本編ChristmasTinaの前日譚。栞奈パートのありえたかもしれない優しい過去の物語は読んでいて暖かい気持ちになる。景パートは景の心理描写は良いのだが「茜」の性格がどうにも受け入れがたい。
本編ChristmasTinaの前日譚。
「桜色零落」
栞奈パートですね。
栞奈がまだ無邪気だった頃、姉として我慢を強いられるようになった頃。嫉妬して両親に甘えていた頃。部活もして学校に通っていた頃。
ありふれた4人家族の幸せな日々。
本編ではどちらかというと感情を抑制して耐え忍ぶ場面が多かった栞奈の、そこに至るまでの補完としてよくできていました。
彼女にも年相応の少女としての側面があったんだなぁと。こういう「ありえたかもしれない優しい可能性」を描写してくれるのは嬉しいですね。
絵美は昔も無邪気で可愛らしいですね。普段から着物を着ている理由も書かれていたのは良かったのですけどちょっと強引だったかなと。
「景色蕭然」
景パート。
正直…うーんとなるところが目立ちました。
景の心理描写は素晴らしいのです、そばにいて唯一の理解者だった茜が少しづつ離れていく様子は胸が苦しくなります。
NTRとかBSSに近しいものがあるんですかね、都会に行った彼女が変わっていってしまったみたいな。公演でのよそよそしい挨拶は「別れ」の一言に他ならないのでしょう。
ただこの「茜」の性格が悪すぎるのです。
性格が悪いキャラがいることは別に良いのですけど、ここまで徹頭徹尾人に寄り添えない人間にする必要性はあるのでしょうか。
孤立させて景を唯一の理解者にしてからの落差を演出しているのかもしれませんが、この作品にはちょっとミスマッチに思えます。
本編を思い返してみてほしいのですが、こんな明確に露悪的なキャラがいたでしょうか。悪の象徴としては江がいるかもしれませんが、彼の過去を紐解けば暴走した理想や優しさが反転した存在であることはわかるはずです。
彼女の存在はChristmasTinaにおいて異端であり、異端であるべき理由付けも見えません。京劇の才能にあふれた普通の女性であっても差し支えないのでは無いでしょうか。
登場人物のキャラ付けに文句をつけるのもどうかなとは思うのですが…うーん。