本編のみさきルートが楽しめたなら絶対にお勧め。正当続編と銘打っているが、あくまでみさきルートのアフターストーリー。FILMIC NOVELについては長文感想で後述。
EXTRA1ではましろとの後日談、イチャイチャに重点を置きストレスを感じさせない構成だったのですが、本作は全く違うアプローチのFDでした。
具体的に言いますとEXTRA1でオミットされていたFC要素やみさきの葛藤からの解放、そこからのカタルシスが描かれています。みさきルートをさらに凝縮したアフターストーリーといえる作品でしょう。
一般的な価格に対するボリュームは不足といえますが、そもそもそういうコンセプトの作品なので仕方ないですね。
少なくとも正当続編という言葉に違わないいい作品でした。
〇全体を通して
夏大会での優勝からFCへの目的を見失いかけているみさきですが、ライバルたちはそんなことはおかまいなく勝つべく努力を重ねます。作中の表現を借りるならば「ナイフを磨く」でしょうか。やたらと多用されていますよね。
これまで目標とされることのなかったみさきと挑戦者たちの心理面のギャップ、FCへの向き合い方。
特に本編で見せ場の少なかった我如古やみなもをはじめとしたライバルたちとの闘い。そして部長を筆頭とした久奈浜FC部の思いを乗せて飛びました。
これは晶也との二人三脚の面が強かった本編とは違い、仲間たちとの絆を前面に押し出しており良い終わり方だったと思います。
〇嫉妬というものについて
本作では「嫉妬」について肯定的に書かれているように感じました。「憧れも嫉妬も、俺が進む力になってくれると思うのだ。」という発言がありましたが、本編では進む力どころかへばりついて邪魔する存在であったはずです。
全て吹っ切れたというわけではないのでしょうが、それを口に出せたというだけで晶也やみさきの成長が感じ取れ良かったです。
〇FCについて
お腹一杯になるほどFCを堪能できました。最高。
一番のお気に入りは四島のヒーロー・真藤と紫苑の元部長同士の対決です。ちなみに紫苑の目が開いたのはこれが初めてのはず。
アンチヒーローというほどダークな要素は無いですが、紫苑はヒールです。観客は間違いなく真藤の勝利を望んでいるでしょう。
100回やれば1回は勝てる瞬間が彼にあってもいいはず。少なくとも晶也と窓果はそれを信じていました。だからこそ窓果の「ヒーローをぶっとばせ」の発言はグッときました。
敗北ではありますが、彼が彼であるために必要な戦いであることが感じられ納得できるものでした。
また、二人の関係性もよく描かれていましたね。特に仲がいいわけではなかったと本人らが言っていますが最終的に兄弟と認めています。
紫苑は無条件の尊敬は屈服であり、望ましくないと。真藤もただの特別扱いは好きではないのでしょう。
〇FILMIC NOVELについて
FILMIC NOVELについてはHPに書いてあるのですが、新しいもの、いいものを作りたいという気持ちは伝わってきます。ユーザーの需要と合致していれば受け入れられると思うので頑張ってほしいです。
反面、クリエイターの作りたいエゴが強まりすぎると商業作品として成功しないように思えるのが懸念ですね。モノとしてはいいものはできるのかもしれませんが。
今作はFILMIC NOVELの
長さよりもクオリティ・多彩なCGによる演出を重視
ダイナミック・フィルミックな構図
ストーリー・ビジュアル・音楽を融合させた映画的作品
これらの要素を表現するのに相性が良かったと感じました。
FDですのでボリュームはそれなりでも許容され、FCシーンはCG枚数と画面効果でダイナミックさを表現できます。
実際、要所要所で挿入されるFCシーンは映画のようとまでは言いませんが臨場感もあり楽しめました。
ただ、それ故に今後の作品ではFCなしが明示されている作品があるのが気がかりです。具体的にはIF 01 みなもメインの作品です。
FCシーンがあり効果的に活かされているからこそ私はこの作品に高得点を付けました。それが無ければ5~10点は差し引いていたかもしれません。
ここまでFCの良さを書いておいてなんですが、できればFCに頼らないFILMIC NOVELを見せてほしい気持ちもあります。
四島列島シリーズをどこまで続けていけるかわかりませんがいつかは限界が来るでしょう。そのときあおかなやFC一本足ならそのまま沈んでしまうのは想像に難くありません。
今後の計画や構想はあるようですのでぜひとも実現させてほしいです。