「グロい」の一言では片付けられない良作。CGもさることながらプレイヤーの想像力をかきたてる拷問死系猟奇要素、狂気事件の中でヒロインとの愛を育む純愛要素、二転三転の展開でプレイヤーを翻弄するミステリー要素が適度に絡まっています。物語の前半で血液が逆流しそうなほど血沸き肉踊り、後半でまさかの展開に目頭が熱くなったりしたのはホントに久しぶり。じわじわと殺していくエグい描写やシチュが好きな方は尚更、そうでない方もプレイしてみてください。くけけけけけ
「く……取りこまれるか!医学は……凶器じゃない!!」
・ストーリー
医大に勤務する若き助教授、卓哉。彼は恵まれた才能をもち期待のポープとされていた
そんな卓哉の元に、ある日一通の手紙が届くが……差出人の名前が見当たらない
中には、一片の人の皮膚まで入っていたのだった
だが“貴方を世界で一番愛する女より”と書かれたその手紙は、その後何度も送り続けられた。
ついには主人公と親しい女性が嫉妬の標的となり、惨殺の様をビデオに収められ、卓哉に送りつけられる
『アナタに近づく女は、全て私が処理してあげます……』
追い詰められていく卓哉。だが狂った猟奇事件は、卓哉の隠された過去へとシンクロしていく
はたして卓哉の行く先には、どんな驚くべき結末が待っているのか……
攻略時間は15時間。攻略順は主人公視点→瑞穂視点→冴視点→TRUE
ザッピングマルチ視点の物語のように思えますが、実は視点によって全く展開が異なるのでご注意ください
猟奇描写が多いのは主人公視点だけであり、瑞穂や冴などの視点はみな純愛要素がかなり強いです
猟奇ゲーだと思って腰を据えた人は肩透かしを食らうことは必至です
またミステリーと書きましたが、ミステリーゲーとしては見ない方がいいです。理由は後に詳しく書きます
エロゲの中でも稀有なストーリーであり、インパクトは強烈
誰だって手紙に皮膚まで入ってたらイカれてると思います……
上記のあらすじのように、ストーカーまがいの人物から主人公が追い詰められ、次々とヒロインが殺されていきます
……そして、その殺され方がエグいです。しかも医学を舞台にしているせいか、医学的な拷問まであります
逆さ吊りや鞭打ちなんて当たり前。生きたままメスを入れられて解剖されたり、大量のヒルで失血死、硫酸で骨ごと溶かすetc
機械仕掛けとピアノ線で切断死、水を流しこませて破裂死、焼死、皮膚を大量の鍵フックで吊したり、はたまた中世の拷問まで
……う~ん、改めて列挙するとすごい。普通のエロゲじゃ考えられません
ただ規制のためか、内臓の露出などは少ないので安心してください。何を安心するのかはわかりませんが
付け加えるのならば、被害者が捕まる恐怖などももっと描いていれば……さらに良かったことでしょう
主人公編はプレイ中に衝撃の連続だったので、非常に引き付けられました
プレイしていて「こいつ犯人だろ?」と言う人が次に殺されたりというのがザラ
なので「一体誰が犯人なんだろう」と思いながら、軽快なスピードでクリックし続けていました
しかし主人公編では犯人は明かされません。瑞穂や冴視点を見ればわかるのですが……
結論からいえば、犯人は主人公編では絶対にわかりません。なぜなら、主人公編で死んだ人物が犯人だからです
死んだ人物を本物のように偽装しなければ絶対に成り立たないんです
これがミステリーとしてこの作品を見ない方がいいと言った決定的な理由です
後の不可解な点などはtn2241様のレビューで解決されているので参照なさってください
それ以外にも瑞穂が冴を手術して「姉さん…」と呟いている場面はいったいどういうことなのかわかりませんでした。解説求む
瑞穂編・冴編は主人公編からのパラレルワールドのような展開です
本来のマルチ視点の有り方を根本的に否定している気がするんですけど……そんなんだからザッピングPOVに意味ないとか書かれるんですよ
瑞穂編で瑞穂の過去や研究、犯人の姿がわかり、冴編で急速に纏められます
個人的に冴編はグッとくるものが多くて大変よかったです。グロばかりだと思ったら感動要素があったなんて……
特に病院のベッドの上の主人公と冴が話す場面は、エロゲー名場面に入ってもおかしくないと思います。名言だらけ
サスペンスとしては良くあるまとめでしたが、王道で無難だったのではないでしょうか
TRUE編は完全に瑞穂優遇シナリオです。瑞穂好きな私としては最高のまとめでした
そういえば瑞穂は本編でも凄惨な拷問は回避されていますし……製作者側も瑞穂がメインヒロインで人気が高いことをわかっていたのでしょうか
・その他
システム要素は結構マイナスが多いです
セーブデータは30。正直、ギリギリの数でした。もうちょっと欲しい
オートモードにすると途中で選択肢が来るまで環境設定ができないのは困ります
バックウインドウ動作不可はまだしも、バックログと既読スキップがないのはどうかと……
シーン回想は23。しかし、その半分以上は拷問であり、凌辱含めると22という大多数を占めます。つまり1つだけ純愛エロがあります
声は正直微妙かな?収録環境が悪かったかもしれませんが、明らかに無理した喘ぎ声を出している人もいたり
猟奇ゲーなのですから、悲鳴とかはもうちょっと力を入れてほしかったです
・総評
猟奇要素・恋愛要素・ミステリー要素が混在しているこの作品は、雑食ユーザーに最適かと思います
グロの一辺倒だけでプレイするのはあまりお勧めしません
ミステリーとしての欠点やシステム面にマイナスが多いものの、私が一番評価しているインパクトは抜群でした
さらに、お気に入りだった瑞穂の扱いが物凄く良かったのも影響しています
私と同じような好みの人は、プレイして損はしないでしょう
ただ、この作品はどうしても「螺旋回廊」と比べられてしまうのが悲劇なのかもしれません
美遊は本当に私に合った作品が多いみたいなので、他の作品にも手を出してみたいと思います
・一言感想の羅列
①由良のムカつき具合は異常。ああいう悪役たる悪役がきちんと書けるのが美遊の良いところ
②2番目に好きだったまなみちゃんは……残念なことに…
③響子さんっていったい何のために出てきたのか、いまいちよくわからない
④理事長や主人公の父との話もぜひ見てみたいと思ったのですが、尺が足りないのかカットされてしまいました
⑤人間誰しも裏の顔と言うものがあります。くれぐれも現実でも気をつけて……
⑥犯してしまった過ちを……なかったことにはできない。でも……いつか……違う形で……返していくことは……できる……