ErogameScape -エロゲー批評空間-

G-hunterさんのウソツキと犬神憑きの長文感想

ユーザー
G-hunter
ゲーム
ウソツキと犬神憑き
ブランド
工画堂スタジオ
得点
30
参照数
1635

一言コメント

茫然自失とはこのことでしょうか。ホントにこれがシンフォニック=レインを書いた人の次回作なのか。何も伏線が明かされてないじゃないですか。……ちょっとシンフォニック=レインを神格化しすぎたみたいです。しかも全員ボイス無しで起動ディスク認証が長ったらしいと、システム面でも不満大有り。まさに久々の悪夢です。こんなDVD-ROM1枚(ただし680M)に8500円出してしまったのは正直痛い。主に心が

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「きつね、こわいね」「そうだね、こわいね」「ざっき、たべようね」













・ストーリー
黄昏時には森へ近づくな

父は、そうよく言っていた
でも僕は時々、こうしてあてもなく森の近くを歩くことを止めなかった
山の麓にあり、地平線を見透かすことのできるこの場所に来ると、不思議と心が落ち着いた
……いや、正確には逆なのかもしれない
普段の自分の、自覚のある冷め切った心が、理解できない高揚感で満たされていくような気がする

――その時だった

道に、転々と赤い液体が垂れている。血……だろうか?
まだ乾ききっていない赤黒い液体が、夕日を浴びて妖しく光っている
そして――獣の臭い。おそらくは、鬼――キと呼ばれる存在
幼い頃から、僕には見ることも、感じることもできなかった
にもかかわらず、直感的に、僕はこれがそうなのだと理解していた

――黄昏時には森へ近づくな

自分でも理由を見いだせないまま、その血を辿るように、足が勝手に森へと向かっていくのを止められなかった



プレイ時間は20時間。攻略順序は衣織→3人娘→彩紀→芙蓉→百夜
とりあえず、インストールの時点でかなりヤバいなと思いました。怒涛の700M以下
さらに加えて、毎回出てくる認証時間がウザいことこの上ないです
ちなみにウインドウ画面がかなり大きめで、文字も大きい。5m離れても余裕で字が読めます
また、独自の省略キー(例えば、オートモードがF3、スキップF2、文字消しがS)がわかりづらいです

さて、詳しく見ていきます
まず、この作品に「シンフォニック=レイン越えか!?」という過度な期待はしない方がいいです
はっきり言って未完成というか、話の核心が全く触れられていません
「ウソツキと犬神憑き」なんてタイトルですけど……そもそもウソツキって何者なのでしょうか?
百夜√で主人公の大叔父にあたる兼定に対してマジギレしてるくらいしか特徴が無く、彼になんの接点があるのか不明
というか、そもそもこのウソツキと言うキャラクターがこのゲームにいなくても全く問題ないです
犬神は犬神で、ツンデレなところをみせる可愛げのあるお犬様なのですが、彼が望んだ知りたいことがまた不明
しかも主人公と犬神は契約されてないことが発覚して……じゃあなんて犬神はいるのか
大体のところで言えば、きっと人間と触れ合ってみて学ぶ心情か何か(=知りたいこと)を知るためだと思うんですが…
この時点で「ウソツキ」も「犬神」憑きも伏線回収されていないんです
そうなると、タイトルから言って崩れてしまいます。まだ「家鳴りとツンデレ犬神」の方が個人的には好感が持てます

序盤はホントに面白かったです
家鳴りがいきなり背景に現れて眼をパチパチしていたり、衣織の好き好きビームが観察できたり
犬神が段々と神社の面子にデレてきたり、いい日常生活の雰囲気でした
ところが、個別√に入るとその流れも一変します

まず衣織√ですが、普通のエロゲーとなんら変わらない展開です
主人公好き好き衣織がいないことで主人公は衣織への秘めた気持ちに気づき……という有りがちな話
なーんか黄泉の道に行くことになったところあたりで、プレイしてた気持ちはつまらなさでドン底

次に3人娘√
いきなりですが、この中で元妖怪の人間がいます!という高らかな疑問が投げかけられてちょっと惹きつけられます
しかし、すぐに元妖怪の子が判明。その子曰く「たたり神に触れたらそういう記憶がわかった」
ちょっと待ってよ!プレイヤーにわかりやすい伏線とか張らずに勝手に決めちゃうの!?
わざわざ√初めから読み返した私の作業は全くの無駄でした。後出しは反則ですよ……
加えて、主人公は元妖怪を助けた記憶もないし。当然、プレイヤーにも情報は明かされません
あと、黒装束は数人~十数人で活躍するとか言いつつ、20人以上いませんか?しかも素人相手にしては戦闘弱いし
しかもたたり神を元妖怪が取りこんだら、なぜか他の面子がみな生き返るし……なんですかこれは

そして彩紀√と芙蓉√
話的にはこれが一番良かったのか…?と言いたいんですが、それでも普通の出来栄え+尻切れトンボ
芙蓉√はお互いに全快で回復するし、肝心な芙蓉が契約から一歩踏み出した後の描写もありません
彩紀√も、彩紀の母親からの手紙を渡されて涙してEND……って、村は既に滅んでますけど!?
衣織√や3人娘√にあった後日談はどこへ……?

物語ラストを締めるのは百夜√
メインの衣織と物語の双肩を担う彼女は一体どんな√が……あれ?√に入ってから30分で終わったぞ?
ちっとも謎が明かされないまま、なぜか神社の内部紛争になっています
しかもこの√に出てきた兼定は実は死んでいて、式鬼となって百夜は操られている?
他の√で出てこないキャラがいきなり出てきておいて、何言ってるんだコノヤロウ!と言ってやりたいです
実はこの段階ではまだシンフォニック=レインみたいにal fine的なものがあると思ってたんです。…ありません
ウソツキと犬神憑きっていったいなんだったのさ?私にはわかりませんでした


・キャラやCG、システム
キャラは良かった。個人的に良いのは犬神、芙蓉……そして家鳴り
見事に妖怪だらけになってしまいました。でも、こいつらが好きです
CGはかなり少なめで、グラフィックの部分でも正直ガッカリ
しかし、立ち絵はそれなりに良いです。お気に入りの芙蓉をはじめ、上手かった
システムは明らかに不足気味……といいますか、ボイスが無いのでその関連のシステムがないだけでしょうか
使い勝手は悪いです



・総評
典型的な爆発物でした。明日になったら投げ売りに行くレベルです
明らかに伏線回収されずに尺不足。投げ出し感がヒシヒシとプレイヤーにも伝わっていきます
あと、音楽においても特に光るモノが見当たらなかったのも地味にキツい
シンフォニック=レインは偶然の産物だったのか。そうは思いたくないけどなぁ……残念



・一言感想の羅列
①いきなり壁のそこらじゅうに目が出てきたときはかなりビックリします
②芙蓉がいなかったらもっと点数は↓でした。狐娘さまさまです
③3人娘√は結局誰を選んでもあまり展開が変わりませんでした。しょせん脇キャラか
④犬神様萌え。これはきっとだれもが思うはずのこの作品の長所です
⑤女心に気づかないのに、3人娘ではハーレム状態に。このニブチン主人公が!
⑥でも、特典のドラマCDは面白かった。特に3人娘。声ぴったりです
⑦大丈夫か、工画堂。ちょっとこんな作品を出すのはマズいぞ