前作と比べライターの表現したいものが形になっている。 万人に勧められる作品ではない、という月並みな表現に落ち着くのだが、ラムネーションが好きな人には勧めたい作品。 過度な期待はせず、コーラ片手にポテトつまむぐらいのノリで楽しんでほしい。
ライターけっぽし氏の手がける100円シリーズ、第3弾。
個人的にはこの作品が一番面白かった。前2作との共通点、相違点を踏まえながら感想を。
※前2作のネタについて少し言及します、ネタバレというようなレベルではないですが。
まずストーリーの流れを見てみると前2作、「後輩と後背位で交配してみた。(以下、コウハイ)」「S.I.S.T.A.R.S:KISS OF TRINITY (以下、シストリ)」及び本作は案外普通のプロット。
コウハイは普通の後輩との恋愛模様だし、シストリは兄に思慕する妹たちの三角関係(プラス百合)。本作は穿って言ってしまえば姉妹の百合モノだ。なにかストーリーで特異な点があるとか、戦闘や心理描写が緻密であるとか、そういう目立ったセールスポイントはない。
ではこれらの作品群は特徴がないのかといえば、そんなことは口が裂けても言えないのである。
これらの作品群に共通する特徴は「ネタ」である。
〇ネタについて
下ネタ、パロネタ、雑学、etcetc……これらがなければ本作品群は印象に残らないと思う。もしそうなったのなら、良く言えば普通、悪く言えば凡作に成り下がるので、これはこのままで良い。
これらのネタは笑えるものもあるが、基本的には目を背けたくなるような低レベルなものが多い。まぁライターが楽しんでいることは伝わってくるので、そこが僅かな救いである。
さて、ネタの種類で大きく違うところに前2作に採用されている「淫夢ネタ」がある。
コウハイ、シストリは淫夢ネタがかなりあり、特にコウハイに至っては主人公の名前が「田所」である。正直淫夢ネタを盛り込んだ作品を作りたかったのではないかと邪推してしまうほどだ。
私は淫夢ネタに明るいわけではないが、少なくともけっぽし氏のそれを好意的には見ていない。別に淫夢ネタがダメだと言っているわけではなく、自分のネタとして作品にアジャストできていないことに問題があるのだ。
そもそもが淫夢ネタというものは半ばスラングのような位置づけで一部に浸透しているため誰のネタということはなく、共有物の領域である。そのためどう扱っても一発ネタの域を出ず、作品の根幹には足り得ないので、扱いが難しい。
何かに絡めて言及するとか、ちょっとアクセントとして使うとかならアリだが、けっぽし氏の使い方は非常に節操がない。
まるで小学生が覚えたての下ネタを連呼するようなもので、最初は微笑ましく見えてもだんだん「お前が考えたネタでも無いのにうるせぇよ」といった気分にさせられるのである。
ここまでは前2作の淫夢ネタについてだが、カラホワではほぼ無くなっているように感じる。
代わりに増えているのはアメリカンなネタやバイクなどのエンジン系だろうか、歴史的な雑学や時事ネタもあるかもしれない。
これは基本的にはくだらないものがほとんど。ストーリーに対する必要性はまったくなく、無くなっても困らないし、むしろ無くなったほうがストーリー的にはスムーズである。しかし、このくだらなさがこの作品の魅力であることは疑いようもないのだ。
なぜならば、このネタからは「けっぽしの好き」が伝わってくるからだ。
流行りに乗っかって下ネタで遊んでいた小学生が、スポーツだったりゲームだったり好きなものを見つけて周囲と語り合う、そんなキラキラした瞳を感じさせてくれるのである。
ちょっと失礼な想像かもしれないが、淫夢に飽きたんじゃないかな、と少し思ったりもする。
しかしその過程で生まれたるなちーやそるにゃんといった前作キャラをきちんと活かしていることから見るに、それらの作品は無駄ではなかったのだろう。むしろ彼女らは前作よりも輝いていた。
〇エロについて
不思議なものだが、けっぽし氏の書くエロシーンは意外と悪くない。傑出しているわけではないのだが、純愛ものでおざなりにされるようなものと比べてみればわかる。決して手は抜かれていない。
惜しむらくは個人的にさしてそそるものではないということだ。セックスに対する基準はあるが欲望がないというか……例えばフェラ描写とか、嗜虐心、淫語マシマシ、なんでも良いがこだわりがない。百合自体は好きなのだろうが、その描写は普通だ。
ネタの数々はあんなに下ネタ振り回してキラキラしているのに、エロに関しては急に落ち着いてしまうのは不思議なもので。
これがけっぽしらしいエロだ、というのであれば別に良いのだが、どうせならもっとさらけ出したようなものが見たい気もする。
〇ストーリーについて
先述した通り特筆すべき点はなく、あえてこの作品に苦言を呈するのならストーリーである。
せっかくキラキラした宝物を詰め込んだのなら、それを入れる箱(ストーリー)もちょっとぐらいオリジナリティが欲しい。
〇まとめ
ライターの表現したいものが形になった作品。
「ラムネーション」ではプレイ時間10時間オーバーの想定ボリュームの前にネタが枯れ、さしてこだわりのないネタが水増しされていたことが残念だったので、シナリオボリュームに合致した本作が良い勢いで駆け抜けてくれたことは非常に好ましい。
万人に勧められる作品ではない、という月並みな表現に落ち着くのだが、ラムネーションが好きな人には勧めたい作品。
過度な期待はせず、コーラ片手にポテトつまむぐらいのノリで楽しんでほしい。