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HARIBOさんのアメイジング・グレイス -What color is your attribute?-の長文感想

ユーザー
HARIBO
ゲーム
アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-
ブランド
きゃべつそふと
得点
85
参照数
448

一言コメント

伏線回収が評価されているが、ミステリ小説ではないし、SFゲームでもないと思う。視点と舞台背景、設定への理解で評価が分かれそう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

作品をクリアして面白いと思うところも多かったですし、疑問点もありました。
いろんな人の評価を見たなかで、Planador氏のコメントは秀逸。

https://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=27059&uid=Planador

すべて賛同するわけではないですがいくらかの疑問が氷解しました。
この考察には舌を巻かざるを得ないです。
Planador氏のコメントにはあとで触れるとして、個人的な感想を。


POVコメントには伏線について評価されている人が多い一方で、ヒントが多すぎる、こんなすぐに気が付くのは伏線じゃないなどの評価が散見されます。

この町には文字がないとかキリエの最初から演技とかは私にはわからなくて、明かされたときはわくわくしたものですが頭のいい人にはすぐ気づいてしまうのでしょう。
まぁわかったから楽しめないというものでもないとは思うのですが。

思うに、普段からミステリや推理ものを嗜んでいる人にとっては既知のトリックに類似しすぎて予測がついてしまうのではないでしょうか?

それが作品のすべてでもないし、本格的ミステリってわけでもないと思うのでハードルを上げすぎないのが吉と思いますが。

ループものってところもSF要素があるけれど、別に科学的考察とか量子論とかあるわけでもないし。
ファンタジーですしね、理論についてはこまけぇこたぁいいんだよ。

最後の黄金の林檎とかね、ほら「機械仕掛けの神」ですよ。


キャラクターについて。

個人的に好みだったサクヤが最初脇役と思いきや重要ポジションだったのはうれしかったとして、全般的にキャラの深堀が遅かったように感じました。
伏線が後半に回収される形であるのでやむをえないとは思うのだけれど…キリエは演技を明かすところが見せ場であるでしょうし、コトハも同じくギドウとの対決で輝いていた。
どうも個別ルートが前座感が強かったのが個人的には残念。

監禁薬物投与は人によっては首を傾げそうなところだが、サクヤのそれまでの苦難を考えると納得してしまいたくなる。あとかわいいんですよ。


心情的に共感できたのはギドウだった。
ギドウのような気持ちにかられたことはないでしょうか?褒められたことではないでしょうが、私は気持ちがわかります。
嫉妬に狂い将棋盤をひっくり返すのは純粋ゆえの行動なのか。
行為の是非は置いておくとして、圧倒的な才能に挫折を味わい、アポカリプスに走ったのは自然に思えました。学長という「蛇」にそそのかされたのですし。
あの閉じられた世界で芸術しか評価されず、挫折してもそれしか彼にはない。
リンカの模倣でおそらくピカソの絵を選び、クローザの失楽園を見せられた彼にはもう逃げ場はなかったのだろうと思うのです。
その最終作、足寄町の失楽園すらも模倣であるのは滑稽ですが、それでいい。
外の世界では逃げ場もあるでしょうが、あの世界では彼の寄る辺はそこしかなく、最後がそれならある意味ハッピーエンド。


伏線やらの考察はいろいろ考えたのですが、Planador氏のコメントを読んでしまうと、何も言えなくて夏。
引用だが「黄金の林檎のCGに舞っている羽が梟。梟はミネルヴァのアトリビュート。
つまりユネ=ミネルヴァ。黄金の林檎を渡すパリスこそシュウ。」や
「各種道具などがワイプ状で出る際の青い横長の枠ですが、これは形状を考えるとスマホであり、シュウ視点でそういう風に出るということは、即ちシュウのアトリビュート=スマホ」
などの考察は思わずCGを見返してしまいました。
特に「関連資料の深い解釈付け」という表現は物語の深さを認識させられました。
作品への評価が変わる可能性すら感じるレビューでした。




シスター・リリィの声優だけは…なんとかならなかったのだろうか