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H3Oさんのグリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA-の長文感想

ユーザー
H3O
ゲーム
グリザイアの果実 -LE FRUIT DE LA GRISAIA-
ブランド
FrontWing
得点
85
参照数
912

一言コメント

卑語と軍事ネタが飛び交う厨二系学園物のドタバタコメディ+成長物語。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ヒロインたちのトラウマの克服を手助けする、自身もトラウマ持ちなスボケ男のちょっといい話し。


共通パートの日常会話で下品な掛け合いを楽しみ、個別パートで各ヒロインや自分のトラウマを克服し、足枷から解放されるといった構成。
長いシナリオだったものの、一部の個別ルートを除いてテンポの良い軽妙なテキストに引っ張られたので、ストレス無く一気にクリア出来ました。

特に天音ルート、蒔菜ルートはBADまで含めて◎

個人的には文句無しのルートだったけれど、それぞれ過去編、母親という強烈な存在以外にも、下品ネタや突っ込んだら負けの胡散臭さが魅力の軍事ネタが、シナリオを引っ張る原動力の1つとなっているので、この癖の強い両ネタが苦手な人だと評価が下がるかも。

このルートでは主人公が足枷から解放された後の描写もあるので、作品のまとめ的な意味でもどちらか(出来れば天音)をラストに持ってくると具合が良いと思う。


共通パートとはライターが違う、幸ルート、みちるルートは、話しの盛り上がりこそ少し弱いものの、共通とはまた違った魅力を持つヒロインがシナリオをグイグイと引っ張ってくれる。
特にみちる(の中の人)の日常演技が素晴らしい。


また、天音、蒔菜、幸については、個別ENDを迎えた後にシーン回想を観ると、初回プレイ時には違和感を覚えなかったさりげない会話や行動が、実は伏線だったという新たな発見が出来る再プレイの楽しみも。

ヒロイン以外の伏線では、主人公関係の多くが未回収のままだったのは残念だけど、ただ一姫については、仮に一姫が地下からのっそりと現れていたら、それはそれで白けていたかもしれないので判断が難しいところ。


ということで、総合すると90点クラスの出来。
個人的にライターの過去作パロが面白かったので+5点、たいくつな由美子ルートで-10点。


過去作のパロは、口が悪い下品なたぬき(蒔菜)、萌えキャラ気取りのエセツンデレ(みちる)、主をいびる従(幸、キアラ)、女性視点でのHシーン&エンディング(天音)等々。
細かいところでも、バイクや軽トラネタ、犬関係、山梨ネタ、暗証番号がスリーサイズ+体重鯖読み、マグロマン、ビットマップ、ウプスッ等、過去作をやっていると5点分ぐらいはニヤりと出来ると思う。


マイナス要素の由美子ルートに関しては、ライターの過去作の恋神でも感じたけれど、シナリオ云々の前に会話テキスト+シナリオ構成がつまらない。

過去編は個人的には良いと思ったけれど、特に日常の会話テキスト等は考えることを放棄し、よくあるテンプレテキストをどこかから持ってきて、ただ貼り付けているだけのような印象も。
他の4ルートのように多少違和感や突っ込みどころがあるシナリオでも、テキストや構成が良ければプレイヤーはその勢いに乗っかって騙されて楽しんでくれるとも思うので、次があるのなら子供騙しではなく、ちゃんと頭を使って考えた18禁の大人騙し的なテキストを希望したいです。