アニソンバー「blue comet」で繰り広げられる人間関係が作品のコンセプト。キャラクターのビジュアル的可愛さはモブキャラを含めても安定しており、ここが一切ダメというハズレに感じるプレイヤーはいません。そんな楽しい空間ですが、個別ルートになると「blue comet」場面や他キャラの露出が一気に減ります。悩める人や気ままになりたい人が集うのがバーの本質ですし、「旅立ちは提供するけど、その後は自分たちで頑張れ」ということなのでしょうか。風呂敷が狭く、勿体ない印象な作品
休みもそれなりにあって、仕事のプライベートも、ほどほど充実している今の暮らし。
ただその中で、少しだけ……
趣味について語れない寂しさを、日々胸に感じていた。
・ストーリー
タクシードライバーの 山口徹也 は、どこにでもいる社会人。
そして彼は、アニメや漫画やゲームが大好きな―― いわゆる “オタク”。
それなりに充実しているが、周りに趣味を共有できる人がいないことが、少し寂しい。
そんなある日、彼は ひとりの女性客 を乗せる。
彼女の持ち物をきっかけに、懐かしいアニメの話で盛り上がる ふたり。
「わたし、こういうところで働いているんです。 よかったら、今度遊びに来てください。」
車を降りる時、彼女はそう言って名刺を差し出した。
“アニソンバー”と書かれたそこは、オタクな人たちが集まる場所であるらしい。
自分と同じような人たちがいる場所。ほんの少し興味が湧いて、訪れてみることに。
アニソンバーでの、共通の趣味を持つ人たちとの出会い。
それが、徹也の日常を、少しずつ変化させていく――
プレイ時間は10時間。攻略順は、BAD(朝井)→あきら→璃子→亜麻音→七瀬→実莉
6章まで共通ルート、それからは個別ルートになり全10章ほど。
章立てしておりますが、1章当たりの文量は少なく、1章20分くらいで終わってしまいます。
最初はアニソンバー「blue comet」でのヒロインらの触れ合いがあり、個別ルートになると完全にそのヒロインにシフトしてしまいます。
皆でわいわいする雰囲気が良い「blue comet」からヒロインオンリーの描写になるのは、なんとも寂しく感じてしまいます。というのも、個別ルートの起伏がそれほど多くないからです。
例えば、璃子は漫画家デビューへの夢と迫りくる就活という現実が山場なのですが、かなりあっさり。そもそも璃子がどんな漫画を描いたのかすら、よくわからないまま無事に連載漫画家へなってしまいます。
実莉はアニソンバーという名の水商売の自分が、主人公と付き合ってよいのかという世間体問題。七瀬は隠れオタクの自分が表に出せるのかという不安問題。あきら、亜麻音に至ってはどんな問題だったか覚えていない(プレイしたのが3日前なのに)。それほどまでにクライマックスが弱い。
「こんな問題あるよね。さて、乗り越えたら次はどのような展開になるのか」と想像していたら、最初の問題だけで終わってしまったという感じ。定価9,800円ならもっとボリュームが欲しいところ
・キャラクター
メインヒロインはいずれも高水準であるが、本作はサブキャラがとても優秀。ほぼ全てのサブキャラとのエロシーンがあるのもよいのですが、エロシーンまでサブキャラがどんな見た目のなのか一切不明(つまり立ち絵がない)であり、CGで初めてその姿がわかるという焦らしがGOOD。もっとサブキャラの容姿を想像できる記述があればなお良し。
(例)「彼女は長い黒髪をかき上げた」「赤い眼差しを向けてきた」とかあれば想像が捗る
主人公の職場の男キャラである田畑、渡部の両キャラもよい。田畑、渡部は人生の先輩としてアドバイスをしてくれる良い相談相手である。相談内容が中高生か何かを勘違いするような主人公の恋愛相談も考えてくれる。
【総評】
個別ルートになると「blue comet」の出番が少なくなること、物語がそれほど広がらないことが惜しい作品。
反面、キャラクターはもちろん、バーのTV画面で歴代あかべぇOPが流れる演出がすごいほか、エロシーン周りのシステムが快適(射精カウンター、外中田氏事前選択設定等)
……なんかこういう作品多いですね。シナリオをまとめる難しさを感じます。
【一言感想の羅列】
①前作未プレイでも特に問題ないと思います。私も未プレイですし。
②用語集でカクテル名がとても多く出てきます。紅茶は「古色迷宮輪舞曲」、カクテルは「働くオタクの恋愛事情」。あとコーヒーを覚えたいんですが、そんな作品ありますかね?
③東大理学部のてんぱりキャラ・和奏ちゃんのエロシーンだけがありません。ガッテム!
④毎回スタッフになりかしら奢る素敵な主人公。だけど付き合うと性欲魔人。まあエロゲーあるあるということで
⑤みのりん(29歳)。実莉さんが素でよかったよかった。
⑥あきらちゃんが食品販売会社のOLということ、攻略後に公式HPで初めて知りました。というかOLだったんだ。