忠臣蔵パロの仇討ちファンタジー。
現代に生きる少年が過去に飛ばされて、赤穂浪士たちと共に時代を駆け抜けるお話し。
1章 = 10H。
2章 = 13H。
3章 = 11.5H。
4章 = 7.5H。
5章 = 9.5H。
合計 = 52H弱。
1~3章では、他の生き方を知らない愚直で不器用な侍たちが、どんな時にも武士の矜持を捨てずに臥薪嘗胆を強いられる壮絶な生き様や、内蔵助の苦悩、安兵衛の葛藤、主税の成長と覚悟を、間近にあって肌で感じられると思う。
彼女たちを支えて救おうと、何度も時代を○○○しながら足掻く主人公にも共感を覚える。
本当に各章とも素晴らしかったけれど、なかでも、叶うことのない主人公や仲間たちとの平和で穏やかな、もう一つの生き方に思いを馳せながらも、決してうろたえず、白装束を纏って最期の時を心静かに迎える赤穂浪士最年少主税の潔さが、正にEND曲の歌詞通り残酷で美しく心震えた。
とまあ、多くの脱落者を出しながら信念を貫き仇討ちを果たすという、江戸時代から愛され続けた忠臣蔵の物語を、懇切丁寧になぞりつつ独自の解釈で掘り広げているので、題材的にも今作のシナリオ的にも、日本人ならば面白くないわけがない。
仮にここまでで終わっていたのなら、文句無しで90点以上をつけていたのだけれど…。
4章以降は、先の展開が知りたくなる1~3章のようなシナリオの牽引力は大幅にdown。
4章の吉良側からの忠臣蔵へのアプローチ自体は面白かったものの、1~3章で描かれた赤穂浪士たちに泥を塗る内容となるので、今まで以上にヒロイン(一魅)を丁寧に描き、浅野の正義を覆すぐらい主人公とプレイヤーに感情移入をさせないと、1~3章直後の章としては力不足なんだと思う。
折角吉良側の視点に主人公を引き込んだのだから、ただの赤穂側ファンのための忠臣蔵講座にしないで、シナリオや一魅という人物にこそプレイヤーを惹きこんで欲しかったかも。
忠臣蔵の被害者として人生を狂わされた一魅が、今度は自身が間接的に加害者となって他者の人生を狂わせ後悔する様、仇討ちのために全てが狂っていく橋本兄妹の姿も、主税の最期等の1~3章までの侍たちのエピソードや、後述の小夜と兄姉の別れとは違って美しくない。
ただただ残酷な悲劇でしかないよお初ちゃん!!
でもって肝心の5章は、前半は主人公が空気、後半は怒涛のやっつけ超展開なので、なんだかなーといった収束具合。
それでも中盤のエピソードとして、武家の長女という立場から武士として成長していく赤穂浪士の右衛門七と、次女として家族を守ることを余儀なくされ、姉と主人公から1人取り残されてしまう小夜の2人もまた、残酷で美しくはあった。
兄と姉に自分たちと一緒に生きて欲しいと願っていた小夜が、やがて覚悟を決め、既に武士として討ち入りの覚悟を決めていた姉の右衛門七を、橋の袂で生き方を分かち送り出す2人の別れなどは、全編通して屈指の名シーンだと思う。
当然、妹の前では決して涙を見せまいとする気丈な右衛門七を倣って、涙を堪えたけれど正直危なかった。
何故かティッシュは減ってた。
と、ここまでが山場と言うか許容範囲内の出来事で、以降は完全に別ゲーになってしまうので、終盤はおまけとして楽しんだほうが精神衛生上宜しいのかも。
本当に最後が勿体無かった。
全体的には細かいところで、会話テキストの疑問符 「?」 の使い方がおかしく、これでもかと言うくらい多用しているのも落ち着かない。
殆どの声優さんは不自然なシーンでの 「?」 を無視して喋っていたように感じたけれど、一部の声優さんは台本に忠実な疑問系のイントネーションで演じていたので、つい吹き出してしまった。
商業化を機になんとかならなかったものか。