エロゲーのシナリオと小説のシナリオを同位に考える人はいるけれども、決してそうではないことを教えてくれる作品。つまり、このエロゲーほどテキスト以外(BGM、絵、萌え、エロ等)を削ぎ落とした作品はない。あるのは洗練された書体と大正要素とハードボイルド。しかしウリである上品さや淡白さが、残念ながらエロゲー層に好感を生むとは思えない…。小説で出すか、あるいはエロゲーでも2~3行のメッセージウインドウを廃して人物相関関係メモを付与されていれば、もっと評価は上だったはず
今は、その女を知る誰にとっても懐かしむべき、匂い紫の仄かな香りだった。
・ストーリー
昨年の秋、箱根のとある山林で牧野洵子(じゅんこ)という名の娘が死体で発見された
彼女は何者かに慰まれ、穢された後、絶望のまま自ら首をくくって死んだとされている
帝都で探偵業に身を置く「史絵」(ふみえ)は、稼業の師でもある同業者の八神から、この事件を譲り受けた
自殺としては不可解な警察の調書。洵子は何故箱根に独り、身を置いていたのか
洵子の妹、恵理佳が自動車の事故でどこかの病院に預けられているという話から、事件は加速する
プレイ時間は15時間。攻略√は一本道
極めて無駄という無駄をそぎ落とされた作品です
テキスト以外の要素はほとんど重要視されていなかったのではないかと思うくらい
途中にある移動パートも、時系列くらいしか役に立たず、必要性はあまりないかと
あまりに無駄をそぎすぎて、盛り上がりとかも欠けるといわれてもしょうがないかも…
とある殺人事件の調査依頼から事件の裏の謎を探る、よくある探偵モノ
…しかし、話を引きつけるだけのテクニックが今一歩に思えます
「Aという下っ端の裏にBがいて、さらにBを使うCがある極秘計画を…」
というような感じで次々に出てくるので、プレイヤーは「ふーん」と流し読みしがち
「実は最初から近くにいた○○が犯人だなんて…!」という熱い展開もありません
…あれ?なんか書いているうちに、小説としても微妙なような感じがしてきました
最後の方なんて明らかに続編を意識してますしね
しかしまぁ、よく時代考証とか言葉づかいを考えていると思います
良き大正時代の風俗とか、華人の生活とか、惹きこまれるのは確かかと
短いながらも、女性視点のエロがかなり官能的に描写されております。オカズには使えませんが
事件に係る人間がたくさん出てくるので、その人の裏背景がお座成りになりがち。どうしても1人に焦点が当たりにくいのも欠点かな
モヤモヤが残っているのは否めない。最後の有島氏や、宇田川との今後の関係、そもそも洵子はなぜ国家スパイになったのかetc
また、複雑な人間関係をプレイヤーが正確に把握する為にも、人間関係システムは欲しい
イノセントグレイあたりがそこら辺をよくわかってらっしゃるシステムになってますね
・総評
簡素でありテンポは良いが、エロゲーには不適であった。この一言に尽きると思います
孤高のヘリオトロープな史絵という女主人公視点は悪くはなかったです
ただ、それだけを売りにするには展開が弱すぎました
いやはや、エロゲーってのは上手くいかないものですね
・一言感想の羅列
①史絵と喬の背徳(?)な姉弟関係も大筋とはあまり関係なかった
②あわせて、すみ江と喬のペアも大筋とはあまり関係なかった
③さらに、史絵と静のペアも大筋とはあまり関係なかった
④おまけに史絵の婚約者が死んだ事件ってあまり関係なかった
⑤で、聞きたかったことなですが、大正時代の姉弟はみな一緒にお風呂入るんですか…