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GENKImorimoriさんのアサガオは夜を識らない。の長文感想

ユーザー
GENKImorimori
ゲーム
アサガオは夜を識らない。
ブランド
MELLOW
得点
83
参照数
307

一言コメント

“より” 深く、そして正しく評価されるべき、純粋な《アイ》がテーマの作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 私がこのゲームクリア後の興奮を鎮めるために向かった銭湯で、全裸のおっさんたちと繰り広げた沈黙のサウナバトルの間に無我夢中になって考えていたのは、メインシナリオを担当する垂花 (@tareka114) によるメッセージ (url: pic.twitter.com/pX8pCmkXAG) にある本作品のキーワード。『世界一濁りのない純粋な愛』と『万人受けしない作品』という二つの文言についてだったので、作品への総評や散りばめられた細かいネタを書いていく前に、まずはこれらについて紐解いていこうと思います(個人の考えも含めながら)

▫純粋な愛
 Wikipedia: 純愛 には『アダルトゲームでは、強制的な性行為を強調した作品を「陵辱系」というのに対し、恋愛要素を強調した作品を「純愛系」と呼ぶことがある。』とあるように、「プラトニックラブ(肉体関係なし)」や「邪心のない、ひたむきな愛」を “純愛” として自分の中では認識していたのですが、このゲームプレイ中に突如として立ちはだかってきた壁として「複数ヒロインとの恋愛感情のない性行為」「個人ルートなし」があり、これら二つからは物語の基軸が「アサガオと碧依の恋愛」であったことがやけに強調されているように感じてしまいました。
(私の考えでは愛情と性的欲求を切り離すのではなく、二人の愛の上にこそ相手を求める気持ちが成り立つというある種 “社会的秩序” のようなものを純愛としてしまっていた)(本作では「肉体関係→本当の恋愛感情の表出」という流れ)(「セックス=付き合う」ではないこと)
 また、ここで着目しなくてはならないのは「烏羽小鳥と皇白みこからの明確な好意とその結末」についてです。碧依の記憶喪失後、屋上での小鳥との “初めての” 性行為は彼女の禁断症状によるものなのか、はたまたヒトとしての本能的欲求からなのかは解りませんが、この初体験のシーンは上記のような「私の “純愛” に対する認識」を覆し、その後ヒロインと碧依の間にほんの少しでも妖艶な雰囲気が漂えば、私は碧依くんのセリフ「きっとセックスするんだろうな――」[sic]といったように、「またなのか…」と少しうんざりした気分にさせられてしまいました。結果として彼女たちの好きという気持ちが報われることはなく、碧依が二人のことを心から想っていなくとも彼の欲求を受け入れるという関係に落ち着きましたが、この辺りが後述の『万人受けする作品でないこと』(誰もが抱えている禁忌)にも関わってくるのかなぁと考えていました。(私の立場としては「彼女たちが最終的に幸せな状態であることが確認できたのでその点は大いに評価できますが、たとえどんな形であったとしても (ルート分岐, パラレル) 彼女たちの想いが報われて、最大限の幸せが碧依からもたらされるシーンが見たかったなぁ」というのが正直な感想でした)(しかし、それらを描いてしまうとアサガオが永遠に《アイ》を識ることができないんだよな…と考えると、誰が幸せになればいいのか?という無限ループに陥ってしまうので頭を抱えてしまいますが)
(この話題の主旨から外れていてかつ大変失礼なことを承知の上で書きますが、この構図は美少女ゲームで自慰行為をするプレイヤーにとって都合のいい関係として用意され、東条氏が『必須』とも称した一方通行の恋愛感情を伴う “エロ要素” はプレイヤーの存在を考慮してストーリーの一部として取り入れられ、また作品内でもその役割を果たしていたのだなぁと感じました。)
 一方、ラストシーンでアサガオがようやく識ることのできた夜《アイ》は、彼女の “在らざるべき欲求” をから距離を置く(両親のように) (刺されない) ことによって実を結ぶのではなく、碧依の「自分の命を捧げてもその人を愛する」というこれ以上ない愛情表現によって成就し、一切の濁りのないアサガオへの “純粋な愛” の形であったこと私に受け入れさせ、そして理解させてくれました!(小鳥とみこへの感情を生理的欲求とその解消として捉えるのであればの話ですが)


▫万人受けしない作品
 本作品における素晴しい独自性を挙げるとキリがなさそう(例: 東条サダヲの広く深すぎる活躍ぶり・卓越したCGデザインとそこに込められた“内省的な印象”・巧妙すぎる情景描写と心理描写を併せ持つシナリオ・美しくかつ安心できる歌声・夜《アイ》を識るアサガオ・碧依の夢《きおく》・キャラを取り巻く世界観, etc..)なのでやめておきますが、ここで私が取り上げたいのは『心の病とその葛藤』です。
 アサガオがもつ性目標倒錯の『死性愛好者』、小鳥が囚われている『麻薬依存症』、みこがもつパーソナリティ障害の『偏執病』…。ヒロイン全員が何らかの精神的な障碍を抱え、なおかつ罪を犯した少年少女として絶海の孤島にある “牢獄” に移送されているという状態から物語が始まりますが、それらの障碍が絡む “万人受けしない” 要素として挙げられるのは『足の骨と内側の肉が露出するヒロイン』や『あどけない少女の薬物の過剰投与による首吊り自殺の描写』, 『碧依の記憶』, 『みこと小鳥との肉体関係』, 『アサガオの性格』の五箇所であり、こういった鬱にも近い描写が特徴的であったと感じました(しゅき)












🌕本編の感想
ここからはプレイ当時の実況ツイート(削除申請には迅速に応じます)を引用しつつ、私が何とか気付くことのできた細かいネタについて纏めていきます。

▫グロ系ではない…?
 プレイ前に私は「タイトル画面にウサギさんの出血がありますが、グロではないことがシナリオライターとイラストレーターのお二人から念を押されているので少し安心しました」とツイートし、二人から張られた予防線に安心しきってしまっているのですが、このゲームのSAN値直送-地獄行きポイントは出血や身体的損傷などではなく、プレイヤーへの心理的なダメージであることに備えておくべきだったと後悔しています。(あてられやすい性格)
 物語において意味のある出血描写として『みこの落下(薔薇による目潰し)(キュルゥ), ヒロインの純潔保証書としての処女膜, 両親の死, 碧依の死』などがありましたが、殺傷《アイ》を目的とした流血のCGはウサギと主人公のみであったことは、アサガオの持つ死への渇望的な要素を弱めてしまったのではないか?と少しだけ振り返ってみましたが、相貌失認の要素がそれを隠す役割を担っていたようですね(もっと人が死んで登場人物たちに死が迫れば、アサガオの魅力を発揮できたのでは?という疑問)
(↓ 予防線url: )
まうめん「グロゲーではないです」(https://twitter.com/maumeso/status/1372915360056320004),
垂花「グロ系ではないです!❌」(https://twitter.com/tareka114/status/1372871323312066560)


▫システム面での特徴
 私が見慣れていなかっただけかもしれませんが、【射精カウント】ってなんぞ!?って思わずツッコんでしまいました…。どうやらこれは、主人公の射精タイミングに合わせてプレイヤーが気持ち良くなるための機能らしいですね(私は一度も使いませんでしたが)
 また2020年代以降の美少女ゲームにはBGVやエッチな効果音が搭載されていて、時代の進化 (ヒトの退化?) や、シモの面でも手厚いサポートを受け持っていくような体制にはどこか感動すら覚えてしまいました。
"pic.twitter.com/FGOSNkVLe5"


▫用いられた漢字
 タイトルにもある『識らない』や『翳り』などの常用外の漢字が用いられるどうしても「シナリオライター: 鈴鹿 美弥」を想起してしまうのですが、これは私が “殻ノ少女シリーズ” が好きスギナ所為ですかね…
(碧依が小鳥からの『ありがとう』の意味をシル場面には、通常の『知る』が用いられているのは、何か使い分けを為る基準が在ったんでしょうか? "pic.twitter.com/B15xbh1nm1")
 また、登場人物たちが抱えるショウガイに『障害』ではなく『障碍』という漢字を充てたことは、当時巻き起こっていた論争をそのまま汲んだ結果のように感じますね。
(個人的にはどれが正しくてどれが間違っている、なんてことはないと思います)(また、現在でも社会的な配慮がなされている『子供』or『子ども』という表記揺れには触れられていないようでしたが)
 ちなみにメインヒロインの名前が『アサガオ。小鳥。みこ』なのは、『カタカナ、漢字、ひらがな』で覚えやすさを重視したためのようです(公式ファンティアより)


▫伏字(“―――”)
 もうこれ怖すぎなんですけどっ!??
 機能としては、序盤に彼らが “犯罪者” であることを隠す役割を碧依の逃避反応が担った形でした。
しかし、これのおかげで私が勘違いしてしまったのは「金華島が何らかの精神病を持つ伝染病患者たち(またそれらから逃げるため)の隔離施設」であるという推測でした。自殺防止のための緑色の柵で囲われた屋上や、転落防止のために開閉部分がドアになっている窓、謎の海列車のみが繋がる絶海の孤島、碧依が見る『残骸』の夢 という条件が提示されたため勘違いしながらプレイしていたので、OP前の伏字大公開シーンはかなりのニヤケポイントに仕上がってました、かなり佳かったですありがとう。


▫ボイス・立ち絵のあり/なし
 このような作品とは全く関係のない「ある/なし」の差によって、登場人物たちの重要度が丸わかりになってしまうのは残念な点でした(如月夜葉or院長がいい例)。また、立ち絵と声のない主人公と摩耶茉莉姉妹が会話をすると、誰がセリフを喋ったのかが解らなくなってしまうのも個人的には難点でした。
(これらがないことに文句を言ってしまうのは私が比較的に若い世代の人間だからでしょうかね…)
"pic.twitter.com/Lxif51uCNA"


▫背景変化
 私が気付くことのできた小さな背景の変化は、『碧依の部屋の写真立ての有無』と『台風が来た際に雨風に怯えながら隅っこで固まって縮こまっているように見えるウサギ』の二つでしたが、よーく探せばまだ何処かにありそうですね
ウサギ可愛いかよ: pic.twitter.com/zd1Gxe75sx


▫タイトルロゴデザイン - 右下
 色付きのタイトル表記にある右下の緋色と碧色がぐちゃってなってるやつなんだこれ……
 血だまり?
"https://twitter.com/alterr_alter/status/1567848924660252674"


▫川での一句
“防壁と 監視カメラと 猫の声――”
作中で度々登場した野良猫の気配は、独房で狂ってしまった後遺症による幻聴でしたね(誰が気づくねん)
夜葉がこれを利用しているシーンもありましたが、これはアサガオへの恋を裏付ける証拠になるんでしょうか


▫ 「“”」(ダブルクォーテーション)で囲まれた専門用語
垂花せんせーによる心理学講義が開催されるたびに、定義がなかった元ネタを一生懸命調べたので一致したものだけを以下にまとめます
 エピソード記憶:小鳥「記憶がなくても、感情に刻まれてるんだ」
 社会的行動障害:緑華(例えば前頭葉損傷と反社会行動についての研究論文が存在する。)
 馴化ㅤㅤㅤㅤㅤ:緑華(学習した無意識は徐々に『慣れ』を生む。)
 精神分析理論ㅤ:緑華「“無意識” に無理をさせてはいけないよ。」
 ヤングケアラー:緑華「どちらもネグレクトの傾向だね。君は自分で生きなければならなかった。」
 集団心理ㅤㅤㅤ:夜葉「(前略)自己中心的な生存本能……『実体のない悪意』に従わざるを得ないんだ」
 働きアリの法則:夜葉「それが怠け蟻、もしくは『革命者』」


▫笑顔への反応まとめ
 ツイートツリー: https://twitter.com/alterr_alter/status/1569947637209772038
(仕事用の理性的な作り物の笑みとか言ってても、たまに自然な笑みを見せてくれる緑華が好きすぎる)(pov:魅力的だけど攻略不可)(碧依くんの笑顔が袋叩きだったのも好き)


▫熱帯魚の例
 作中では、この島のことを一貫して『水槽(アクアリウム)』と例えられていましたね。夏なので金魚でしょうか。
 彼らは成魚が作った法律なんて言う縛りからあぶれて、適正層すら泳ぐことができず、この “蠱毒” のような水槽で薬浴されている。みたいな雰囲気がとても好き。


▫落差?
 みこがこういった普通の少女みたいな年相応の「恋の相談」をすることによって、彼女が取り乱してしまうシーンの恐怖が増していたような気がしますね。
"pic.twitter.com/QGeIlqIMiY"

▫んでもドヤみこは純粋に可愛い
"pic.twitter.com/YuRTCroub1"


▫両親からのプレゼント⌚
 時計にあるロゴ、筆記体で “RAILFLOW”? それとも “MELLOW”?
(東条サダヲさんが手掛けた楽曲には『Railway』という素晴らしいアルバムがありますが、その文字列とは少しだけ違うように見えます)
"pic.twitter.com/eebez798zk"


▫誕生日会への私の反応(ツイート引用)
 ああ、こういうこともできるのかこのゲーム…(感嘆)
 消えたナイフや、怪しさ満載の男性教諭、姿が見えない猫……そんなことばかり気にしていたので、如月夜葉が猫を生け捕りで解体しながら『今日の講義は生物学ですょ~』とか言って血祭りの儀式でも始めるのかと思ってたんですが、私は勘ぐりすぎていたようです。


▫囚人はケーキを正しく切れません🍰
 これが決して『不器用なヒロイン可愛い~!!なイベント』ではないことは、私を恐怖のどん底に叩き落しました。叩き落したんですが、あの真ん中の小さすぎる部分が緑華に渡ったことについて考えるのは唯一の諧謔と言ってもいいでしょうね…w
"pic.twitter.com/BEx5yGzPTX"


▫作り込み要素
 ここの緑華の音声、彼女がタバコを加えているセリフが担当声優の『口に何かを加えた状態で発せられる声』によって再現されているのは非常に細かい指示です。東条さんによるものでしょうか。
"pic.twitter.com/fdPoKNdsrm"


▫OP前(ツイート引用)
私がこのシーンのプレイ当時(2022年9月13日午前1時3分)、
この瞬間のためだけに今の今まで私の目に絶対に入らないように心掛けていたオープニングテーマ(どれだけ美しかろうとも本編内で見ないと意味がないため)や、夜に咲くアサガオに対して臨場感を演出するために、部屋の電気を消してプレイしていたことをここに記します
"pic.twitter.com/EJyu8aX3j9"


▫狂おしいほど美しい情景描写 まとめ
 “始まりの予感”ㅤㅤ:pic.twitter.com/nShQ3FCoWN
 “拉げた死体と少女”:pic.twitter.com/C5pl5SBeGv
 “厄介者の紫煙”ㅤㅤ:pic.twitter.com/bF6g8IGlTa
 “天気雨”ㅤㅤㅤㅤㅤ:pic.twitter.com/WvaHU2dRkf
(“台風の襲来” = 大荒れ模様, 暴動)


▫rip キュルゥ🐇
名前の由来は “平成ウルトラセブン” のキュルゥ星人から?
"pic.twitter.com/fKmoQCAQKc"


▫OP
ここではyoutubeに公開されている動画との変更点をまとめます
(yt link: https://www.youtube.com/watch?v=xnxxue1qQgs)
・『キュルゥの死の流血表現』
・『小鳥とアサガオの下着着用』
ㅤ(↑ ここで白い光を用いなかったのは “ペトリコール” からの反省点でしょうか、規約違反による)(だとしても海に囲まれた孤島、シリアスな雰囲気にサビで「おっぱいばーん!!」してくれたのはエロへの強いこだわりを感じてしまいますね。opには18禁要素を!!!という点において)
・ 『みことのお風呂』
ㅤ(↑ みこはテンポを少しずらして、ズームアウトで全体像を映さないように工夫されていました)
・『僕達は皆――罪人《つみびと》なんだ。』(ytネタバレ防止表記は『●●なんだ。』)


▫みこによる泣き声と、わずかな言葉(キュルゥの死)
 みこが自身の偏執病を碧依たちに明かすシーンで、彼女があの朝に取った行動と、如月夜葉による行動がごちゃ混ぜになってしまっていました。てっきり、キュルゥの死体発見場所の工作がみこによって行われたものだと勘違いし、『果たして彼女は先に穴を埋めただろうか?』という命題に頭を抱えてしまっていたんですが、夜葉先生があっさり自分の行動を認めたのでなんじゃらほいってなってしまった。みこちゃん流石すぎる。
"考察(笑)ツイート: https://twitter.com/alterr_alter/status/1569756265794138114?s=20&t=_uxNj4QQ7RCLY63gLz7VWg"


▫忘れさせて…
 みこが独占欲解消のために、キュルゥの死を引き合いに出してセックスするシーンで私が考えていたことは「もう査察きちゃうってぇ!!」「院長にバレるよ!!?」の二つでした。みこちゃん、策士です。


▫キュルウの事件の真相
「双子=入れ替わり」トリックはもう定番ですね。
 ここで私が抱いた疑問は「伊原摩耶が姉と性交渉を行っていたことが咎められた理由は?」であり、何故彼女たちがこの牢獄に来ることになったのか、双子姉妹百合えっちが発端だったのか?と考え込んでしまいました。
(緑華が彼女たちの性交渉について「まだ一度もない」と大勢の目の前で性の事情を明らかにする場面がありますが、この域までのプライバシーを把握していると考えると、碧依くんの青姦とか諸々もバレてそう…ってなるのがちょっと面白いですね)
(「青少年の登場人物全員が囚人である」という要素が薄まってしまっている原因には、彼らのバックグラウンドについての説明がなされなかったことにあったと感じています)


▫碧依の気持ちを知りたいみこの気持ちを理解できない鈍感系記憶喪失主人公
 記憶喪失により童貞へと返り咲いたが、現在二人と肉体関係を持つ。
(緑華の考えが及んでない気がするポイントとして、この3寮が男女混合であったことが挙げられるような気がします。アンタたちっ、避妊だけはしなさいよ?!)
"pic.twitter.com/vn840oVQoi"
 それと屋上エチチでのシーン、『自傷行為と、過去の虐待による二人のptsd、加虐性愛、独占欲』と気持ちいい要素が沢山あったのがとても妖艶でしたね。垂花さんが言っていた、“ダウナーな悦楽” とは正にこのシーンのような気がします。
"pic.twitter.com/3SdTUOQ41Z"
(↑ これは?)


▫過去の自分
 碧依とアサガオの最初のえちちシーン。碧依が過去の記憶を失ったまま快楽と愛情を思い出そうとするシーンで彼は淡い『悔しさ』を帯びていますが、これは実質「セルフNTR」であり非常に高度な性癖が繰り出されたことに感心してしまいました。
 夢《きおく》を取り戻したことを祝福するような挿入歌、 “Rained Tonight” へ…(この歌が作中で一番好きです)(フルの大サビは「彼女と出掛けたあの雨の日」を思い出させる素晴らしい仕上りになっていました…)
(この匂いこそが “Petrichor”…ってコト!!?)(『2045、月より。』においても傘を持ったキービジュが印象的でしたね)


▫葩氷くんが好きなブランド
『DINER SEA』
(元ネタ提供 求む)


▫蟲毒(wikiより引用)🐜🐛🐝🐞→☠
 「百虫を同じ容器に入れて共食いさせ、勝ち残ったものを神霊とする。」
 「この毒を採取して飲食物に混ぜて人に害を与え、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする」
 「人がこの毒に当たると一定期間のうちにその人は大抵死ぬ」
全く良いことがない呪術で草も生えない…。ここらへんの知識を持っている公務員の夜葉はさすがってことなんでしょうか。
(インテリゲーでよく囁かれる「ライターの知識披露」っぽさをあまり感じなかったのは、その配役と、作中でのその知識の活かされ方があったでしょうか)(緑華のドヤ顔は少女っぽさとして何とか受け入れられましたが: pic.twitter.com/uELRJKdEWN)


▫小鳥の依存症の “完治” とは一体どの状態を指すの?
これは私の知識不足だったのかもしれませんが、何故小鳥が投薬 “療法” を避けるのかが分かりませんでした。
 Q.病を治すための投薬なんじゃないの???
 A. 依存症対策全国センターHP: https://ncasa-japan.jp/you-do/treatment-method/drug-treatment-for-drug-addiction によると、『薬物依存症患者さんの治療では、乱用薬物の影響で生じた幻覚や妄想、睡眠障害の治療に対して薬物療法を行うことがあり、一定の効果があります。しかし、(中略)薬物依存症の本質的な病態そのものに対する薬物療法については、少なくともわが国ではほとんど実施されていません。』とある。
 つまり、小鳥にとって根本的な解決として課題となるのは、“薬物依存症からの完全な脱却” であり、薬物をやめるために薬に頼ることは “完治” とは言えない、ということらしいです。


▫これには流石のもこみちもSMH (頭を振る)
 オリーブオイルぱいずり~~(色彩を考えると蜂蜜でもありだったかなぁと)
 やっちゃいけないことをやる背徳部門ではみこが圧倒的でしたが、いい意味でまともなセックスが一度もなかったような気もしますね(何かしらのシコりを残してくれたように感じています。痣とか、キュルゥとか、独占欲とか、アサガオの影とか…)
"pic.twitter.com/knT8JIMyiY"


▫アサガオの面談
 人間扱いをしない独房の存在。
 緑華はアサガオの両親にこの事実をあえて伝えず、「刑務所における精神治療の現実」について触れながら院長のやり方が現在の精神科医療保険福祉の問題点と似通っていることを示唆しました
(作中で行われた異常な “洗脳” は、果たしてフィクションなのか?)(実際にある社会問題については最後の総評にて記述)


▫上げて落とす描写
 アサガオと温厚な両親との面会シーンの終わり、これはかなり私の心に効きました。
 彼女が持つ障碍によって引き起こされた不幸はこのシーンが最大級で、「愛がゆえに母親の手をフォークで刺そうとしてしまう愛しい娘」という描写はかなり残酷で、とても佳かったです……。
(みこの滑落もエグい)(碧依の死は彼女にとって “これ以上ない幸せ” と捉えられていましたが)


▫このゲームで最も美しいCG✨
"pic.twitter.com/0X872WCgTW"
(あたし:"𝘰𝘯𝘦 𝘰𝘧 𝘵𝘩𝘦 𝙢𝙤𝙨𝙩 𝙗𝙚𝙖𝙪𝙩𝙞𝙛𝙪𝙡 𝘾𝙂 𝘪'𝘷𝘦 𝘦𝘷𝘦𝘳 𝘴𝘦𝘦𝘯 𝘣𝘦𝘧𝘰𝘳𝘦"(早口))


▫緑華パパ
 緑華の生い立ちや家庭環境には触れられませんでしたが、彼女は父親の意思を継いでることがこのシーンで明かされましたね。院長との対立構造や “親の七光り” という表記から、彼女についてより深く知りたいという気持ちをこちら側に芽生えさせてくれました。
"pic.twitter.com/KHGp2Gi4nc"


▫伏線回収率の高さ
 この比率は、作品へのプレイヤーの理解度と作品自体の完成度(完結できているか)に直結する要素だと考えているので、多くの謎の答えが(主に夜葉の口から)示されたことは高く評価できるポイントでした。
(一度その事象を匂わせてから、「やっぱりそうだったのか!」とプレイヤーのことを気持ちよくさせるための伏線もかなり効果的でした)
"pic.twitter.com/ebjODXyhBV"


▫花言葉
 葩氷によって白・青・紫の朝顔の花言葉が紹介され、最後にアサガオが「赤の朝顔、なんて意味?」と碧依に訊ねるシーンは、意図的にプレイヤーに対して花言葉を検索させることを誘っているように感じました(こういうの好きです)
  赤の朝顔の花言葉は「儚い情熱的な《アイ》」


▫心理描写
碧依
「人間の感覚は、なんて美しいんだろう。」
(物理的な干渉を超えて、心が一つに溶け合っているようで。)
"pic.twitter.com/4F6Da0uE9x"
彼の心からの愛情。少年らしい感性を取り戻して快楽に浸るシーンは、私にフラストレーションを抱かせるほど魅力的で、野性的でした。


▫音声へのこだわり
 先のタバコを加えた緑華のセリフもそうでしたが、環境音や効果音の丁寧さが本作を陰ながら支えていたのだと感じました。
(木間さんの自殺描写の縄が引き締まる音や、台風襲来時の雨風の音(bgm: genuinelyとのシナジーが最高にchill)、高台に吹く心地いい風の音 など)


▫木間の死で奏楽を思い出し、興奮しているアサガオ
 ここの「ツタが這うような」というフェラチオの明喩…
 もしここでアサガオの「ツルが這って」いたら私も興奮のあまりベランダから飛び降りてしまうところでした、危ない…
"pic.twitter.com/5JBnv8LOzv"


▫首絞めつけないよーうに ♪
"pic.twitter.com/wPm8YNcpyp"
(みこから感じた安心感の正体)


▫心理描写 その2
 “みこへの夜《アイ》”:pic.twitter.com/Tgn9fJnqLT
(ヒロイン瀕死とかいうあまりにも絶望的な状況だったので、選択肢をミスったと思っているときのツイート)


▫小鳥、好きです
「もー……言いかた……っ」
(↑ 少し照れているのが最高に可愛い好き💯)
"pic.twitter.com/iWuByaK68l"
(『緊迫した状況下で発せられる場違いとも思える冗談はヒロインたちの魅力を最大限に引き出す』という理論を誰か早く科学的に証明してくださいお願いします)


▫如月夜葉という男
 こいつについては、あまり理解できませんでした…(それくらい常軌を逸しているということ?)
 一体何故、アサガオに依存(恋)しちゃったのか。薬品の管理や、鍵の番号を知っている立場であるのに、少年少女だけに限らず教員すらも自由を手にできてしまっているのか (ましてや薬物の窃盗)。
 また夜葉にとっての「最悪な結末」や緑華の言う「正真正銘の異常者である碧依」という表現が、“碧依の自殺” を指しているのも最高に皮肉が利いていて面白いポイントでしたね。夜葉が正しいとする『死性愛』によって彼女の《アイ》が叶い、その症状もすっかり収まってしまったのですから。


▫止まった時計
 演出!!
"pic.twitter.com/69Dgvo34io"


▫選択肢ロック
 物語序盤の「緋色アサガオには近づかない方がいい」という指示に従っておくと【刺される】というTrue Endの選択肢にロックが掛かり、『Normal End → True End』という正しい順序で読むことができるのは佳かったですね。
もしかしてオラオラですかーッ!?
"pic.twitter.com/k8zd9nwERW"


▫Ep🌹💙
- 緑華の部下の美人ナース
↑ スポーツ医療の道に進んだみこ?(おそらく違う)
-花束
"pic.twitter.com/IGqEIeP8pN"
下 カーベラ(赤): 花言葉「神秘の愛, 前向き, 限りなき挑戦」
中央 バラ(赤)ㅤ: 花言葉「情熱, 愛情, あなたを《アイ》しています」
上 ???(青)ㅤ: 花言葉「???」
(最初はソライロアサガオかなぁと思ったんですが「曜白(白い模様)」が見られず、花弁がラッパ型でないことから、変形アサガオなのか?とも考えたんですけど、この花ってなんですかブルーローズですかまうめんさん)













🌕総評
ここではこのゲームの裏テーマと、強すぎる楽曲、各ヒロインの魅力について纏めます

▫背景にある社会問題
 両親との面談の際、緑華がアサガオの両親にあえて伝えなかった事実として『アサガオの症状には快復の見込みがないこと』, 『刑務所における精神治療の現実』の二つがありましたが前者は碧依によって救済されたので、ここでは後者について少し言及したいと思います。
 医療観察法やその運用における問題点、精神科医療保険福祉の問題、司法と精神医学の関係を全体的に見渡すことのできる情報サイト『医療観察法.NET』は、「留置場, 拘置所, 刑務所などでは、適切な精神科医療が提供されていない」として、刑事手続き上に浮かび上がる様々な問題点を指摘しています(引用元: http://www.kansatuhou.net/index.html)。サイト内では「起訴前鑑定などの司法制度の不備」「当事者や家族の社会的孤立(後述)」、そして何よりも「精神障害を持つ人が社会で “普通に生きることの難しさ”(この作品の根底にあるもの)」が現在の精神科医療保険福祉が抱える問題であるとしています。
(いまの私たちに必要なのは問題意識を持つということ以前に、まずこういった現状を知ることだと強く感じています)
 また緑華は『彼等の両親の多くは縁を切る』ことにも触れ、アサガオの温厚な両親と、加害者家族の一般的な対応との差についてもプレイヤーに意識させています。この国では一度でも罪を犯してしまえば、 “本人の社会復帰の意思” に関わらず、社会からの厳しい目や職業選択の制約によって、傷ついた経歴を一生背負いながら生き辛い世の中を歩むこととなります。これは加害者家族でも同様で、『あの人の子どもが犯罪者だから…』『あの親も犯罪者に違いない』といったステレオタイプに苛まれ、一つの犯罪によって人生が崩壊してしまうことは珍しくありません。
(みことその父親との関係)(私がこれを知ったのは東野圭吾の『手紙』)


▫BGM, 使用された楽曲について(東条さん、心から尊敬します)
・とても好きだったもの
『雨が降った夜に』(“Rainded Tonight”)(タイトル画面: “Tonight”)(優勝✨)
『genuinely』(チル)
『アサーション』(the Broken Record Technique)
『夢現』(ゆめうつつ)
・特別審査員賞
『alone with you』(エチチシーンに使用, イントロが怖くてめっちゃ好き)


▫メインヒロイン『緋色アサガオ』について
 彼女の最大の魅力はその『死性愛』という特性にあり、夜《アイ》に花を咲かせるという碧依の自己犠牲によってその障碍を乗り越え、「新しい挑戦」(子育て) をしていく姿までが描かれていました。
 しかし、この障碍をトリックとして隠させるための『子ども返り』が、アサガオの性格に影響を与えすぎていたのではないかとも感じてしまいました(これを裏付けるために独房での精神崩壊をより丁寧に描くべきだった?)。
 おそらく彼女のIQは70以下であり、日記のミミズの這ったような字や、ケーキの切り分けのような論理的思考力の欠如、その幼い言葉遣いや口調によって、子供返りではなく『彼女は精神遅滞…?』と私に勘違いさせるほどであったことから、それらをこの作品の独自性と捉えるか、また惜しかった点とするのかは少し曖昧なところです。
 蛇足: もしこうであれば彼女の魅力がより一層発揮できたのではないかという提案として、『みこや小鳥のように病状以外では一般的な会話が可能で、人格水準を著しく低下をさせないこと(また症状に明確な寛解期を持たせる)』と『二重人格を併発させる』の二つがあり、独房入り前の “本来の彼女” を廃ビル以外でも見ることができれば佳かったのかなと感じました。
(しかし、“症状が快復した彼女” をEpまでプレイヤーに明かさなかったことは、彼女の精神的な成長への感動を高めてくれました)


▫みこ or 小鳥
 よくもまあこんなに難しいヒロイン選択肢を総評の最後に持ってきたなぁと自分に呆れてしまいますが、少し記述します。
結論から申し上げますと私は全ヒロインの中では『烏羽小鳥』が一番が好きで、彼女のギャルってかお姉ちゃん属性/包容力には目を見張るものがありました。小鳥がみこと区別される点として「過去の罪への決着」「名前の由来」「将来の夢」の三つがあり、小鳥の場合はどの要素をとっても丁寧に描かれていて、何より話の筋が通っていた(親→ドラッグ→理想の教師→碧依との出会い→恋→仁科と向き合う→教師になる夢を叶える)(←完璧✨)。
 一方、みこの過去としては『偏執病』による教唆犯であったことが明かされましたが、その事件の内容と顛末について語られることはありませんでした。最終的には、碧依からの許しや本音を言うことの素直さ、父親に “自供” をさせて見限ることで新しい生活を手に入れることができたようですが、片足に後遺症を残してかつ両親に頼らない生活を送りながらスポーツ医療の道に進んだみこには 絶 対 に 幸 せ に なってほしいですね。(みこの罪は彼女の母親に関することだったんでしょうか?)










私がもし仮に「尊敬する人って、誰??」と誰かに訊かれた場合には、「東条サダヲさんですかねぇ……」と答えるようにします。
垂花さんのことはこの作品で知ったのですが “カサブランカの蕾” の制作にも関わってらっしゃったんですね、未プレイ未所持なんですがプレイ前の作品への印象として「発売後に知名度が化けた」があるので、一度触れてみたいかもです。(『ゴールデンアワー』も)(まずは発売予定の『2045、月より。』の購入が先決でしょうか)

お疲れさまでした、読んでいてとっても面白い作品をありがとうございました!