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HARIBOさんの猫忍えくすはーと3の長文感想

ユーザー
HARIBO
ゲーム
猫忍えくすはーと3
ブランド
Whirlpool
得点
75
参照数
68

一言コメント

登場人物が増えるにつれて彼らの掛け合いにより面白さが高まっていく。1より2。2より3だ。僅かなシリアス要素は猫忍らしくはないが、猫忍シリーズの一区切りとしての味付けなのかもしれない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

1.2.3とナンバリングを経るごとに面白くなってきている。

2でも感じたが、登場人物がそれぞれを高め合っているのだ。いろんな者を投入しても受け入れてカオスに面白くなっていくのは猫忍ワールドの意味不明さの賜物だろう。料理に例えるのならカレーみたいな?拙者カレー苦手でござるが。


1では基本的にゆらとたましかいないので、良くも悪くも彼女たちに注目せざるを得ない。世間知らずで、幼稚で、主に仕えるという自分たちの我を通す様は忠義と言えばそうだが、自己中心的な面は否定できなかった。
猫忍というものの有用性、暴力装置としての強さも後半になるまで語られるわけでは無かった。里の上忍といいつつも中忍、下忍がいないわけで比較しようもない。


2では里見の2匹が「比較対象」として加わることにより客観的に彼女らの見方が変わった。マヤは特に「弱い」猫忍、それもうさぎだし。彼女の庇護欲をそそるキャラクターによりハルキの目が向き、ゆらには「嫉妬」が生まれた。意味不明一辺倒の世間知らず猫忍の彼女に理解しやすいかわいらしさが生まれたのだ。

同じく忠義に燃える律もわかりやすい対比。
万能型の彼女のそつなくこなす様は武力特化型のゆらとは相反する。3番勝負でゆらが高耐久を武器に律を下したのはなんだか胸がすくものだった。

こうして新たな面を垣間見せるゆらに比べて、たまは我関せずといった感じで見物する様子が多い。しかし最後には美味しいポジションをもっていくし、決めるところは決める。猫らしさみたいな?


さて、3では雑賀に属する陽葵率いる忍者たちが加わる。
ゆらは誰に対しても面白い。誰が来たって「拙者が一番じゃなきゃやだもん」に落ち着く。

シノに対するマヤや律の感情は、少なくとも最初は里見八忍の裏切り者といった印象だろう。

そして陽葵はと言えば、関係性のある人物は彩羽。ハルキのまわりではなく、外にその関係性を置いた。作中で語られる通り、彼女に寄り添えば必然、彩羽と敵対せざるを得ない。
そのためには雑賀一族の背景、忍者というものの歪さなどに対する一定の解答が求められる結果となり、「忍びの主」としてのハルキの信を問う、といった展開に行きついているというわけだ。

信を問うというと大げさだが、猫忍シリーズに一定の落としどころを付けるための決意表明のようなものだ。ハルキ一派はこんな感じで、これからもドタバタやっていきますよ、みたいな?
登場していない里見の猫忍も沢山いるし、雑賀の問題も全く解決されていないがそれは置いておいていいだろう。2023年現在発売されたSPINのような番外編やFDで登場させても良いし登場させなくてもいい。これらは伏線というようなものではなく、アンコール程度の要素に過ぎないのだろう。


総じてこの3は、過去作と比べるとシリアス寄りにはなっている。これでシリアスというと重厚な作品群から笑われそうだが猫忍はそういう作品とは違う。甘口カレーの店ならちょっとのスパイスでも敏感に反応するものだ。

この少しのシリアスさは見る人によっては難を示すかもしれないが、猫忍シリーズの一区切りとしての味付けなのかなと私は見ている。
例えて言うなら口直しのらっきょうとか、福神漬けみたいな?



〇ちょっと気になったところ


本作のみに限ったことでは無いが、会話の中ですごい回数の疑問符を用いることが多い。
「立ってる者は親でも使えのような?」みたいな。
基本的には可愛らしくていいのだが、背景のような断定的な事柄に対してまで用いると違和感を覚える。

例を挙げると、雑賀について説明する彩羽。

「たとえば里からこぼれた抜け忍とか?」

公務員じゃあるまいしここまでアバウトにしなくて良いのでは。
最初は登場人物のキャラ付けのためかとも思ったが、主人公まで使いだすところを見るとそうではないようだ。

もう少し使いどころ、もしくは使用する人物を絞ったほうが効果が高まるのではないかなと思った。