これほどの作品が2000年に出来上がったとは。EVER17もこれに比べたらまだこの作品の足元にしか及ばないと感じるに違いない。そう思わせるほどの魂、構成力、ある種のゲーム性がこのゲームに詰まっている。こんな18禁ゲームの「魅せ方」をする作品は、他では見たことがない
『
「年齢制限ゲーム」でないと、伝えられない言葉があります。
画像だけでは、文章だけでは書ききれない夢と渇望をページに挟んだ、
密室型ノベルタイプマルチエンディング・マルチストーリーアドベンチャーゲーム
それが、《書淫、あるいは失われた夢の物語。》です。
』
裏パッケージより
『
・ 本作はマルチエンディング・マルチストーリー形式のゲームで
す。複数のシナリオが存在するとはいえ、全ての物語がバラバ
ラに配置されている訳ではありません。それらはある一定のル
ールにしたがって構成されています。
・ 一度物語の週末を迎えたとしても、諦めずに何度も挑戦してみ
てください。もしかしたら前回とは違った行動が選択できる事
があるかもしれません。
・ 物事は近づいて集中的に見るのではなく、広い視点で、一歩離
れた地点から眺めてみた方が全体がつかみ易いものです。
・ 時にはあらかじめ用意されている選択肢だけでは伝えきれない
想いを抱くことがあるかもしれません。そんなときはキーボードが
あなたの手助けをしてくれるでしょう。
』
同封隠しread meより
なんとも挑戦的な煽り文句です。だが、そう言い切るほどの構成力と魂がこの作品にはあります
この作品こそまさに、PCゲームでしかできない「ゲーム」の完成形態と断言できます
・ストーリー
物語は「書淫」編と「失われた夢の物語。」編の2つに分かれています
2つには大きな違いがあります
書淫編は、主人公「N」が館に集まった少女たちを凌辱していく物語
失われた夢の物語。編は、主人公「僕」が彼女と共に、館で避難した人たちとの物語
ですが共通点もまた、あります
どちらも同じ名前・同じ性格・同じ立絵で大きな差異は全くありません
そして、どちらも館を舞台にして繰り広げられるということです
なぜこのような2つの物語を読み進めなければならないのか。なぜこのような同異点が存在するのか
この物語が最後に絡まって真の「物語」を生成した途端、猛烈な感情がプレイヤーに襲いかかります
その猛烈な感情こそ、2年後に発売されたEver17の最後をプレイした人なら味わった感情です
・Ever17との対比
Ever17をプレイした方には最後の展開が衝撃だった方が多いと思われます。私もそうです
ですがEver17よりも前に、その構成を練り上げ、かつ更に飛躍させたのがこの作品なのです
詳しく述べてみることにします。Ever17はなぜ書淫よりも足元なのでしょうか。その理由は主に4つあります
①書淫が2000年に発売されたのに対し、Ever17は2002年。約2年の差があること
②Ever17が2.34GB(私が所有するPC版裏パッケージより)なのに対し、書淫はわずか100MBで表現しきっていること
③Ever17は2つのシナリオから読み取るのに対し、書淫は2つのシナリオが更なる「物語」を作っていること
④Ever17がココ√までダラダラ読まなけらばならないのに対し、書淫はプレイヤーが物語を作らないといけないこと
④の意味が不明瞭に思う方が多いと思います
というのは、この書淫という作品は「普通にプレイしたら絶対に解けない」んです
ジグソーパズルを当てはめるように、作者と読者が一体となって作り上げる作品になっています
あまりにも独創的な選択肢、奇抜な暗号、選択肢をプレイヤーがキーボードで打つという通常では考えられないゲーム性もこれを裏付けるものと言えるでしょう
18禁ゲームの概念を超越したこの作品
今から8年前の作品&並々ならぬ評判でプレミア高騰しています
ですが、見かけたら即買いしてください。わずか100MBのゲームの中に、数万円の価値がありますから
深沢豊さんがまた筆をとり(欲を言うならば企業で)作品を作ってくれる日を切に待っております
・一言感想の羅列
①書淫編と失われた夢の物語。編は定期的に交互にプレイしてください。先に進めないところがあります
②失われた夢の物語。編では、彼女である深紗の立ち絵に注目してください
③絵は2000年発売であることを考慮してください。はっきり言って抜けません
④必ず全部のENDを出してください。本当に伝えたい物語がわからなくなってしまいます
⑤攻略サイトはどんなに苦しくても絶対に見ないでください。最後まで頑張れば報われます
⑥最後の物語を見たら、夕香里さんのところで「あの言葉」をキーボードで打ちましょう。あまりの物語の構成力に驚愕するはずです。この瞬間だけは冗談抜きに手が震えます
⑦ここまでプレイしてくださった方は、間違いなく胸を張って「書淫をやってよかった」と思えるはずです