「グロテスクの皮を被った純愛ゲー」。シナリオも読みやすく素直に面白いです。エログロはしっかり組み立てられており自分の好みに合えば実用に足るでしょう。すべてではないですがいいエログロでした、抜ける。主人公サイドのキャラも良いのですが、敵キャラサイドの愛と執念はそれに勝って共感できました。特に至門とアリソンちゃんが好き。
本作の印象は大多数の方にとってエログロ描写が第一になると思います。実際それも大きな魅力ですし、スタッフコメントでも男女問わず「抜けました?」なんて問いかけられることからそれは明らかで、ユーザーと制作側の需給バランスが取れているのでしょう。
ただストーリーとテーマ性もそれに劣るものではなく、両輪がうまく機能しバランスをとってこそこのマゴべという作品が成り立っているのを感じさせてくれました。面白かった。
ストーリー内容自体は真面目に考察というか読み解こうとするとかなり深いのでしょう。
宗教に絡むところや哲学的なところはあまり知識が無いので十分に理解できたとは言えないのですが、楽しんで読むという程度に限定すればとても読みやすかったと思います。
魔女とはなんなのか、アリソン復活の謎、昔の事件との関係性。複雑になりすぎない程度に疑問を提示してテンポよく回収してくれます。
独自設定の作品って設定盛りすぎて風呂敷を畳めていないパターンが多い気がするのですが、本作は綺麗に畳めており素晴らしいです。
気になるところはたまに出てくる重要な設定に粗さがあるところでしょうか。
「血の収穫」で主人公が「透明の領域」を展開して無敵モード入っていましたけど、急すぎるかなと。ぽっと出の「透明な領域」に神の力がなすすべがないというのはちょっと説得力に欠けると感じました。
バトルは前半は良いのですけど、後半でも同じCGが目立ちましたので素材不足は否めないところですかね。
〇登場人物
魔女やら魔法めいた要素やら沢山出てきますが、登場人物たちは一皮剥けばとても人間らしいなと感じます。
他者を超越したようでありながらも、根源的な恐怖や理解できない事象に対してはたやすく堕ちて本来の人格が出てきますから。
普段の詩的な言葉を諳んじる様子から一変した、彰護に首を切られるウィルマの哀れな命乞い。斥力場を失い優位を保てなくなるやあの体たらく、可愛いですね。
君にしかできないんだと唆されて、単身突撃して返り討ちに合うアリソンちゃん。彼女は実にチョロいですね、でも健気で可愛らしいです。
自らを律する侍のようであったアイリーンの即落ち二コマ。くっころ騎士かよって思いました。
そもそもウィッチらは妖蛆に対する根源的な恐怖があるのでしょうしね、我々だって肉食獣に睨まれて平静を保てるわけはないのですから。
ただ、サンディはそれに対して一定の抵抗を試みていたのは成長と言えるのかもしれません。特に至門との戦いのさ中に自ら首を落とすところは驚嘆に値するでしょう。
本作の登場人物らは目を覆いたくなるほどの凄惨な状況の中にあっても「自殺」を選ぶことはほぼ無かったように思います。これはキリスト教義の「自殺の戒め」からくるものではないのかなと個人的に推察していますが、これに照らせば尚更彼女の特異性が際立ちます。
あとはヴァレンティノスでしょうか。倒すべき相手と信仰の矛盾に突き当りつつも最後は信仰に殉じていたと言えますから、信仰、宗教というものを正しく心の寄る辺として活用できていたのでしょう。
そして至門ですね、作中で一番好きです。
彼は徹頭徹尾人間であったと私は思います、力を得ても増長していませんから。
「愛とは見返りを求めるものでは無い」とは聞き飽きた言葉ですが、彼は見返りを求める以前に愛を受け取ってもらえていないので、ずっと満たされていないのです。増長する余裕などあるわけが無い、何も手にできていないのに。妖蛆もユダの福音書も絶大な力こそあれ彼にとっては何の価値もない。
魔女は誰も必要としていない、だから至門も一人きり。「血の収穫」での彰護とキャロルの最後を見たら悔しくなるのは当然です、自分が欲しくて仕方がない理想がそこにあるのですから。
そんな彼が最後の最後に師匠とのふたりきりの世界に達することができた。まさに一念岩をも通す、ですね。
反逆なんかじゃないんですよね、裏切りでも恩を忘れたわけでもない。
「世の終わりまであんたと一緒にいたい」
本当にこれだけ。
多分、最後まで理解はされないでしょう、「汚らわしい、おぞましい、気持ち悪い」ですもの。
至門も魔女もこんなのは愛じゃないと言い切ってますけど、それでも諦めきれない欲望の終着点。
魔女に取りつく至門は切なそうで、愛しそうで、申し訳なさそうで…。
最後に彰護とキャロル。この二人がお話の核だとは思うんですけど…あまり共感できなかったんですよね。
彰護の復讐は女の子たち、特に瞳子を守れなかったことに起因するはずです。それはわかるのですけど、こんな復讐鬼になるほどの「種」としては説得力が足りないように思えるのです。
例えばブライアンは妻がその「種」でした。それを強姦、拷問や仲間たちの悪意により育てられて開花したわけです。
妻でも彼女でも妹でも友人でもいいのですけど、彼の魂に植え付けられた「種」として足るべきキャラクター付けがあったほうがなぁと少し思いました。
ただ、クラスメイトに陰口を言われながらも、惨劇の中で貫き通した瞳子の「綺麗ごと」が最後に報われたということは何より価値のあるものだと思います。
〇エログロについて
リョナなどは物語の演出として評価はすれども、性的なものとしてはあまり好みでは無かったはずなのですが…自分の腸を口に突っ込まれているアリソンを見て股間を熱くしていたのですよね、自分でも不思議。
アリソンちゃんルーレットも良かったし、パーティー会場の宴はとても良かったです。目とか鼻とかは抉ったり拡張すればいけるのでしょうけど、乳房や皮膚全てに対して挿入口を作るというのは汎用性が高く、クリエイティブな手法だと感心させられました。こういう作品ではポピュラーなのかもしれませんが初心者の私としては目からうろこです。
特に「穴が無ければ作ればいい」ってセリフ選びは秀逸でマリーアントワネットかよって思いましたね。ケーキとパンじゃねぇんだぞって。
あとたまに笑えるんですよね、エロシーンが。
グロリアの牛とか、ウィルマの豚とかマジかよって思っちゃいました。
モンキーハウスとか怒涛のシーンの連続ですよね。私は異種姦、ふたなりがあまり癖ではないので食傷気味でしたが好みの方にはご褒美タイムかもしれません。
そして一般的な強姦シーンは芹佳の数少ない見せ場でした、暴力に不慣れな人間ならではの命乞い、彰護に見捨てられるところなど良かったです。特に陰毛の手入れ不足、体形のだらしなさを指摘されて恥ずかしがるなんてレイプの最中に感じることとしてはアンバランスで可愛らしいですね。
まぁ、自分の新たな性癖(誤用)を見つけるという意味でもこういう作品をやってよかったなと思います。