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GENKImorimoriさんの月あかりランチ OZ sings, The last fairy tale.の長文感想

ユーザー
GENKImorimori
ゲーム
月あかりランチ OZ sings, The last fairy tale.
ブランド
EX-ONE
得点
83
参照数
179

一言コメント

少女の願いを叶えよう! 🌒🏫

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


ㅤ『月あかりランチ OZ sings, The last fairy tale.』(2013) (EX-ONE)

ㅤ対戦ありがとうございました!! ✨
ㅤ“キャラは可愛いのにシナリオ寄り” という素晴らしい作品に仕上がっていました。(83点)
ㅤこの作品でしか味わえない "moonlightな雰囲気"🌃があるので、もっともっとプレイされるべきだと思います!!
 ブランド「EX-ONE」は解散。2014年には『EX-ONE コンプリートセット」が発売されていたようです…
(ジャンル: ADV)

















ㅤ以下、ちょっとした妄想です。

◇考察まとめ
▫再会 🦋
ㅤラストシーンの窓辺にて、神無月秋奈が “何か” に気づいて満面の笑みになったところでこの作品はエンディングを迎えますが、「彼女が誰に、どうして笑顔を見せたのか?」は重要な考察ポイントになっています。あのCGで彼女が手に持っているのは「栞が挟まっている古ぼけた冊子」のようなもので、これがこの謎を紐解くヒントになりそうです。
ㅤアキ編タイトルである『秋の蝶々は笛に寄る』(秋の鹿は-)は、アキが魔女の誘いに乗って学園に留まろうとしてしまうことを指していました。また、本作における金色の『蝶々』は「胡蝶の夢」を意味し、トリックスターのような役割を担っていました(隠された部屋の発見, トト)。このことから、アキによる「胡蝶の夢」は、晴彦を亡くしたショックで秋奈が描き上げた物語(彼女が抱えている冊子)(= 晴彦が生きている夢)と現実世界との対立を描き上げ、夢と現実の境界線を “曖昧” にしました(此之謂物化/ 荘子)
ㅤつまり、ラストシーンの受け取り方はプレイヤーに委ねられ、例えこれが作り話であったとしても『大事な人が笑ってくれる方がいいよね』というアキの気持ちが汲まれたことが理解できます。
"pic.twitter.com/irfK1YTZpq"


▫原作との相違点について (The Wonderful Wizard-) 📚
ㅤ童話版『オズの魔法使い』では東の魔女が圧死し、その姉の西の魔女が苦しみながら溶けて死にますが、この『月あかりランチ』ではそうはなりません。また本編内では、トトは蝶になって消えてしまい、魔法使いはみんなの願いを叶えて、それぞれの国に返してあげるという結末になっています。どうしてこのような違いが生まれてしまったのか?それどうやら、アキの願いに込められていたようです。
ㅤ上記前半部分の「死を避ける/魔女と協力する」という展開は、アキによる「目の前で恋人を亡くした痛み」によって書き換えられ、「晴彦を蘇らせたい」という願いに影響を受けたものだと考えることができます。(“オズの写本” の記述が物語調であること・アブリルによる「作った人はかなりの物語好き」という伏線によって、この物語がドロシー役の少女によって描かれていることが分かる)
ㅤ後半部分の「ハルとの別れ/晴彦のロール」という展開は、晴彦 (先生) が学園に連れてこられた段階で「青年ではなくなっていること」によって説明されます。作中における “時間の概念” には触れませんが、“何者でもない大人” であった晴彦が教師を志して数多くの『影』の願いを叶え続けるというシーンは、いわば魔法使いの教職課程のようなもので、先述のラストシーン - 晴彦との再会へと繋がっていきます。
ハル (トト) との別れは「蝶になって晴彦と一体化する」という描写によって補完され、少女のアキと青年のハルとの「死別」を意味していると考えられます。(ラストシーンの「再会」との矛盾?)
(原作を再現するのであれば、トトはドロシーの腕に抱かれながら一緒のタイミングでカンザス (=現実世界) に戻っているはず)
(魔女でも覆せないような『死者の蘇り』は誰によって引き起こされた?)(←ミナミの魔女による手助け??)(or 西野による再構成????)


▫南の魔女 🀁
ㅤアキの妊娠と、唯一描かれなかった未来(ミナミの世界)についても関連があるかどうかを考えなければなりません。しかし、時系列的に考えてしまうと、作中で「過去も現在も未来も同時に存在できる」「時間概念って素敵よね」と釘を刺されてしまっているので、ハッキリ言ってお手上げ以外の何物でもありません……
(“時間” について考え始めると、脳内で科学と宗教がぶつかり合って “学園都市” みたいになっちゃうのでここではこれ以上言及しません⏱)(写 本 ル ー プ)


▫『夏色恋歌』ラストシーン
ㅤ夏乃が眠りについてしまう前に卒業することを決めた、その後。事後処理として、トリックスターであるハルの役回りが少しだけ描かれますが、ここでは夏乃のような【女の子の声】が「つめたい!」「おもしろーい!」と楽しそうにはしゃいでいるシーンがあります。一体、何が冷たかったんでしょうか?
ㅤもしも、この描写が『初めて “雪” を見て騒いでいる夏乃』であるならば、『夏乃編→フユ編』という推奨攻略順が姿を現します……
(雪が降るのはフユの感情に変化があった時だけ)
(ハルの願いによる写本ループ)
(プレイヤー側の分岐点である【START】辺りにワープした)


▫OP2の穴埋め(アキ) ▓
ㅤ月あかりランチOP2, 神無月秋奈 (アキ) の文字の穴埋めの正解は何でしょうか…?
ㅤ候補として挙げておくのは―――
ㅤ - 最初の二文字「青年」「晴彦」「恋人」「魔女」「永遠」
ㅤ - 真ん中一文字「生」「甦」「」「力」「愛」
ㅤ - 最後の二文字「現実」「」
ㅤ(フユ -「心」を「失った」「戦争」世界)
ㅤ(夏乃 -「知恵」の「必要ない」「未来」世界)
ㅤ(アビ -「魔族」に「滅ぼされた」「幻想」世界)
ㅤㅤ(↑アブリルだけが「勇気」ではなく「魔族」であること)

ㅤ『恋人の生を祈った現実世界の少女』(?)


▫ロゴデザインの秀逸さ
ㅤタイトルロゴの虹色は "Over the Rainbow" のイメージ? 🌈


















◇システム
▫環境周りの快適さ✨
 セーブ・ロード枠は ̶1̶2̶0̶ (←【ADD IN PANEL】で容量が尽きるまで無限に増やせます)
 別ウィンドウのシステム環境設定にて、さらに細かい設定変更(キー割り当て・拡大時の表示設定・ムービー・テクスチャ補間・カーソル自動消去の時間設定等)ができます。
 音声設定の幅も広く、キャラクター別のシステムボイス割り当ても可!
ㅤ(cs2のカスタマイズ性能、その高さ!!🦭)


▫BGMの切り替え, バリエーション 🎵
本作にはBGMの切り替えが三種類、用意されています。
ㅤ『フェードイン』『瞬時切り替え』
ㅤ『BGMの途中で新しいBGMが入り、そのシーンが終わると最初のBGMが途中から再開』
ここで言及したいのは三つ目。例えば、「シリアス→誰かの冗談→シリアス」という場面展開がなされる際に、“ちょっとした脱線” を挟んでテンポ感を整え、本題に戻るための雰囲気作りがBGMによって演出されていました。意識しないと気づけないようなマイナーな試みですが、印象に残ったのでみんな真似してください。
 また、少し気になったのは “ランチタイムの鐘の音” とBGMの重なりで、学園チャイムがクリック時の音声カットとは別に設定されていたのでBGMと混ざってしまっていました。


▫丁寧すぎる改行 ⏎
 キャラクターのセリフや地の文、全画面形式でのテキストなどの改行による “読みやすさ” が徹底されていました。(「いや、そこで改行する?!」レベルで)。特に素晴らしかったのは『アキとの結婚式』のシーンで、キャラクターのセリフが全画面表示型ながらも可変型テキスト・吹き出しのように表示されていました。この形式が用いられていたのはここだけで、対話表現 (vows)・画面構成による魅せ方が計算されていました。
 "pic.twitter.com/Wf0ZUDdJe6"
 これらは『pov: テキストGOOD!』に該当します…!!
















◇雑記, 気になったこと他
▫ミナミへの好意
ㅤ晴彦がもつ魔女のミナミに対しての好意が高すぎました。物語の序盤は「あんた巨乳お姉さん好きかよ、もう個人ルート入っとるで…?!」の顔つきだったんですが、この好意が “恋愛感情” ではなく “家族愛” だったと考えると面白いですね。(『ミナミ = アキと晴彦の子供』という私の妄想)


▫晴彦の恩師によるお言葉
ㅤ『もしもまた迷ったら、いつでも会いに来い。
ㅤㅤ俺はここで待っているぞ』
ㅤ (↑ 誰????) (丁寧な改行)


▫フユの本名
ㅤ【アブリル】と【夏乃】の本名は明かされていますが、“水際”という【フユ】の名前は “認識名称”? 【夏乃】に至っては “認識番号” 『SCA96』という謎の文字列が紹介されましたが、それについての言及はありませんでした。


▫アキが「現実世界の人間だったこと」の伏線いろいろ
ㅤ・意味が通じる慣用句
 ・不良ドラマ
 ・料理と弁当のラインナップ
 ・現代と共有した本の知識


▫『pov: ご都合主義な展開』(水着)
ㅤフユ編における夏服と水着のためだけの『夏』
(ありがとうございます助かりました)


▫口癖
ㅤフユ「何故でしょうか😐」
ㅤ夏乃「べんきょーになるね!😆」
ㅤアビ「面白いかと思いまして😏」
ㅤアキ「大丈夫?😓」

▫プレイメモ
" https://t.co/RzwMQoaoSr"


▫公式サイトの小ネタ(SD)🪓🦁🤖
ㅤ作品HPを舐め回すように閲覧していたら、「本編では用いられていなかったSDスチル」がキャラクター紹介で使用されていて、かつ『オズの魔法使い』の登場人物を模しているのを見つけました、好きです。
夏乃の “脳無し” カカシが可愛すぎる (http://ex-one.cc/resource/v3/img/tk/TK-004_pc_sd_b.png)
ㅤCharacter|月あかりランチ OZ sings, The last fairy tale.
ㅤ"http://ex-one.cc/tk/chara10.html"












◇楽曲
▫OP『月あかりFAIRYTALE』
ㅤ"Dance under the imitation moon (魔女たちの宴)"・"𝐒𝐓𝐀𝐑𝐑𝐈𝐍𝐆 (主演)"・などの英語表記や、タイトルロゴの背景変化(夜 → 星空 → 本の装丁 → 陽光),OP2の隠し要素👒・セリフ変化💭・演出強化🦋 などなど、見れば見るほどカッコイイで溢れてる曲でした。
ㅤ特に好きだったパートは、サビ前の静寂(夜が染めた――)からのサビの盛り上がり🔥
ㅤフユ, アブリルのCGの “スライドイン” のタイミングが完璧すぎて何回も見返しちゃいました……!!
【EX-ONE】月あかりランチ OPムービー
ㅤ🎬: https://youtu.be/Ip8mMfIX6hw


▫OTS
・🥇 1st『32. 重なる愛しさ』
ㅤHシーン曲。響き渡るジングルとテンポの佳い打楽器が特徴的で、CG - キャラ造形の完成度をシナジーとした “心地よさ” が最大の魅力です。
2度目とは思えないような教師と生徒の愛情と、湧き上がってくる気持ち。そこには原始的な美しさが内在していました……

・🥈 2nd「27. 開け放たれた扉」
ㅤ“卒業式” の曲。作中で鐘の音🔔が用いられたのは『月影の刻』開始を告げる不協和音のみだったので、あのイントロは卑怯でした……
(はつゆきさくら『風花』のアウトロっぽく🏫🌸)

・🥉 3rd「23. 手探りの授業」
ㅤ夜が始まる曲。使用されたシーンが極端に少なく(アブリル編・アキ編のみ)、この曲が流れると『いやなんだこの曲ッ?!』『bgmが良い~♪』の顔つきになっていました。
この曲が用いられていたシーンは二箇所のみ
・中庭の桜の木, アブリル
・アキとの講堂探し前, 作戦会議














◇最後に
プレイ前は「夜の学校が舞台のキャラゲー」だと思い込んでいたので、「“閉鎖空間的 - 学園モノ”(異世界転生者あり)」というありそうでなかったジャンルが展開されたことは、私をOZの世界に引き込みました!!

EX-ONEの新作が発売されないことがとても残念でなりません……
『真夏の夜の雪物語 -MIDSUMMER SNOW NIGHT-』🌻⛄もプレイしたいです!!