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G-hunterさんのボクの彼女はガテン系/彼女がした事、僕がされた事/巨乳妻完全捕獲計画/ボクの妻がアイツに寝取られました。の長文感想

ユーザー
G-hunter
ゲーム
ボクの彼女はガテン系/彼女がした事、僕がされた事/巨乳妻完全捕獲計画/ボクの妻がアイツに寝取られました。
ブランド
elf
得点
90
参照数
14000

一言コメント

私が90点以上の点数をつけたのは、なんと2年2ヶ月ぶり。その沈黙を打ち破った傑作。この作品の展開や微細なプロットや表現や描写が素晴らし過ぎて、萌え・怒り・寂寥感・興奮等々、プレイしていてありとあらゆる感情が混ざり合って、訳が分からなくなる。とてもじゃないが、この味わった感情を文章で表現することは不可能だと思う。私自身は寝取られ耐性はない方だが、耐性がない人ほどやってほしい。禁断の扉を開ける魔性の作品。この作品をプレイした直後だと、他作品は「子供のままごと」としか見れなくなってしまいます

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

精神的に満たされる事が、どんなに幸せか…。それをわからない人が、子供です













・ストーリー
「ボクの彼女はガテン系」
ある土建屋のアルバイトに巻き込まれた主人公
なんとそこのチーフは、わずか19歳の美少女だった!?
互いに恋に落ちていく過程を、結婚した直後の社員旅行で振り返る作品

「彼女がした事、僕がされた事」
知らない間に妻の様子がおかしい
子供が生まれてから、だんだんと疑念を湧くようになっていく主人公
そして、再びの社員旅行。なんとその場で、妻は元上司とセックスをしていた……

「巨乳妻完全捕獲計画」
19歳でGカップ、それでもって男勝り
そんな極上品に手をつけない理由はない。なんとかして自分のものにしてやる
そう意気込んだ男は、あらゆる手を使って女に近づき、肉体的に調教を始める……

「ボクの妻がアイツに寝取られました。」
妻と元上司とのセックスがいまだに信じられない主人公
そこで明かされる驚愕の関係
事実を突き付けられたとき、主人公と妻はいったいどうなってしまうのか


※本作はオムニバス形式に見えて、1つの作品です

プレイ時間は14時間。攻略√はFin1→Fin2、その他全END
…とんでもない作品が出てしまいました。心をここまで鷲掴みにされた作品はありません
萌えゲーでもあり、鬱ゲーでもあり、抜きゲーでもある本作
しかし、そんなジャンル分類をするには、この作品に対して何とも失礼な話です
全てのジャンルがミックスされ、それが各々のジャンルを補完しあって最高峰に仕上がっています

その根幹としては、メインヒロインである美咲の素晴らしい魅力です
勝ち気で男勝り、それでいてどこか乙女な彼女。基本を抑えています
ただ、最も魅力的なのは、結婚した後で淑女としてきちんと「奥さん」しているところではないでしょうか?
「だらしないな、タナカ」が、いつのまにか「もう、マー君ったら…」という感じ
約10年に渡って、美咲というヒロインを書ききった手腕は、もはや誰も文句のつけどころはないと思います

美咲の声優も、迫真に迫る演技でプレイヤーを惹きつけます(茶谷やすらさん?声優には詳しくないのでわかりません)
会田との逢瀬での、「落ちる落ちる落ちる…」→「気持ちぃぃ、こんなの知らない…」は爆発力が物凄いです
思わず「おおおぉぉぉ」って興奮と絶望感で、胸が引き裂かれますね
その後、徐々に美咲が「開発」されていく様を見るのは、あまりにも辛い。でもどこか、身近にありそうな気がして怖いです

プレイヤーの感情を、これでもかと揺さぶる土天冥海さんの筆力は、間違いなく天下一品です
文章だけでここまで心を抉ってくるものなのでしょうか
それだけではなく、約10年という莫大な時間における、プロットの緻密な組み立てにも注目です
「あの時、実は彼女は●●してました」という事実を知った時に悶え苦しむのは必須
必要最低限に描写された伏線は、ほぼすべて消化して鮮やかに描き切っています。塩原君の殺人とか
最初の旅行での宴会場から罠を仕掛けられていたとは、気付かなかった…

はたして、キズナとは一体何なのか?
快楽におぼれながらも「心はマー君のもの。すべては家庭を守るため」と美咲が言っていたのはキズナなのか?
「そうはいっても、会田のチンポを受け入れた時は、あいつを愛していたんだろ?」と信じられない主人公は悪なのか?
「どんなに体を開発されようと、あいつの心は俺のものではなかった」と逆に嘆く会田の心に空いた穴はなんなのか?
不器用ながらも(というか、歪な形で)Fin2では、前に進み始めた2人ですが…
一番この作品で面白い場面は、主人公と美咲が互いの考え方を理解しあえていないところですかね
Fin1のラスト、珍年がナオとヤり、塩原君が美咲とヤる中で、主人公の精液が壁に飛び出すところの表現も、虚しさ100%で名場面
「それは惨めにハラハラと飛び散り。ゆかりもない雑草の養分となる」

Fin1もFin2も、どちらも名ENDだよなぁと思ってしまいます


・総評
ありとあらゆる感情に焼き焦がされてしまうほどに傑作
美咲の魅力を最大限に引き出し、プレイヤーを痛めつけるほどの仕打ちを表現しきったからこその納得のいく評価
これほどまでに心を打たれた作品は、ここ数年また出ないような気がします
もはやFDなんかは不要です。最低限の情報しか出さなかった広報戦略は大正解
これほどの高得点ですから、みんな直接DLで買ってelfは利益が出せると思います
パッケージで出してしまうと、中古で買う人がどうしても増えてしまいますから…


・一言感想の羅列
①美咲の写真に精液をかけていたのが、実は大将だったというのはかなり驚いた
②黒川や珍年といった、極めて人間的な人たちの描写もよかったですね
③歳を重ねるにつれて変わる美咲の髪形のバリエーションもまたGOOD
④結局、マサキはどちらの子供か不明な点も、プレイヤーの心に爆弾を埋めています
⑤最初のセリフはナオのスワッピングでのセリフ。このセリフを言った彼女は、その直後に珍年のチンポによがるのが、なおいっそう主人公とプレイヤーを惨めにさせてくれます
⑥美咲視点がないからこそ、プレイヤーは美咲の本心を永遠に探ることになります。美咲視点をバッサリなくしたのは英断です
⑦2011年、きっとこれがなかったらエロゲー引退してました