プレイ時間30分程度。 ブラウザ、ダウンロード共にWin11環境では不具合あり(解決) 民俗学はもとより、住人と旅人、価値観の違いの表現が見事。
ブラウザ版は動作が遅すぎたのでダウンロード版でプレイ。Win11環境だと起動に難があったが、互換設定を見直すことでひとまず解決。
民俗学の知識はなかなか興味深い内容。
主人公の知的好奇心が旺盛なため、違和感なくプレイヤーに知識がインストールされていく流れはテンポよく読んでいて心地良いですね。
特に面白かったのは、ブンちゃん先生の立場から見た村人と価値観の違い。
先生の立ち振舞いは、礼節をわきまえた分別のあるものです。
異なる風俗のある土地にフィールドワークに赴くときは、相手方のそれを否定してはなにも得られないわけで。受容して、理解してが必要なのですね。
それが伝わってくるのがおばあさんとのシーン。
昔の風景を語り、確かな観察眼で楮畑を見抜き、土地への理解を示す。やはり自分達を知ってくれている、共感してくれるというのは嬉しいものでしょう。
だがやはりよそ者というか、あくまで礼節を守った他人での立ち位置にとどまるのが上手い。
楮と一緒に炊く芋の風情に共感を示し、それを味わえぬ若人を「かわいそう」と括るシーンがあったと思いますが、ここでおばあさんはこう返します。
「古いことを言う」
「そんなのはない時代に育った人間の見栄よ」
「昔のことを有り難がって意地はっちょっても、若いもんには笑われるだけいね」
恐らく還暦はとうに越えた老人が三十路の若人に「古いことを言う」
実に痛烈、読んでいて「おぉ…」と漏らしてしまいましたね。
楮も棚田も、芋も、おばあさんにとって過ぎた昔日の懐かしさはあれども、変わり行くものとして納得しているのでしょう。
それを外野の民族学者が「可哀想」というのは、言ってしまえば「無粋」。
なんとなくなのだけど、ブンちゃん先生、楮で炊いた芋、そんな食べたこと無いんじゃないかなと思ったりもするのですよね。体験程度じゃないのかなぁと。
まぁそれはそれで民族学者のスタンスとしては正解だと思いますし、むしろその地に住まう「住人」と「旅人」の価値観の違いがひしひしと伝わってきて本当にうまいなぁと思わせてくれました。
この要素は作者の国シリーズ、特に「雪子の国」でより深く描写されており、他者に真似のできないKazuki氏のお家芸と勝手に感じています。
感動とかそういう感情に訴えかけるエモーショナルなところはないのですが、しみじみと味わえる、伝えたいテーマがぎゅっと詰まったお話でした。