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GENKImorimoriさんのソレヨリノ前奏詩の長文感想

ユーザー
GENKImorimori
ゲーム
ソレヨリノ前奏詩
ブランド
minori
得点
75
参照数
199

一言コメント

夏、青春、過去、生暖かい海風!!!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


ㅤminoriさん, 対戦ありがとうございましたー!
ㅤジャンル: インタラクティブ・ノベル 🗣️






◇ 総評
▫物語のような作品
・推敲された文章
ㅤプレイ時の私が「いや、それはどうしてそうなっちゃうの……」と少しでも疑問を抱いてしまったその次の文章には、ちょうどそれを説明するかのような内省が必ず挿入されていたこと。例えば、はるかとの廃工場での野外セックスでは、「花畑の上で彼女に覆いかぶさったので花を潰した」→「だけど、草花は手折られるために美しく咲いて強くなる」という補助のような文章が展開されています。これはまるで別の作者からの “添削” のようであり、この物語が物語であることをプレイヤーに意識させていたようにすら感じました。また、こういった手法は『はるか編』に限った話ではなく、全ヒロインパートで見受けられます。
ㅤ物語の中に登場人物が存在していて、そこには確かな物語性があるのですが、作品のテーマがテーマなだけに “青春を経験した登場人物” と “物語(star-crossed)を書いた主人公”、“本作(ソレヨリノ)を描いた筆者” とを重ね合わせてしまう “読者/プレイヤー” というある種のメタフィクションが密かに成立していたことが一番の魅力のように感じられます。
(もしこの要素が意図されていなかったのであれば、大変失礼な指摘になってしまっているので申し訳ないですが――)

・画面内に【宮坂 終】が登場する場面
ㅤ彼の後ろ姿立ち絵が描かれるシーンでは、印象的な対話が演出されていたように感じました。これぞまさに「インタラクティブノベル…!」という感じです。普段は主人公の視点にいるはずのプレイヤーが、シーンによっては “対話” を意識させるために幽体離脱のように一歩下がった位置から終の背中を見ています。これをあえて悪く言うのであれば、プレイヤー向けのコンテンツと彼らが描いた青春との差別化です。
(永遠との屋上のシーン, 公園や灯台のシーンなど)
(この演出に気付けないほど、両方のバランスが取れていたこと)
(ところで、イントロシーンでつり革につかまっているスーツ姿の男性は一体誰ですか?)
ㅤ"pic.twitter.com/yakphoMIaX"

・ “はるかのヒーロー”
ㅤ『はるか編』では作中作への読者(世間)の期待と、プレイヤーの想像を重ねるという高次な技法が展開されました。先に述べたように、物語が物語であることを意識させる演出の一つだと考えることができます。はるかによる “嘘” に対して “メタ隠し放題” な状態だったような気がしなくもないですが、『真響編』と『はるか編』を再構成したような『永遠編』の序盤もなかなかに難しいです。
ㅤ【ㅤ終ㅤ】ㅤ
ㅤㅤ(きっと、俺の小説の読者は、姫野をモデルにしたヒロインとの恋愛成就を期待している人が大多数だ。)
ㅤㅤ「さらなる続編には『つまらない』という言葉がなかった」
ㅤㅤㅤ↑ここで私は、真響による達観したようなセリフ「才能があるってのも大変だね」を作者に投げかけます、「多種多様である」。
ㅤㅤㅤ"pic.twitter.com/erXUhXeQoy"
ㅤㅤㅤ"pic.twitter.com/DQVpjgo5eB"
(参照: 作品への共感のxyプロット図。本作の場合は、y軸「作者への共感」すらフィクションに落とし込まれている: pic.twitter.com/5cwPeYcNRt)



▫トリックスター: 天海 静 🐻
ㅤストーリーテラーである終を常に混乱させていた静先輩との会話はまるで要領を得ていないように思えますが、彼女は時に「静」と「動」を使い分けるという性質を持っています。
・世界平和についての見解 🌏
ㅤ「感情が読める人」が近くにいる場合の対応の差について。はるかはその人物を神として崇拝して “汚れた世界” を正そうと(revolutionary act)しますが、静先輩は “もっと身近な世界” を掻き乱してウェイトレスにコカ・コーラを注文します(これによって、彼らの “デッド・エンド” は避けられました)。
ㅤ"pic.twitter.com/2ooDOmmVfQ"
・ヒーローについての見解 🦸‍♀️
ㅤ「世界の命運を背負ったヒーロー」という冗談。結果的に、『真響編』における終は “みんなのヒーロー” にはならずに “真響だけのヒーロー” になりました。序盤における彼女の言動はまるで、すべてを知っている神のようです。
・青春についての見解 ☁️꙳.✨
ㅤ“青春” とは今じゃない未来を求める力、可能性に溢れた季節。“青春” はいつでも、どこでも、旅をしているようなもの。『はるか編』が “痴話げんか” であったように、彼らはあの夏で “青春” をした。
(作品HP「MENU?」の左上には「MENU!」と叫んでいる静パイセンがいます)
(minori調べによると「ノーテンキキャラは人気が出ない」ようですが、人のために微笑むことができ、その理由を自覚している人は私の最も好きなパーソナリティの 1 つです)


▫光り輝く未来(あした)とは?
ㅤminori, 鏡遊と御影のいう “輝かしい未来” について、それが何なのかいつも振出しに戻って考え直してしまいます。彼らはアフターストーリーを滅多に描かないので、私にはそれが想像できません……
(私の理解度と読み込みが足りない気がしています。「Q.はるかと真響の “未来” は、一体何処を終着点としたのか?」)


▫作品の繋がり「乗り換え」
ㅤただ流し読むだけでは決して理解できないであろう「電車」と「乗り換え」(ヒロインパートの幕間)、「路線」(パッケージの表紙) というキーワード。これを読み解くのはとても難しそうなので他の人の感想を読んでその感想を書くことにします。不幸なことに、私には解りませんでした。(戯画『アオナツライン』のようなもの?)
hint: 白いワンピースの黒髪美少女, 白い本, 「乗り換え」

……批評空間に投稿されている感想を全て読んだんですが、oku_bswaさんのminoriの外側(他作品や制作者について)を指摘した感想と、kyouraishiさんのおしっこSEの短さへの指摘(「ジョロロロロロっ、ジョーっ、ジョ、ちょろろろろ……」か「シャー、ちょぼぼぼぼ…」みたいなもので次回以降はお願いしたいところです。)しか頭に残りませんでした。
 結局のところ、作中の “電車” が何を意味していたのかというプロットは作者の頭の中で眠ったままです。

▫kyouraishiさんの感想
ㅤ"https://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=20817&uid=kyouraishi"
▫oku_bswaさんの感想
ㅤ"https://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/memo.php?game=20817&uid=oku_bswa"

















以下、本編についての感想です。
◇ 選択肢前まで~
▫愛すべき幼なじみ
ㅤシステム設定のサンプルテキストには「見えっぱなしじゃ、興奮しないよ!」というぶっ壊れたセリフがあるのですが、これは次の真響の発言によるものでした。最高すぎます、オタク系幼なじみキャラ……
【真ㅤ響】
ㅤ「だいたい、あのアニメ、パンツ見せておけばいいっていうのが致命的に浅はか。たまに見えるからいいんだよね。見えっぱなしじゃ、興奮しないよ!」
ㅤ「パンツの色も白ばっかりだし!ㅤメインキャラのパンツくらい変化をつけろって話よね」

▫まさかっ…こいつもエンパシーを……!?
ㅤ作品のコンセプトにもなりえる設定に対して、主人公が冗談を絡める描写。「人の心が読める」という日常を揺るがしかねない能力を “慣習” (何の変哲もない日常)として会話に溶け込ませることによって、その要素を丁重に扱いすぎず、プレイヤーを飽きさせないようにしていました。
(永遠には「壁に触れられたことが微かに判る」というパッシブスキルがありましたが、はるかと真響には能力が全くないこと)
(「周囲と同じように、他と少しずつ変わっている、“ 何の変哲もない ” 彼ら。」――作品概要ヨリ)
ㅤ"pic.twitter.com/DlA8KM9cxt"

▫共感能力の制限
ㅤ①10メートルの距離
ㅤ②身体が接している相手からは伝わらない
ㅤ③(自分自身と)永遠の心だけはわからない
(①について。イントロシーンや人通りの多さによって感情の “波” に打たれてしまうという終の苦悩を描いたものでしたが、作品内で距離の制限が活用されていたのはあるワンシーンのみでした。それは終の能力を熟知している真響が、自身の感情を読ませないためにエンパシーの射程範囲外に逃げるシーンで、彼女の敬礼立ち絵が初めて用いられたシーンです 🫡: pic.twitter.com/IXkKW5T9rU)
(②について。ホームページの作品概要にある「触れ合うこと」が、作品上で印象的に用いられていた手を繋いでいるCGによって表現されていました。また、この制限は “情事” (身体的接触を伴う性交渉)とも関連がありますが、「心とは何か? 」という疑問を現象として捉えなおした要素であり、“終わり” と “始まり” を繋ぎとめる役割を担っていました。: pic.twitter.com/xAnjBmotG3)
(???「きっと、肉体同士の接触がノイズになって感情を阻害してるのよ!」)
(雑談として: コロナ禍における『リモート or 対面』のようなもの。普段、人間が意識的に感じ取ろうとする条件ではないですが、対面の場合は温度(室温, 体温, 動作による発熱など), 湿度(乾燥, 風, 気圧), 匂い(人やモノが発する), 音(電子信号でない波)など、直接触れ合うことでしか認識できない感覚が存在している)
(③について。後述の『永遠編』を参照してください。――と簡単に締めくくろうと思っていたのですが、『永遠編』について書いてみるとあまりにもありのままだったので、ここに少しだけ追記します。)
(終による「自分自身のことはわからない」は青春期の発達課題なのでエリクソンさんのほうが詳しそうですが、作品にこれを当てはめると、終は “他人を想う誠実さ” を理解したように感じられました。嘘(やさしさ)にしても、相手を傷つけることにしても、意思を尊重せずに投射(転嫁)をすべきではないことを学びました 🫂)

▫意図された並び順(𝘧𝘰𝘳 𝘒𝘺𝘰𝘯𝘺𝘶𝘶-𝘮𝘶𝘳𝘢 𝘷𝘪𝘭𝘭𝘢𝘨𝘦𝘳𝘴)
ㅤ “D < E < F”
(登場人物が横を向いた立ち絵が3つ並ぶシーン, 真響がDカップ、静パイセンがEカップ、一番手前のマキ先生がFカップです)
ㅤ"pic.twitter.com/klgFB8QjFj"

▫背景が揺らぐ演出(⇚ ⇖ ⇑ ⇗)
ㅤ作品内に隠されている場面演出の一つには『背景や場面が回転する』という手法がありました。その中でも「いや、これは揺らぎすぎだろ…」と感じさせてくれたのは、永遠が灯台を見つめているシーンで、プレイヤーがモニターに対して首を90°左に傾ける必要がありました。
ㅤ"pic.twitter.com/FZJduMy9fb"(灯台)
ㅤ"pic.twitter.com/0GPivrsDIm" (下校時の白線)

▫“屋上オナニー事件”
ㅤマキさんのうろたえ立ち絵がとっても可愛らしかったですね――
(彼女へと繋がる路線はありません)
(感想を読んでいると「マキ推し」が結構いましたけど、これ以上乗り換えてしまうの私の精神が崩壊します)
・荒ぶる乙女の表現まとめ
ㅤㅤ「獲物を狙う野獣みたいな感情」(終)
ㅤㅤ「一見、清廉な美人だが実は性欲過多。」(公式サイト)
ㅤㅤ(純 粋 な 欲 望 : pic.twitter.com/atyINoJbWe)

▫勝手に人の心を読むな 💢(永遠)
ㅤ先の『▫こいつもエンパシーをッ…!?』でも述べた通り、永遠は “心の壁に触れられたような感覚” を検知することができるようですが、彼女がこれを使って終の考えていることを直接聴いているかのような描写がなされます。これは彼女なりの仕返しであり、心が読まれてしまうという(はるか編で強調されていたような)不気味さを終やプレイヤーに体験させていました。一度目の再会後から彼女が終の感情を理解していたと考えると色々複雑ですが、まるで脳内だけでやり取りされる会話のようで、彼女の性格が醸し出した素敵なやり取りに仕上がっていました。
ㅤ"pic.twitter.com/0SpmpK705w"

▫昔の関係, 言えないこと
ㅤ社会的な三次元男子: 真響(二次元女子)が、場の空気を読んで傷ついてしまうシーン。彼女だけのヒーローになれるのは終しかいませんでしたが、ストーリーの結末は彼女には収束しませんでした。彼女が永遠と終の過去を話したくない理由は一つではないはずです。
ㅤㅤ真響は、にこにこ笑って説明を始める。
ㅤㅤ真響は傷ついて。
ㅤㅤ僕は真響が傷ついたことに気づいて。
ㅤㅤ真響は――僕が気づいたってことに気づいてる。

▫二度目のプロローグ
ㅤ終が永遠と付き合うことになった後、わたしは頭を抱えながら彼らの動向を見守っていました。“昔のまま” に生きる女の子や、異常性癖を抑えられない女の子に対して強い懸念を持ち、(プレイヤーに選択の余地がないのは当然のことのようですが、)「恋というはじまり」「人を好きになる者」から生まれる輝きは、まだあの時点では描写されていないように感じていました。
(はるかの処女喪失のような自己犠牲 ← 永遠が持つ葛藤による)
(心地よさ, 恋, 好意の結晶。しかし、私たちは彼女の表情を窺い知ることはできません)
ㅤㅤ不意に僕は――
ㅤㅤその笑顔を永遠のものにしたい――
ㅤㅤそんなことを思って。
ㅤㅤ永遠の両肩を抱いて、キスするために。
ㅤㅤ彼女に向って手を伸ばした――

▫BGVの表記
ㅤ地の文の中に「効果音」やヒロインによる「セリフ」「喘ぎ声」を設定しようとすると、バックログには【???】という謎の人物がそのセリフを喋ったかのように表現されてしまっていました。ここだけを読むと、セックス中に知らない人がいきなりセックス実況を始めてしまっているようです。
【???】
ㅤ「くちゅくちゅ、とやらしい音をたてながら陰茎を咥える永遠のあそこは、蜜を垂らしている」(ナレーション風に)
ㅤ"pic.twitter.com/2kIuBoQaoF"

▫ちょっとした きな臭さ?
ㅤえーっと、彼女が話していることはちょっとした冗談ですよね…?
ㅤ"pic.twitter.com/UGcBquzvOf" (心への干渉)
ㅤ"pic.twitter.com/32ksZhwcBc"(―類の党解散へ)

▫若者コトバ
ㅤ「イチャイチャラブラブ」「円盤」「学園のアイドル」
ㅤ作品上では、上記の3つの言葉は “スラング” や “ちょっと古い言い回し” として扱われており、「時代の流れを意識させるような流行の/死語の言葉である」と主人公によって認識されていましたが、これは筆者が「私は若くないし、この言葉を使うことに慣れていない......」と言いながら無理をして別の時代の言葉を使っているような “何か” でした。
(こういった “新旧をはかる物差し” が私とは合致しなかったこと。若者からしてみれば、若者は「今の若者のスラングでは――」とは言わないこと(ましてや心の声では)。過去の表現方法を引用することはあるかもしれませんが、「学園のアイドル」的な存在が “古い言い回し” であることをわざわざ意識する必要はないこと)
(「本音で勝負!ㅤだよ」)

▫二つ目のプロローグ
ㅤ姫野永遠と再会して、結ばれて、別れるまでの話。彼女が嫌ったのは能力で自分を守っていた終であり、閉ざされたブログは「さよなら」を告げました。
(小さい頃から大好きだった黒髪ロングは切られ、彼は呪いを受けた)
(静かな卒業から、にゅーひろいんの登場)
(“本物の好意” が恋に終わり、愛にまで至らなかったこと。1年の夏がデッド・エンドならば、3年の夏(またはそれ以降の)二度目の再会が約束されること)
(並列した世界線(キャラゲーにおける暗黙の体系)による最大の利点は、永遠の父親のような “浮ついた気持ち” を隠すことにありますが、この作品では運命が謳われました)

▫メールの通知音
ㅤ終のスマホの通知音がデカすぎて毎回ビックリしていたんですけど、あれはminoriの伝統か何かだったんでしょうか?
ㅤ彼の部屋のテレビがついていて、クイズ番組の効果音が突然流れたのかと思いました。

ㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ――――2年後――――

▫永遠「ねえ、宮坂君。もう一度、友達に戻らない?」(その1)
ㅤこのセリフが “姫野永遠が持つ葛藤から発せられた” と判断することは容易でしょうが、その後に続く終のモノローグ「だけど――確かに、俺たちの物語にはこれで一つの区切りがついた。」から突然出現する選択肢までの経過時間がとても短かったことは、彼女の提案が “プレイヤーが後腐れなく選択肢に進むために発せられたのではないか???” という間違った認識を私に植え付けました。
(複数の筆者による介入, 整合性の無さ?)
ㅤ『真響編』では永遠が度々登場するため、この友達という初期ステータスは有効に作用していましたが、『はるか編』では “はるかと付き合うためだけに友達に戻った” または “正規のルートから外れたけどいずれ戻ってくる” かように感じられたことが少しだけ残念でした。
(“選択肢の存在” だけが説明されていないことに、彼女による「お友達宣言」が巻き込まれてしまった形?)

▫元友人
ㅤ蒼太による永遠に反対する姿勢
(物語の “性急さ” に困惑するプレイヤーの気持ちを肩代わりしてくれていた)
(友人と永遠が偶然再会してから、すぐさま恋人に。破局から2年経って、これまた唐突に「友達」に戻ったこと)
(ちなみに彼の立ち絵は少しだけ上に移動していて、あの二年間で彼の身長が伸びたことが表現されている)
ㅤ"pic.twitter.com/Ucmnw4SviJ"












◇ 真響 編
▫優しい幽霊
ㅤscene: 雨。開幕から交通事故に遭ってしまった終くんには少し悪いですが、この雨の描写(線の細い雨, 信号機とライトの反射)がこの作品で最も美しい情景描写であったと感じました 🌧️✨
(ところで、終を轢いた運転手は誰の声ですか?)
(“外れてしまった天気予報” については『はるか編』にて後述)
ㅤ"pic.twitter.com/i80HRGLoUh"

▫小さな嘘
ㅤ真響が幼い頃から抱いていた好意について、終が「恋愛感情なのか、友人としてなのか、もしくは母性?」と頭を悩ませているシーンに私は頭を悩ませていました。親と暮らしていない→女としての本能が目覚める→真響ママーッ! という論理には独自性があり、プレイヤーを納得させるには十分でしたが、永遠を破滅に追い込んだ能力が「恋愛じゃないとしても、友人としての好意の可能性もあるし……。いや、もしくは母性なだけかも……」と物怖じしている姿にはギャップがありました。鈍感系主人公と透視能力との相性は、少しだけ難しそうです。

▫真響ママ(本物)
ㅤ……立ち絵すらない彼女の母親が、ママさんバレー🏐 や婦人会の温泉旅行♨ に出かけているシーンを想像させます。きょうだいに関する記述がないことから真響は一人娘の可能性があり、大事に大事に育てられていたように思えてしまいます。また彼女の長く伸びた髪は―――

▫元恋人が幼なじみに “忠告” を
ㅤこの時点でのシュウの気持ちは真響に向いていませんが、三人の関係性がギクシャクしてしまったことは決して「特定の誰かが悪い」という訳ではありません。嘘を吐かれ放っておかれた真響も、傷を負っている永遠も、失意の底にいる終も、ただただ全員が不幸で可哀そうなだけです。真響と終は「ノレンジャーカレー」の味を忘れました。
ㅤㅤ「わたしは――」
ㅤㅤㅤ「変わってないとでも思っているの?」
ㅤㅤ「わたしはそれでも――」
ㅤㅤㅤ「そんな甘い気持ちで彼と一緒にいるなら、傷つくわよ――」
ㅤㅤㅤ「わたしみたいにね」
ㅤㅤㅤ"pic.twitter.com/GjkHs2dbzK"

▫minoriは "ever forever - ef" を彼女の名前に託しましたか??
ㅤ永遠の愛を誓っても、その誓いを破るほどに嫌い。運命の人で、怪物で、大好きだけど大嫌い。
(彼女の愛を妨げるのは自身が持つ葛藤と、終の能力。あの忠告は真響と自身を案じての行動でしたが、『真響編』で永遠がその “甘さ” を乗り越えてしまうともう少し厄介なことになりそうですね)

▫噓(やさしさ)
ㅤ私にはもう「主人公=鈍感」というバイアスがかかってしまっているので、終による嘘(偽装された能力)が保身だったとしか思えません。主人公が過去に吐いた嘘について言及することはなく、真響の優しさに彼の噓ごと包まれたようなストーリーが展開されました。彼は噓を顧みながら、噓を吐き続けています。
(真響「永遠ちゃんと何を話してたの~?」→終「別に、大したことじゃないよ」:pic.twitter.com/0Q294UGitX)

▫彼女っぽくない
ㅤ【???】
ㅤㅤ(白い雲を見て、姫野がらしからぬことを口にしていた。)(←この文章に永遠による「……わたあめみたいね。」が入る)
Q.――このセリフは何ですか?
ㅤ先に述べた『▫BGV』のように、地の文の後ろにキャラクターのセリフが組み込まれている表現。文脈としては、終が真響に噓を吐いていたことを謝ろうと決心する場面で、永遠が空の様子を見てぽつりと呟くシーンのラストカットです。まず最初に思いつくのはOPの「流れてく景色と 揺らいでる空気」のような “ふわふわした気持ち” ですが、声のトーンからはもどかしい気持ちや内に秘めた寂しさが伝わってきません。次に浮かぶのは終のセリフである「建設的な話」「空々しい優しさ」「空っぽの優しさ」のような “大きいように見えて質量がないという比喩” ですが、こちらも同様に皮肉や自虐的な喩えのようには聞こえません。最後に取り上げるのは彼女の心の壁の中にある “普通の女の子の心” の表出で、「あくまで佐倉井さんのことを心配しているだけ」というツンデレ風味の緊張が、「夢を見ているみたいだよ」という彼の喜ばしいセリフによって解かれてしまったのではないかと憶測することができます。
(この時点で、終の気持ちは真響に向いてしまっていることが酷く残忍な描写に思えてしまいます)
(芯が強い(ように見える)彼女の性格から考えると、二番目の可能性が高そうですが、私は三番目を推しています)

▫古典的な何か
ㅤヒロインが猫を追いかけていたら、いつの間にかタイヤの遊具に挟まってパンチラしちゃった!!
ㅤ【母ㅤ性】
ㅤㅤ「おしりが引っかかって、抜けないよ~😖」

▫ラッキースケベからの落差
ㅤ彼女とのデート終盤。真響の“悲しみ”が溢れ出ているときに波の音🌊 を流すのは少しズルい演出です。この少し前の、彼女が “自分は頼れる存在ではないことを悲しく思う描写” との対比(頼りなさvs強がり→本音)がバチバチに意識されていて、とっても好きでした……
ㅤ"pic.twitter.com/ZNGZoyLvRh"

▫告白シーン
(真響ルートにおける『デコピンスチル』の汎用性の高さ!汎用性の高さーッ!!)
(また『至近距離のヒロイン』スチルが佳くも悪くも際立っていました。たくさんの差分が用意されているので、10メートル以内の会話もできて、キスもできて、手を繋ぐことすらできます)
ㅤ【真ㅤ響】
ㅤㅤ「わたしはシュウみたいなウジウジ人間じゃないから、答えとか保留にされたまま生きていけないの! さっさと好きって言ってよ!」
ㅤㅤ「もうっ!ㅤ早く好きって言えっつーの!」

▫青春の代名詞「好きだーっ!!」
(“思春期特有の衝動に任せた無意味な行動” を読んでいると、なんだか幸せな気持ちになれるのは決して私だけではないはずです。これに似た例を挙げるとすると、「目の前に広がる景色がとても綺麗で、周りにいたみんなが叫びながら走り出すシーン」なんかがすごく好きです。これこそが、大人になったら忘れてしまう “青春という名の輝き✨” だと私は認識しています……
(静先輩によると、“青春” とは今じゃない 過̶去̶ 未来を求める力であり、可能性に溢れた季節のことです)
(一方で、それから彼らは体を重ねましたが、「永遠ちゃん」という呼び名は二回ほど彼女の口から発せられました)

▫POV: 印象的なセリフ
ㅤ【真ㅤ響】
ㅤㅤ「真響の初めては、シュウにあげたからね……」
ㅤㅤ「この先、なにがあっても……絶対に、忘れないで……」
ㅤㅤ「これは“二人きりの幸せ”だから」
(このシーンで私は怖くて泣きながら、情事(Hシーン)でもしっかり仕事をしてくれる右下の "auto saved." が心から愛おしくなりました。終は “みんなのヒーロー” ではありません――)

▫真響による床を踏み鳴らす癖
ㅤこれはまさしく彼女の “昔のまま” を体現しています。これによって大げさで直接的な感情表現, 非言語のコミュニケーションを展開します。
(マキも一度だけ怒りながら地団太を踏んでいた)

▫𝗜 𝗞𝗡𝗢𝗪 𝗪𝗛𝗔𝗧 𝗔𝗥𝗘 𝗬𝗢𝗨 𝗧𝗛𝗜𝗡𝗞𝗜𝗡𝗚――
(真響「わたしはシュウの手を握ったり、抱き締めたりすると、今どんな気持ちなのかわかる気がするんだよ」)
ㅤ真響と終が「触れ合うこと」とは、つまり終が感情を読み取ることのできない状態の“逆”。「範囲外に逃げる」のではなく、触れ合って、抱き締めること。
“フレッシュな目でとらえる「触れ合うこと」” は、ヒロインの誕生日に羽目を外して男子トイレで性行為をしまくることを含み、 彼らに老後の心構えをさせました。

▫丁寧に繰り返された、同じ痛み
ㅤ真響と永遠のセリフが一致する描写。私の脳は終による勢いのある土下座に真剣にはなれませんでしたが、彼がとても残酷なことをしていたことだけは理解できました……
ㅤ"pic.twitter.com/M1XyCOGlBi"

▫今までのセックス(その1)
ㅤㅤ今まで、セックスはほとんど自分の快楽のためにしてきた。
ㅤㅤ今日だってきっとそうだった。
ㅤㅤ真響の痛みを顧みなかったわけでは、けしてない。
ㅤㅤだけど、追い求めていたのは、自分の欲望を満たすことだった。
ㅤㅤ「真響の気持ち、受け止めるよ」
ㅤㅤ真響の気持ち。
ㅤㅤそれを知りたいと思った。
(↑ 終は “ガチ” の絶倫です――)

▫ありがとう(その1)
ㅤㅤ「あのね……」
ㅤㅤㅤ「うん?」
ㅤㅤ「なんか、永遠ちゃんに“ありがとう”って言われちゃった」
(※これはまだ 一 度 目 の「ありがとう」であることを佳く覚えておいてください)

▫泣いてほしい(宮坂 終)
ㅤ自分の気持ちを隠してしまう性格こそが真響と永遠の似ている点であり、この世界線の終は “陽のあたる 二人きりの幸せ” を選びました。“温もり” とは一緒に分かち合うものであり、一人で抱え込んだり嘘で覆ったり本音を隠すことではありません。

▫二人の主人公
ㅤ理想郷を求める/復讐心に燃えるという二人の主人公はどちらも孤独でしたが、その両方から描かれた世界は少女によって肯定されました!🥪












◇ はるか編
▫“物語” のような回答
【はるか】
ㅤ「エクセレントなお答えですね。まるで“物語”のようですわ」

▫ログのフリガナバグ
・「“闇のザー}大母”」→「闇の大母(ダークネス・グレート・マザー)」
・「はーイ・プレジャー}い♪」→「はーい♪(マイ・プレジャー)」

▫降らなかった雨――『▫優しい幽霊』
・登校パートにて
ㅤㅤ【はるか】
ㅤㅤ「それにしても、今日も暑くなりそうな天気ですねぇ。そろそろ本格的に、日焼けしないように気をつけないといけませんね。」
ㅤㅤ「まあ、午後から雨が降ると天気予報で言ってましたけど」
・寝室にて
ㅤ【ㅤ終ㅤ】
ㅤㅤ(その夜、いつもより早く眠りについたとき、思い出した。)
ㅤㅤ(そういえば、登校中に彼女は「午後から雨が降る」と言っていた。)
ㅤㅤ(雨なんて一滴も降らなかった。)
ㅤㅤ(あれも、嘘か。)
↑ この描写について、何か違和感を覚えませんでしょうか。ただ「雨が降るかもしれない」という予測が、個人ルート初日のラストシーンにリハーサル(繰り返し)されています。彼女と過ごした夏を一つの完成された物語であるとするのであれば、彼女が “噓つき” であることの一例として「誤った天気予報⛅」が提示されているように見えますが、この描写に『真響編』を重ねてしまうとこの作品で一二を争う にやけポイントが明らかになります。『はるか編』では彼女が持つ流暢な会話テクニックによって、当初から掲げられている “理想の物語” が嘘によって構築されていきます。しかし、本作品のすべての物語を見返したとしても、二つの場面で用いられた「天気: 午後から雨」が実際に発生したのは『真響編』の初日のみであり、『はるか編』では嘘であったことが『真響編』の中では嘘ではなくなっていることが示唆されます。
(いや、だから何なんだよ……と言われてしまうとそれまでです。はるかによる「さようなら」(永遠, 終による「さよなら」ではない)や、本筋となる “感情の渦” に触れ始めた重要なシーンだったために、気になりすぎて深読みしすぎてしまった可能性も否めません)
(はるかは当初から、読者の立場を飛び越えて物語を改変しようとしています)(←確かに彼女は異形 (フリーク) だったが、登場人物にすぎないこととの矛盾。彼女はどうやって「雨が降ること」を知ったのか…?)
(「雨が降らないこと」とは、つまり「真響と恋人にならない」という事実に帰結します)

▫「俺たちはセックスをしていない?」
ㅤ私が思う、この作品で最も印象的だった主人公のセリフがこちらになります。作品上、世界線の “乗り換え” による単一ルートへの誘導が行われたので、『時間を置くと初体験の記憶が消失して、ヒロインの処女膜が再生する』という設定を彼女に課したのかと考えてしまいましたが、そんなことはなかったので安心しました。公平を期すために、はるかと真響の前奏詩があたかも “処女受胎” のように「事実」ヨリも「信念」を重んじていたことを私たちは強く認識しなければなりません。

▫属性: 大金持ちのご令嬢 💴
ㅤ彼女への第一印象には「噓つき」というヒロイン紹介文としては聞き慣れない単語が用いられたので、私はその生まれすらも疑問に思ってしまいました。実際に私たちは、彼女の私服と借りてきたメイド服, 処刑用の玩具しか目にしていません。「三笠勇者」の受賞パーティーに参加していたことを仄めかしていましたが、あのパーティーの描写は終による回想のみによって構成されています。

▫ヤマアラシのジレンマ
ㅤㅤㅤㅤ\ ドドンッ!!🗻 /
ㅤ "pic.twitter.com/XwpQYzDag3"
(――あるとき、あるところに二つの山がありました。)

▫幼なじみへの嘘(やさしさ)
ㅤ【ㅤ終ㅤ】
ㅤㅤ「俺だって、幼馴染の真響に嘘をついていることもある」
ㅤㅤ「なにからなにまで全部話していたら、とてもじゃないけど生きていけない」
(『はるか編』で胸が痛くなるポイント その①。その後、「幼馴染」(「幼なじみ」ではない)の真響は終が “みんなのヒーロー” になることを後押ししました)ㅤ
(「真響のヒーローは、たとえば人質になった一人の少女を含めて、無条件にすべてを救う者のことだ。」)
(彼らを繋ぎとめていた “心の鍵” 🔑)

▫はるかへの怒り vs 生まれ持った祝福
ㅤ作品を愛する彼女が “物語のような初体験” を隠した理由と、この二項対立とが彼女の矛盾を表していたように感じます。『永遠』と『はるか』。……そういえば、名前がそろってるな。
ㅤ【ㅤ終ㅤ】
ㅤㅤ(確かにはるかは捻じ曲がっていたが、好きでもない相手に処女を捧げるようなことはしないだろう。)

▫永遠の心のヒビ 💔
ㅤ選択肢前の描写には、「もう2年が経過したので永遠の心の壁のヒビが直ったかどうかは判らない…」といったような記述がありましたが、『はるか編』内の永遠と灯台で再会するシーンでは、終はまるで彼女のヒビが直っていたこと知っていたかのように振る舞っていました。
ヒビ - 序盤でその両方(心を閉ざした状態/気持ちが通じる状態)を描くことで「心の壁」について理解しやすかったことは確かにありますが、こういった状態の変化が曖昧になってしまっていたこと(“壁” にはヒビが入るので反対に直りもすること, 失意の中で彼女の状態について「判らなかった」はずが2年の月日がその認識を当然のように癒していたこと)は少しだけ残念でした。

▫本来の姿(序盤の伏線)
ㅤ【ㅤ終ㅤ】
ㅤㅤ「なんでまた尾行なんてしたのかな?」
ㅤ【はるか】
ㅤㅤ「先輩がどんなところに住んでいるのか知りたかったのと、それだけでお抱えの興信所を使うのはためらわれたので、自分で後をつけました」
ㅤ【ㅤ終ㅤ】
ㅤㅤ「ん……そう、なんだ」
ㅤㅤ(なにか不穏な感情の揺らぎを覚えたが、今の話のなにがおかしいのか、確信には至らなかった。)
…まず第一に、彼女は“本当の自分”が暴かれることを恐れていました。終が三作目に取り組もうとする少し前、静先輩に “興信所の真似事” を依頼するシーンがありますが、これは上記のシーンの繰り返しになっています。「偵を探す」のではなく「信を興す」(信用を調べる)ことは、はるかにとって恐ろしいことでした。第二に、先に述べた『▫属性: 大金持ちのご令嬢 💴』とも関連があるように思えます。彼女の感情が不穏な揺らぎを覚えた理由が、「興信所そのものをためらっていた」からなのか、たとえ冗談であっても「存在しないお抱えの興信所を引き合いに出した」からなのかは語られません。
(おそらく前者)
(『永遠編』にて、彼女が自身のことを「名探偵はるか」と冗談を言うシーンがありますが、やはり興信所でなければOKのようです。または別の作者による誤表記?)
ㅤ"pic.twitter.com/yX3Ng7uSrC"

▫私が一番好きな背景イラスト 🖼
ㅤ本作では、背景シーンにキャラクターの全体像(または一部)を溶け込ませるという手法がありましたが、静先輩による『終が3作目の小説を書いている横でくつろいでいるシーン』は私が最もお気に入りの背景の一つです。

▫真実とは?
ㅤ“偽りに満ちた時代こそ、真実を語ることは革新的だ” (ジョージ・オーウェル)
ㅤ"In a time of universal deceit, telling the truth becomes a revolutionary act."
(……普遍的な欺瞞 universal deceit について、『▫ちょっとした きな臭さ?』と関連付けてしまうと最悪のコンボになりそうですが、"Big Brother is watching you" まで行ってしまうともう誰も何も賛同しないでしょう。作品内で言及されていたことなので少しだけ触れますが、終の能力を使って世界平和を目指すのであれば、確かに熊や狼と戦っていたほうが人間らしい人生を過ごせるような気がしています。今すぐ革命を起こすには野心が足りません)

▫ありがとう(その2)
ㅤ【ㅤ終ㅤ】
ㅤㅤ「ありがとう」(中略)
ㅤㅤ「2年前のあの日、僕を――俺を叱ってくれてありがとう」
ㅤㅤ「それと……」
ㅤㅤ「君のそばにいられたとき、とても居心地がよかったことも、ありがとう」
(2度目の「ありがとう」に対してヒロインの永遠は目を丸くしましたが、私は舌を出して目を大きく見開いていました。彼らによるセリフは、もはやプレイヤーには見ることのできないバックドアで示し合わされた台本のようです……)ㅤ

▫今までのセックス(その2)
ㅤㅤ今までのキスやセックスは、一方的に想いを伝えるだけのものだった。
ㅤㅤ激しくお互いを求めあうことで、相手をそれだけ愛しているのだと証明するような行為だった――
ㅤㅤだけど、それは裏を返せば相手を理解しきれず、信じ切れず、そうしなければ“怖い”という強迫観念のような激しさだったのだろう。
ㅤㅤそれが……お互いをわかりあえることで、こうも変わるんだ。
ㅤㅤ「ちゅっ……ん……はぁ……」
ㅤㅤはるかが名残惜しそうに俺の唇を舌でつつき、幸せそうなため息をつく
(終のいう「今までのセックス」という表現が用いられたのはこれで二度目ですが、彼がはるかの処女を奪った後の感想「……どちらの“身体”がよかったかというだけなら、はっきりしていた」(はるかと永遠を比較して)がプレイヤーの脳裏をよぎります。私たちは『巨乳村』という小さなコミュニティに真剣になる必要はありませんが、こういった芸当は “模範的なキャラゲー” では絶対に表現できない代物なので希少価値がありそうです)

▫最後の言葉(物語の“鍵” - 廃工場)
ㅤ「私の心の鍵ですよ♪」












◇ 永遠編
▫永遠「ねえ、宮坂君。もう一度、友達に戻らない?」(その2)
ㅤㅤ終「俺は、君とは友達にはならないよ」
(このシーンで、彼は遂にやってくれました。まさに「ようやく、ここまで来た――」という感じです)

▫『異形』→『ヒーロー』の流れ図
ㅤ【はるか】
ㅤㅤ「そろそろ私の出番かと思いまして、野生のカンが働きました」
(彼女はまだ、純粋な知的好奇心によって “物語” を楽しみたい気持ちでいっぱいです笑: pic.twitter.com/hygimLfkM5)
ㅤ【ㅤ終ㅤ】
ㅤㅤ「……俺、真響が好きな作品の主人公……ヒーローになれなかったな」
(そして終と永遠と真響の三人でドロドロの修羅場がシミュレートされました: pic.twitter.com/x6blux5smC)

▫貴重な単発射精シーン 💦
ㅤ終さんが宮坂永遠との “夫婦の営み” を始めてしまったので、絶倫主人公♂ が再来するのかと頭を抱えていたのですが、久しぶりのセックスはたった一度の射精で済みました…
ㅤ新しい要素として、黒髪ロング・制服エプロン・得意げな顔のメインヒロインが展開されました。アナルに数珠――(原文ママ)。 POV「ヒロインと一緒の生活が楽しい!!!」

▫永遠(えいえん)の向こう
(彼女による感情の表出)(作中作の “思い出の品” は婚約指輪で、彼らはヨリを戻しました 💍)

▫scene: “灯り”の下 ✨
ㅤ黒髪ロング愛好家の中には、「その美しい毛並みを清楚なものとして認識して、清らかさのシンボルとする人間」と「生物的な機能を意識しながら、手入れされたモノを汚したい人間」がいますが、二者間の溝は未だ深いままです……
(わたしは完全に前者ですが、後者を嫌悪することはありません)
(純白のリボンは、最後まで結ばれたまま 🎀)

▫俺たちの終わりと始まりの場所――
ㅤ各キャラクターごとに「POV: キャラが集う印象的な場所」が設定されていたことは、私を喜ばせた要素の一つでした。結城辰也によるイラスト(発表記念壁紙)では、その三つの場所(灯台, 入江, 廃工場)が印象的に用いられており、それが皆にとっての特別な場所/一番の思い入れのある場所だったといえそうです。

▫ソレヨリノ前奏詩
ㅤそれは、輝く未来へのプロローグ。











◇システム, 他雑記
▫POV「ちょっとした工夫のあるゲーム」
・5種類のタイトル画面: Windowsの日付や時間によってタイトル画面が変化しています!!
ㅤ"pic.twitter.com/42W00nnkeo"
・小さな変化: タイトル画面から【MEMORIES】にカーソルを合わせると、ルート進行中のヒロインに対応して背景画像が割り当てられています。素晴らしい試み, 演出です…!
ㅤ"pic.twitter.com/bR2ACyovsh"
ㅤ(結城辰也によるイラスト?)

▫推奨プレイ方法?
ㅤパッケージ版に付属しているのスタートアップマニュアルには【オススメのプレイ方法】が記載されているので、それらに設定すると作品を想定されたままの雰囲気で楽しめるかも(?)
ㅤ記載のあった設定は以下の通りです。
■オススメのプレイ方法
ㅤ起動後に「SYSTEM」から 音量(音楽, 効果音は真ん中ヨリ少し下・音量は真ん中ヨリ若干大きめ)、メッセージスピード(全て速いから●ボタンひとつ分遅くなるように)、フォント(ゴシック体やメイリオなど)、プレイモード(「オート」「非アクティブ時もプレイ進行」)を設定し、それ以外はデフォルトでプレイする。
(全画面でオートプレイにすると30~1時間程度の間隔で小休止することができる)

▫横顔立ち絵
ㅤ本作では、横顔の立ち絵が日常シーンに多く用いられていましたが「横を向いて会話をしている」というヨリも「窓のほうを向いてどこか遠くを見ている」という雰囲気のほうが正確です。その違和感の正体が、物語であることを演出し、“こちら側に視線を向ける必要がない” というのであれば話は別ですが……

▫三者三様のヒロイン ☘️
ㅤ性格にも雰囲気にも、声にすら個性がありますが、彼女たちの表情への印象には「別作品を組み合わせたようなバラツキ」が意識されました。正直なところ、「佐倉井 真響」が一番かわいいと思っています……。
(sataりすく『ちゃっく!ついてる!!』について、私は何も知りませんが――)

▫GPU使用率
ㅤヒロインと並んで歩く際の、「表情切り替え」と「背景のスクロールの動作」が不安定でした。
ㅤシステム設定の【VISUAL EFFECT】→【画面効果を使用する】から変更が可能ですが、ヒロインとのスムーズな下校には高スペックPCが必要なようです。
(2015年にこのシステムを採用していたことは、その真似をする作品が生まれるほどに素晴らしく、古株ならではのアバンギャルドさです)

▫「さよならは、きみだけを。」
ㅤこのサブタイトルについて本編を見返しながら何度も何度も考えていたのですが、答えはこれでした……
(@syobon_hinata のおかげです、どうもありがとう。https://twitter.com/syobon_hinata/status/1614113588075204608)
ㅤㅤはじまりは、ここにする。ㅤ(12の月のイヴ)
ㅤㅤさよならは、きみだけを。ㅤ(ソレヨリノ前奏詩)
ㅤㅤいけないの、しってても。ㅤ(罪ノ光ランデヴー)
ㅤㅤそれでも、わたしは。ㅤㅤㅤ(トリノライン)
ㅤㅤじゅうぶんな、はずだった。(その日の獣には、)

▫透明感のある音楽
ㅤ本作のBGMには、波の音がよく似合います。日常シーンを彩るのは「ド派手で印象的な音楽」ではなく、アンビエントを重視するような「落ち着きのある音」でした。特にお気に入りだったのは『01.Gentle』で、ostを開くと横須賀の海岸線を歩いてみたくなります。
(鋏鷺の足取りを追って、電車の発射音で射精することは私にはまだ難しそうです)

▫「Cherish」
ㅤ作・編曲は「天門」。ギターに弦楽器が乗って「原田ひとみ」が美しい歌声を響かせていると、わたしが一番大好きなあの作品を思い出してしまいます…
ㅤこの曲を何度も何度も聴くたびに、アウトロの音を取るような演出ことしか考えられなくなっていたのですが、歌詞から伝わってくる感情は彼女の “葛藤” そのものでした(作中の言葉を借りるのであれば、まるで “海風の生暖かさ” のような『言葉を超えた好意』(愛ではない)を漂わせつつも、永遠が持っている『普通の女の子の心』が見え隠れしている状態)。例えばアウトロの三つ目のセリフのシーンでは、「永遠って呼んで。わたしは――終君、でいいわよね」という表面的なセリフの奥に、(いつか、思い出してしまう前に……教えてあげる)という嘘偽りない彼女の気持ちがあり、再会のシーンから日を追うごとに心の壁のヒビが大きくなる演出がなされています。
ㅤまた、キャラクター紹介に登場する "ー𝗧𝗛 𝗢𝗙 𝗨𝗦 𝗔𝗥𝗘 𝗢𝗣𝗣𝗢𝗦𝗜𝗧𝗘 𝗢𝗙 𝗢𝗪𝗡. 𝗕𝗨𝗧 𝗗𝗜𝗙𝗙―"(永遠)、"𝗜 𝗞𝗡𝗢𝗪 𝗪𝗛𝗔𝗧 𝗔𝗥𝗘 𝗬𝗢𝗨 𝗧𝗛𝗜𝗡𝗞𝗜𝗡𝗚―"(真響)、"―𝗔𝗠𝗢𝗨𝗙𝗟𝗔𝗚𝗘 𝗟𝗢𝗩𝗘𝗥𝗦, 𝗬𝗢𝗨 𝗦𝗘𝗘?"(はるか)という3つの文章は作中のセリフから引用されているのでぜひ探してみてください(pic.twitter.com/GdIoU2mVZn)。
流れとしては "- 𝗔 𝗽𝗿𝗼𝗹𝗼𝗴𝘂𝗲 𝗹𝗲𝗮𝗱𝘀 𝗮𝗻𝗼𝘁𝗵𝗲𝗿 𝗽𝗿𝗼𝗹𝗼𝗴𝘂𝗲 -" という副題/本編から、輝く未来(明日の幸せ)まで。
ㅤそして、「Prologue」へ ――

▫「Prologue」
ㅤイントロがヤバい!!!!
(この曲の曲名が『Prologue』だと知ったのは批評空間の登録ページだったのですが、エンディングテーマが Prologue (=前奏) という作品に沿った名前であり、歌詞と映像内のCGが対応していて、なおかつオープニングテーマ『Chersh』のアウトロから “一歩進むこと” によってイントロメロディまでの繋がり (Your prologue w͇i͇l͇l͇ ͇b͇e͇ the story.) が表現されていたことに感動しました)
(またエンドロールの形式として特徴的だったのは、作品を制作したスタッフが「あいうえお順」で並べられていたことでした。Production Staff と Special Thanks の表記の違いをわたしは知りませんが、ただ一つ感じられたのは『この作品がスタッフ全員の力によってプレイヤーに届けられた』ということです)
(ホームページの作品概要にある「触れ合うこと」が、「閉ざした世界に触れたぬくもり」「手を離さないで」「手を取り歩き出そう」という歌詞、数多くの手を繋いでいるCGによって巧みに表現されていました。この要素は終が持つ能力の制限と関係しています…)(pic.twitter.com/xAnjBmotG3)
(プレイ前に本作のタイトルを読んだときに、『ソレヨリノ』の “ソレ” とは一体何のプロローグなのかと考えていたのですが、この曲の歌詞には「さよならは明日の幸せへの前奏詩~♪」とあったのでこれがもう彼らの答えですね。物語は作中ラストの「それは、“輝く未来” へのプロローグ。」によって締めくくられました)





◇終わりに
ㅤこのブランドの作品をプレイするのは初めてだったのですが、アニメ『ef - a tale of memories.』『ef - a tale of melodies.』から受けた強烈な印象を持っているので、新鮮な気持ちでプレイしていました。
(“シャフト×新房昭之” をすべて視聴することになるくらい好きだった)
(*ef と eden は持っていますが、プレイしたら死ぬことにしています)
『トリノライン』『その日の獣には、』のどちらもプレイしたいです……!!