幼馴染物のヴィジュアルノベル、僕と、僕らの夏休み。
S学校、C学校、K校の暑い夏休みを、幼馴染とすれ違ったり共に過ごしたりする恋愛物語。
主題にある十年間の関係のうち、仲の良かった幼少期は過去の話しとしてちょろっと出てくるだけ。
その過去も結婚の約束をした、などと言った幼馴染のお約束的で安易な設定は特に無く、S学生の幼い2人が成長しながら関係が深まっていくごくごく自然な話し。
幼馴染に異性を感じ始めたS学校5年生から、思春期盛りのすれ違いと和解のC2時代を経て、互いに心を預けるも漠然とした不安を抱え、やがて本当の意味で結ばれるK1時代までを、丁寧に繊細に、さりげなくドラマティックに描かれていたと思う。
天然でちょっとダメっ子な枝梨もいじらしくて仕方ない。
とにかく、起承転結がしっかりとしたシナリオと、生き生きとして甘酸っぱい2人に思い切り惹き込まれ、セミの鳴き声、ラジオ体操、宿題、スイカ、水風呂、夏祭り、そうめん、高校野球、特別な意味を持つ花や雨など、ちゃんと夏休みしているノスタルジックな雰囲気に癒されました。
↓ システムについて。
ヴィジュアルノベル方式ということで、テキストウィンドウ方式のオーソドックスなADVの、一文を1~3行(?)程度に収め地の文を抑えて読みやすさを追求する、といった制約を取っ払ってあるので読み応えは十分。
それでいて、同じヴィジュアルノベルの過去作、「親友が美少女になって帰ってきた。」で気になった不自然な改行や改頁などは一切無く、ユーザーが読みやすいようなテキストの配置や表示になっている。
恐らくかなり気を使って調整したものだと想像。
結果、ヴィジュアルノベルの読み応えと、ウィンドウ方式の読みやすさを併せ持っていたように思えた。
夜のひつじと同じく同人サークルのめくじら等もそうだけど、今作のようにシステムや演出面で過去作に比べ目に見えて改善されていると嬉しくなります。
一部の商業メーカーも快適性を無視したままその辺で足踏みしてないで、ものづくり精神の原点を思い出し頑張って欲しいところ。