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G-hunterさんの-atled-の長文感想

ユーザー
G-hunter
ゲーム
-atled-
ブランド
-atled-制作委員会
得点
55
参照数
1577

一言コメント

シナリオも絵もそこそこであり、演出が物凄くてフルボイス、かつvocal曲が多い。同人としてはこれ以上ない良質な部類に入る作品なのでしょう。皆様の評価が高いのも頷けます。しかし私は、この作品は同人として最も重要な要素が欠落しているように見えました。わざわざ制作委員会を立ち上げたにも関わらず、感情を揺さぶるものが無かったのが残念です

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

変えたいと思う過去は後悔でしかない。でも、変えたいと思う未来は、夢や目標になる






・ストーリー
小さい頃からずっと一緒だった親友が大怪我をした
その親友を救うため主人公"石巻あおば"は願い事がかなうという一冊の本を手に取り、過去へとさかのぼる
しかし目を開けるとそこは17年前の世界だった
主人公の純粋で真っ直ぐな思いは、しだいに周りの人を動かしていくのでした


※コミックマーケットの同人ブースで購入した作品でありかつ同人価格のため、私は同人作品として評価します
攻略時間は7時間。攻略順序は固定→晃司ロック→希生存
パソコンパラダイスというところの記念号付録として付属してきた作品のリニューアル版です
有名な同人サークルに依頼をして、共同制作で作られたみたいです
制作経緯が珍しく、同人業界の新しい風となるかもしれません

主人公・あおばが麻智を救うために過去に戻るところから話が始まります
ですが、段々とその軸がぶれていくのが目につきました
麻智を救うために過去に戻ったにもかかわらず、いつの間にか話の焦点はあおばの両親や晃司に移ります
別にそれだけならば、主人公を通して様々な影響を与える…というありがちなことなのですが
麻智の未来を変えられない→でも、あおばの両親や晃司を通じて変化が起きた→17年後の麻智の未来が変わる
これっていくらなんでも論理的に飛躍しすぎている気がします。ご都合主義的というか
たいして17年前と今との出来事をリンクさせていないのにもかかわらず、どうしてこうなるのかが疑問でした
複数ライターが影響したのか、力の入れ具合がバラバラ。テーマ性はわかるのですが……

そしてここが重要な減点要素なのですが、同人らしさが見当たらないんですよね
若さというか、情熱が伝わってこなかったです
歌や演出は質が高くて気迫が伝わるのですが、あくまで『みんなで1つの作品を完成させること』にしか気持ちが無いのではないかと
『atledを完成させて何を表現したいのか』がよくわからなかったのが最大の欠点です
同人ゲームは往々にして、表現を重視して話が破綻したり転々としたり、独りよがりになったりすることが多々あります
私は、その作者の思い・伝えるものが見たいから、同人ゲームにも手を出し始めました
同人ゲームというのは作者が暴走するくらいがちょうどいい
読み物でも抜きでも、同人でしかできないことをしてほしいのです。商業作品を劣化させただけの物は、もはや同人ではありません
胸がワクワクする感情が湧きあがってこないのは大きなマイナスでしょう


・システムなど
一通り揃っているのですが、場面が切り替わるごとにスキップが止まるため、2週目以降は若干イライラ気味
物語の合間にボーカル曲が流れるのは好感触でした
ウインドウの大きさを自由に変えることができるのも助かります
絵は同人としてはそれなり。人物よりも背景の絵が好きでした
ボーカル曲は凄かったです。本編やった人は、ほぼみんなCDが出れば買うんじゃないでしょうか?


・総評
商業作品とみるならば、低価格な良作。同人作品とみるならば物足りないという感じでしょうか
話は割とテンプレなので、過度な期待はしない方が吉です
過度な期待をすると私みたいになってしまうと思うので……
制作委員会は現在解散しているのでしょうか?CDがあるなら買いたかった


・一言感想の羅列
①主人公・あおばのノリが合わなかった
②栄とか逢瑠、美鈴らともっと絡ませてもよかったのに、どうも影が薄い
③正史ENDというか、未来が変わらないENDが無かったのは正直残念
④一番好きなキャラは晃司。ロックだぜ!
⑤今後、商業から委託された同人サークルらがグループを作って作品を作る手法が増えるのでしょうか