シコれども シコれども なお、我がチンポデカくならざり。
少し頭が悪くて、家庭環境が歪で周りの人に恵まれなかった揺子。彼女はおじさんに処女を散らされ孕まされ、自己が曖昧になってセックスでしかその境界を見つけられないほどに壊れていた。
好きなことが見つからず、やりたいことも見つけられず、ただ流されるまま大学生活を終えようとする主人公。
セックスを失敗したことはきっかけに過ぎないのだと思います。周りができることができない、自分は特別でないどころかむしろ弱者だと勘づいている。否定しきれるほど馬鹿ではなく、されど賢くもなく。
自分より劣る存在を見て心を落ち着ける卑屈な精神、自身でそれを醜いと自覚しつつも心の安定には欠かせない。
そんな二人のボーイ・ミーツ・ガールなお話でした。
セックスというものを縁にして繋がりあう、歪な共依存の物語。言葉の一つ一つに深みがあっていちいち刺さる。
2時間弱のプレイ時間の中で冗長なところはほぼありませんでした。
死生観というには少々歪んでいますし、主人公サイドは甘っちょろい青年モラトリアムの延長です。しかしそれでも先の見えない漠然とした不安は確かな焦燥感を孕んで伝わってきました。
ストーリーの真面目なお話はこのぐらいにして…
下ネタというかシモの話をします、エロゲの感想で今更何を言ってんだってものですが。
この作品の、私が、感銘を受けたところは「チンポ」についてです。EDですよ、インポテンツ。
これに関する描写が非常に、非常にうまいのです。
伝わる人がいるのかわからないですけど、チンポについて書きます。共感してくれたら嬉しい。
女性の方がもしいたら、いつか出会うフニャちん野郎に少しだけ優しくしてくれたら嬉しい、男のチンポに関するメンタルはめちゃくちゃデリケートなのですから。貴女の一言で彼のビッグマグナムは生涯使い物にならなくなるかもしれないのです。
さて、感想をお読みの諸兄の中に中折れした人ってどれぐらいいるのでしょうか?もしくは挿入に至らないでも結構。
一度ダメでも2回目が大丈夫なら持ち直せるでしょうか。では2度、3度ダメだったら?
想像してみてください、しぼむチンポ、外れるゴム。乾くマンコ。不安げに見てくる彼女。
「シコれども シコれども なお、我がチンポデカくならざり。(一握の陰茎)」
最初は良いですよ、「あなた疲れてるのよ」とかですむんですから。僕はモルダーじゃないよってね。
「私に魅力が無いのね」とか言い始めたら目も当てられない。詰みだよ。
そんな状態でチャレンジできると思いますか。できるわけが無い。そうしてできなくなっているのが本作の主人公です。
彼はミソジニー的な気質を持っています、平たく言えば女性蔑視ですね。彼の抱えるコンプレックスの根源がどこかは明確ではないですが、とりあえずチンポを軸に考えます。
そうすると「挿入・射精できなかった」ひいてはセックスに失敗したということがしっくりくるでしょう。
それが全てではないにせよ、協力的ではない彼女によって彼のED気質はさらに高まったのですから女性へのヘイトが高いのは納得はできます。尤も、それで女性全般を汚れているとまでに言い切るのはだいぶこじらせていますけれども。
ではこのコンプレックスを解消するためにはどうすればいいのか。簡単です、セックスすればいいんですね、女性と。自縄自縛ってこういうことをいうのでしょうか、実にむごい。
見下している女に頭を下げて尽くして、でも立たなくて謝って。この上なく屈辱ですね。
もしかしたらレイプならできるのかもしれません。でも彼にそんな度胸は無いでしょう。真っ当な、ちっぽけな価値観しか持っていませんから。
金や権力で女を屈服させれば出来るかもしれません。揺子の処女を奪ったおじさんがそれですね。でもそんなもの持っているはずがありません。
八方ふさがりの彼の前に現れたのは救いの天使でした。それも都合よく汚れている堕天使。
辛いですよねと理解を示す。フェラでの射精で自信をつけさせ、シチュエーションを整えて、今回がダメでも次の機会があるとしっかり安心させる。実に献身的で至れり尽くせりですよ。まぁ彼女なりに願望というか欲ありきの行動ですがここでは触れません。
あとホテルに着いた後、性急にことに及ぼうとする主人公を「がっつかないで」と諭すところは必見ですね。
なぜがっつくのかって、不安があるからなんですよ。ちゃんと立つか、射精できるか、張りぼてのオスらしさを装っているのが実に主人公らしくちっぽけです。
作中で述懐されていることですが「オスとしての自分が否定されている気分になる」。被害妄想と言い切ってしまえばそうなのですが、ラブホを見たり結婚する人を見るたびに彼はそのコンプレックスを刺激されるのです。誰も悪意などないのに、勝手に悪意を作り出してしまう。自分で自分を傷つけていくかわいそうな存在なのです。
凌辱ゲーは言わずもがな、純愛モノでは恋の成就の末のセックス。エロゲにおいてセックスはあって当たり前、できて当然のものです。
本作はその過程のイレギュラーについて丁寧に描いており、そのクオリティは確かなもの。ライターがメインで書きたかったこととは違うのかなとは思いますが、私はこれが実に素晴らしいものだったと称賛させていただき感想を終えます。