猫耳カフェという飛び道具的な設定だが、蓋を開けてみると意外と普通のエロゲーだった。 発展の余地ある、本作独自のネコミミ要素が活かされることなく、ただのイチャラブゲーとされているのが何よりもったいない
全体的な評価は一言感想のとおり。どのルートでも「イチャラブ→障害→乗り越え」の流れで進んでおり、昔ながらのエロゲーを彷彿とさせる。
ただ、個別が1~2時間程度というボリュームは流石に短い。中古で買ったのでコスパに言及するわけにはいかないのだが、正直フルプラには見合っていない。
短い尺の中にエロシーンをそれなりに入れているし、イチャラブも悪くはない。しかしそのせいでストーリーが変わり映えしない展開になってしまっている弊害もある。そして何より本作の大きな不満点は「ネコミミ」がストーリーでほとんど必要とされていないことだ。
作中の障害でネコミミに絡んでいたのは、せいぜいが千愛ぐらいではないだろうか。ネコミミが主人公と自分を繋ぐアイテムであるから、それを失っては嫌われてしまうのではないかという流れだ、まぁ秒で解決されてしまうが。他のヒロインはネコミミが無くてもストーリーが成立してしまうように思える。
尤も、本作はキャラクターの可愛さ、魅力に注力して楽しむべきなのかもしれない……しかしそれでは惜しいと思う理由が一つあるのだ。
それは、ネコミミが存在する理由が心理面の描写として用いられている点が独創的で、非常に興味深いことだ。
魚やイノシシの模様、ペンギンのモフモフの様に、大人になって変化、消失していく身体的特性というものは自然界に多くある。それらは一般的に外敵や自然環境などから未熟な身を守る、つまり物理的理由だ。大人になり身体が完成したから変化したのである。
では本作でネコミミを失う理由は何なのか。それは「精神的成熟」であると私は感じた。
恋愛を題材としたゲームであるので、当然本作のキーは恋愛だが、部活動や学業、友人関係などでも何かしらの達成とそれに伴う成長があればネコミミは無くなるのではないだろうか。
エロゲー問わず、物語の中で重要な要素である「登場人物の成長」は、肉体的能力であれば比較的簡単に説明がつく。定量的に表現しやすいからだ。
しかし精神的な成長は描写しにくいもので「主人公の精神的成長が今一つ伝わらなかった」なんて訳知り顔で酷評されることすらある。だがネコミミは見ればわかる、グダグダ言わずともネコミミが消失した時点で精神的なステージが上がっているのだから、描写云々は勝手に見つけろとまで言える。
本来「定性的」な基準で語られるべきものを「定量的」に表現できる場面に引きずり込んでいるこの設定は非常に強引だが、実に清々しい。
そしてこれは現代社会を生きる我々に当てはめてみても面白い。
例えば昨今の社会では「大人になり切れていない未熟な大人」について自虐含め話題にされることが多いが、この町の住人にとってはそれは無縁だ。なぜなら、精神的成熟を終えなければ一目でそれがわかってしまうから。つまりネコミミが生えていれば、たとえ50歳のおばさんでも子供に等しく、社会に出るのであれば経験を積むべく訓練施設が必要であり、そのためのカフェであるのだ。
どうだろう、なかなか発展の可能性がある、非常に面白い設定だと思わないだろうか。
もちろん私の拡大解釈した妄想であることは否定しない、というかそうだろう。だが、そこまで妄想を湧きあがらせてくれたこの設定がまともに活かされず、ただのイチャラブゲーとされているのが何より悔しいのだ。