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GENKImorimoriさんのFLOWERS -Le volume sur printemps-(春篇)の長文感想

ユーザー
GENKImorimori
ゲーム
FLOWERS -Le volume sur printemps-(春篇)
ブランド
Innocent Grey
得点
73
参照数
81

一言コメント

いますぐにでも続編をプレイしたいYO!!!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

私が考えるイノセントグレイから『絵画のように美しい亡骸』『凄惨な過去の殺人事件、絡みつく狂気』を取り除いて、その空洞を 百合 っていう綺麗な概念で埋め立てたような作品

一般向けでしかも謎解きが絡む”甘美な百合”とあったのでかなり期待していたんですけど、物語を進めていく中でこの後の展開が気になる高揚感よりも、物語の繋がり・方向性(読者に求める正解)の部分が気になってしょうがなかった。
んまずシステムとして、選択肢後の右下の「青い光がマユリ, 黄色い光が立花」というのは薄々理解しながらプレイしていたんですけど、それらを全く意識せずに話を進めていたら最終パート「08. 愛より大きしもの」で、小説では決まり文句な(愛を伝えることを仄めかすような)約束していたはずの彼女が現れずに肩透かしを食らって開いた口が塞がらないままBAD ENDの画面を叩きつけられてしまったので、その後望まれたどちらか片方の選択肢を選び続けるある種の作業になってしまったのがとても残念でならなかった。
あとは謎解きパート、これは小説とか海外の豆知識がプレイヤーにあることを前提に設置されているので、 間違えてしまうと”真相は有耶無耶!蘇芳ちゃん何言ってんねん!!なBADEND”になるのは面白かったですね。結局は総当たりが正攻法なんじゃないですか?えりかにも言われたけど…
それとエンディング後のキャストコメント、これは声優が好きな人には嬉しい機能なんだと思います



すこだった点
これは毎度お馴染みのエンディング後、物語を読み終えた後に「タイトル画面の変化」があるのは嬉しい演出でした(変わらないおいしさ○)。
ここで『虚ノ少女』を例えに挙げるのもどうかと思ったんですけど、マユリを”真実の女神”のように失い、蘇芳の泣き顔でこの物語が締めくくられた折の心苦しさはこの演出によって引き立っていたように感じたし、何処か朽木冬子に辿り着いた時坂玲人の姿が思い起こされてしまった。(別れ にフォーカスするんなら殻のtrueか)
彼女たちの物語はまだ続くと思われるが、ここから春の芽吹き 出会いを経て、夏で結ばれ、秋で成熟した後に、冬に溶けあう四季折々な順当な物語が展開していく訳でもなく早すぎる別れの季節が到来してしまったのが私を悩ませてくれました。

それからもう一点。物語の終盤までは”現実から離れ、甘美な百合の世界を”という表現に当てはまるようなシーンは薄かった(これは私の百合に対する価値観の違いがある)ように思えたものの、
聖母祭後の聖堂でのマユリへの告白シーン・月光だけが彼女たちを見守る図書室での密会のシーン、この二つには私は呼吸することを忘れていたし心臓の方も多分機能が停止していた。
これこそ私が求めていた「閉鎖された空間における、うら若き花々たちの詩的な儚さと蒸留された美しさ」を体現していたように思われる。


他細かいとこ
これもお馴染みですが、config→キャラクター別の音声設定で彼女たちの名前の由来・花言葉を聞くことができますね。
簡単にまとめると
・白羽 蘇芳 ユダツリー(ハナスオウ)が由来 花言葉は 疑惑
・匂坂 マユリ ユリ(マドンナリリー)が由来 花言葉は 純潔
・花菱 立花 ハナビシソウが由来 花言葉は 私を拒絶しないで
・沙沙貴 苺 イチゴが由来 花言葉は 尊敬 愛
・沙沙貴 林檎 リンゴが由来 花言葉は 名声選択評判 選ばれた恋
・小御門 ネリネ ネリネ(ダイヤモンドリリー)が由来 花言葉は 箱入り娘
・八代 譲葉 ユズリハが由来 代々の家督の継承 を象徴する
・ダリア=バスキア ダリアが由来 花言葉は 移り気
・車椅子の少女(八重垣えりか) ヒース(エリカ)が由来 花言葉は 孤独謙遜休息心地よい言葉 博愛