまっすぐで良い子。
親を尊敬している発言がよく出てくるので、愛されて育ったのだろうということが伺えます。
天梨自身を肯定し、自己愛をよく醸成されたのだろうなと勝手に想像しています。


さて、彼女は無印のヒロインズとは明確に違う要素があります。それはハミダシ具合、言い換えれば才能の種類。畑違いの才能を比べるのはナンセンスかとは思いますが、天梨のそれはクリエイティブと呼ぶにはちょっと異なります。

鎌倉詩桜=星しをん
常盤華乃=ののか
和泉妃愛=小泉妃愛
錦あすみ=雪景シキ
のように彼女らは別名義を使っています。
別キャラクターを作ることは一種のロールプレイであり、また本来の人格の保身の面もあります。

天梨はモデル:竜閑天梨として活動していることから分かる通り裸一貫、自分をさらけ出しています。裏表が無いというわけではないでしょうが、その無遠慮さでしか絆せない関係性もあるのではないでしょうか。

そして彼女のモデルという属性は思春期の学生らに理解しやすいもの。声優、Vtuber、萌絵師は正直どちらかと言えばアングラな趣味です。純文学も若者に一般的とは言い難く。
いかに智宏が良い政策を打ち出したとしても、良い活動をしたとしても見えなければ意味が無いのです。その点横に天梨がいれば自然と智宏に目が向く。
社会からすれば他ヒロインズのほうが影響力は大きいのでしょうが、こと校内というくくりの中では天梨の影響力は絶大です。
交渉の窓口としての優秀さはスクールカースト上位と称される彼女の大きなアドバンテージでした。

実際、このルートでは生徒会メンバーだけでなく校内の様々な人々が彼らの助けになってくれます。
華乃がここまで協力するのも天梨のためと言い切っていますし、ギャル連中も天梨によって諭されなければ智宏のことをまともに認知しなかったでしょう。
新川の積極的な協力は言わずもがな智宏のためです。

そして開催された文化祭は生徒の要望を汲んだものでした。
生徒の声をとりまとめ、自分の人脈(新川)、引き寄せられ協力を申し出てくれた人(手芸部)の力を借りて、聖会長をうならせるクオリティで完成させたことは他のルートでは出来なかったこと。

なにより、智宏が嫌々ながらもステージに立ったこと、ファッション雑誌にモデルとして登場したこと。この2点はハミクリ無印+凸含めて彼の精神面での大きな成長でした。


ところで、華乃とふたりでバナナ使ってフェラの練習したみたいですけどなんでそのシーン無いんですかねぇ…!



〇鎌倉 詩桜


無印ではなんでもできる天才肌、ミステリアス(というか描写不足)なイメージ故にちょっととっつきにくく魅力が伝わりきらない印象だった彼女ですが大幅に肉付けされて人間味が出てきました。

普段の勉強やトレーニングなど努力の面が目立ちますし、生徒会のメンバーらに対する気遣いも多く見えます。
華乃に対する嫉妬などもいじらしくて可愛らしいです。まぁ華乃をあそこまで誉めちぎられては嫉妬の一つもするのは普通ですが…天梨ルートでもやたらと華乃を誉めてますし、あれは智宏が悪いかもです。

また無印で一番の不透明さを感じていた小説家としての活動も過去作品や経緯を交えて紹介されており良好。
文章力が他の作家に劣る面もあると自覚していますし、自分の商品価値が作品だけでなく容姿や身分に起因するところが大きいということも認識できています。

総じて言えることは「傲慢さ」「不遜さ」がかなり薄められて万人に受け入れられやすいキャラクタになったということ。
これは文化祭で上演した赤鬼のとおり、身近な人の情によって絆されたということなのでしょう。

その他、描写が深まったものとして事故関係ですね。
無印であまりに唐突に挟まれた事故のくだりもある程度詳しく描写してくれていたのは好印象です。

あと、生徒会長交代の裏事情も各ルートでネタ晴らししていました。必要な描写ではあったと思うのですがこれはやはり無印に入れ込んで欲しかったなぁと思わずにはいられないですね。



〇錦 あすみ


ラブリーマイエンジェルあすみたん。

新ヒロイン天梨も巨乳寄りの中、孤軍奮闘の貧乳勢。がんばれ洗濯板、当チャンネルは貧乳派です。
仰向けのパイズリはなかなかよろしかったです、貧乳だからこそできるシチュエーションもあるのだ。
目を引くのはシキのコスプレでのエロ、理想の具現化ですよ。作中でこれができるのはあすみか声で役を表現できる妃愛だけです。「〇〇の声でやってよ」ですね。尤も妃愛からはNOを突きつけられてしまいましたが。
対してあすみのケースはあすみから自発的なものですね、途中でやはり「シキのしゃべり方をしてよ」と暴走しますが。妃愛との対比なのかもしれないと勝手に想像しておきます。

ストーリー全般はおおむね順風満帆なサクセスストーリー。ちょこっと気持ちのすれ違いはありますがスパイス程度です。
あすみが仕事に集中するあまりバレンタインを忘れるとかもありましたね。

特徴的なのはあすみの「視点」。
あすみは他の凡人とは見えている景色が違うように感じるのです。それは幼少期からの英才教育により到達点というものを見させられているから。
行く先が見えない霧の中で普通は躊躇します、しかしあすみはそこで躊躇しません。なぜならその先に目的地があるのは知っているから。
だから紅白で歌う姿やフェスでの成功を疑いもしないのでしょう。

惜しむらくは障害を乗り越えるのではなく迂回しようとしてしまうところ。
教師との軋轢(というほどのものでもないですが)で転学を勧められた際になにくそとくらいついていく泥臭い根性は見受けられませんでした。恐らく本当にプロとして一つのことを極めてやっていくためにはその精神は大事なはず。
父親の「心を強く育てるべきであった」という言葉はそれを言っていたのではないでしょうか。

最後にVtuber要素。
事務所の先輩の新川から説明させることで無印よりも多くの情報量を入れ込んでいたのは良い。天梨ルートでもそうですが彼が入ると物語に広がりが生まれますね、広夢だけに。



〇和泉 妃愛


智宏モテ期到来ですね、妃愛が危惧していたことがまさに現実のものに。それを引き起こしている原因が妃愛の言動にあるのがまた妃愛らしいですが。
このルートでは他とは違い交際をオープンにしていませんので周りの女性からすれば智宏は恋愛対象に入ってしまいます。妃愛がのろけ誉めれば誉めるほど兄の株は上がりライバルが増えていくのです、自業自得ですが嫉妬するひよりん可愛い。

ところで智宏からの手紙を読んだ妃愛のCG、無印で生卵をぶつけられその後に家で泣いてしまった時のCGとほとんど同じ構図が使われていました。あれはずっと耐えていた妃愛が堪えきれず智宏に甘えた瞬間です。妃愛の感情がそれだけ感極まったという表現なのだと思います。
智宏が能動的に行動を起こすことが少ない本シリーズにおいて妃愛のことを考えてしたためた手紙にはそこまでの価値があったということなのでしょう、少なくともこの兄妹間においては。

今後も二人の関係は周りに公表することは恐らく無いのでしょう。年を重ねるごとに外圧は高まり、二人の関係性を奇異に見る人も現れるはず。
そのときどうするのかはわかりませんが、どうあっても二人が家族としてあることは変わらないでしょう。
二人の行く末に幸あれ。



〇常磐 華乃


面倒くさい ああ面倒くさい 面倒くさい。(自由律俳句)
面倒くさくて、ヘタレで、無駄に胸が大きくて、可愛い。

いやホントかわいいなこの女、バナナでフェラの練習してるくせに。キウイとビワぶつけんぞ。キウイってマタタビの仲間ですからね、猫ってマタタビに弱いですし。キウイの臭いで発情してしまえ。
発情した華乃は絶対やばいと思うのです、めんどくさ可愛いロシアンブルーみたい。

開幕から華乃の欲望ダダ洩れですね、これは良いもの。
口オナホ、スパンキング、首輪…良いですね、ただ髪の毛ハンドルが拝見できなかったことだけは非常に悔やまれるところでした。見たかった。
華乃だけ5シーンは優遇と思いましたがオナニー枠とはしてやられた、損してるわけじゃないんですけどね…なんか悔しい。

彼女はいろいろなプレイを提案しますが献身的というのとは違うのですよね、セックスという行為を楽しんでいるというのが適切でしょうか。こんなプレイをしてみたいという溜めに溜めた妄想を爆発させている感じ。暴走する華乃を何とか受け止めているのも智宏のオタクという属性あってのことなのでしょうね、微笑ましい。

エロシーンは非常に堪能できましたが、イチャラブにあっても華乃はやはり格別。
無印では彼女なりに公私を分けようとしていましたが、それが徐々に崩壊して学校でもイチャつきだしていく様子は実にいじらしくて良い。本人は隠せているつもりでも周りから見ればバレバレというやつですね、定番ですがやはり良い。

「どうして女イラストレーターは男ができると何から何まで変わってしまうのか」疑問に思っていたこと、わからせられちゃいましたね…。



さて、本ルートで特徴的なのは和泉家の変化かなと。

まず妃愛が智宏のお世話を明確に他者に任せたということ。
これは妃愛にとって精神安定と呼べるほど大事なルーチンであったはず。これを委託するということは和泉兄妹の共依存を解消しようとすることに他ならないのです。それも依存を必要としていた妃愛の手によって。

積極的に友人を作り、泊りがけの仕事や旅行を受ける様からはなんとか前に進もうと水面下で足をばたつかせるアヒルのようだと感じました。もうひよこでは無いという表現なのかもしれないです。

兄妹も家を空け、見守ってきた資正もペットシッターに預けられ、家に残るは両親の仏壇のみ。とりわけ異常なことは無いのですけど、家族、家に強い執着を持つがゆえに変化してこなかった和泉家が動き出したことは一抹の寂しさも感じてしまいました。


あまり描写は無いですが常盤家も多少の変化はありそうです。

他人より一歩先に社会で活躍している華乃は仕事に関しては真摯なのでしょうが、家族やそれらの事柄に関しては悪く言えば少しばかり世間を甘く見ている節があります。
そこで勇み足気味に実家を出て、当たり前の家事すらうまくこなせない、周りの協力があって今が成り立っているということを再認識しています。

家族、両親というものは一番身近で一番世話になっているがゆえにその感謝を表しにくいもの。思春期であればなおさら。
いったん実家に戻るというのはあらためてそのことを考えるいい機会なのかもしれません。

ちなみに他ヒロインのルートでも彼女の出番は多いように感じます。
バレンタインやコスプレの件などいろいろありますけど特に際立っていたのは天梨ルートですね。
天梨の一番の友人は華乃ですし、いつの間にやら安全圏からカップルを冷やかすポジションに収まっています。
クラス替えでも天梨と一緒かどうかということを重要視して不安がる様子は可愛らしい。
相性が良いのでしょう、華乃→詩桜、天梨→ギャル組への怒り等、譲れないものに対しては衝突も辞さず意見する様子など結構似たところが多いように感じますし。

ただ他ルートでの彼女はどうも当て馬、かませ犬ポジションになってしまっているのは切ないところ、まぁそれはそれで可愛いんですけど。