そんなに悪い作品ではないのですが、点数が高くないのは、長所よりも短所が目立ってしまうからでしょうか。サーカスが今までの路線を脱却して新たな方向性を模索しようとする頑張りは読み取れました。個人的には１本筋の通った、ゆかり１強なゲームだったのですが、彼女がカッコいいところを見せる√は彼女の√ではない√という……。個人的に沙夜√は大好きな展開でした。この√は必見です
「男をとった舎弟を消して、それで私の面子が保てると思う？」
「次期組長が、舎弟の『お下がり』を喜ぶと思うの？どれだけ私に恥をかかせる気？」
「祐司……わびさびって解ってる？」
・ストーリー
転校してきた主人公・荒川祐司。新たな学園で心を躍らせていた訳ですが…
全校集会の最中にいきなり学校が占領され、校舎は爆破され……
そこにやってきたお嬢様、華麗に新校舎を建てると一言
「今日からこの学校は青春禁止です！」
……いったい主人公たちはどうなってしまうのでしょうか？
宣伝文句から考えてバカゲーとはわかっていました
しかし、さすがは大手のサーカスです。バカゲーの枠を大きく飛び越えていました
開始５分のこの展開から既に全力投球をしてきました
先生、主人公に眼鏡が落ちたから拾ってくれるよう頼む
↓
主人公、眼鏡を探すも落ちていない
↓
主人公、そのことを先生に告げる
↓
先生「最初から眼鏡なんてかけてねーよ、アホかおめぇは」
もはや一般人にとっては理解不能な展開です
きっとライターさんが開始早々、頓挫してしまったのではないでしょうか
いきなり戦車や戦闘機が襲いかかってくるシナリオですから、ライターさんの苦悩もお察しできます
そしてその次に待っていたのが主人公の自己紹介
転入して一発目の自己紹介、これこそがこの後の学園生活を楽しく送るための分岐点
主人公がとった自己紹介の方法、それは……！
「俺が件の転校！生の荒川祐司っ！みんな４６４９三世っ！チェゲラっ！！」
「至って普通のオチャメなシャイボ－イ！趣味はプラモにゲームのインドァッ！！」
「たまに無駄にアグレッシブ！イェアァー！！ＹＯ！！」
……原文のままに引用させていただきました
ライターさん疲れてるんですかねぇ。後で読み返して、これでいいのだと満足したのでしょうか
きっとこれはあれですね、サーカスから私たちに与えられた試練なのです
京都の老舗がぶぶ漬けを出すように、サーカスが私たちにぶぶ漬けを出しているのです
「このような我々の高貴な笑いについていけないなら、即座にアンインストールして売却せよ」
まさにこの笑いを理解できるようなツワモノでなければ、こちらから願え下げだ。そんな考えすら伺えます
ユーザーの１歩先を行く、サーカスの己の道というのを改めて認識させられました
……あれですよ！？ちゃんと面白い笑いもありましたよ！？…フランダースの101匹わんちゃんとか
√は全部で綾香、ゆかり、絵梨、沙夜４つです。詳しくはキャラのところで
綾香√は綾香の家である白凰院家との話
ゆかり√は極道である鬼咲組との話
絵梨√は過去の絵梨のトラウマの話
沙夜√はゆかり√からの分岐で決闘する話
・キャラクター
プリンセスパーティーでは多彩なキャラが出るものの、攻略できないヒロインもまた多いです
せっかくだから、フルプライスで２人も攻略できるようにしてほしかったです
「攻略可能な方々」
白凰院綾香 白凰院家のご令嬢。破天荒な青春禁止令を出した唯我独尊型
鬼咲ゆかり 鬼咲組の次期組長。曲ったことが嫌いのツンデレお嬢様
厳島絵梨 主人公の幼馴染。いわゆる巨乳天然ポジションの子
坂上沙夜 鬼咲組でゆかりの腰刀。戦闘メイドにありがちな能力はたしなんでいる
「攻略不可能な方々」
霜山椿 三十路に届きそうなちっこい先生。酒が大好きで若い学生に嫉妬するお年頃
朝宮夏奈 バイト先の方。ＯＰムービーだとクールっぽいけど、実際は電波ゆんゆんな子
綾香√は、自分で青春禁止令を出したものの、結局青春してしまう綾香と主人公の葛藤モノ
初々しさを味わいたい方以外は、それほど楽しめないかも……髪をおろした綾香が一番良かったです
最後のオチは……リアルだとさすがに不可能だと思う
ゆかり√は、何かとコキ使っていた主人公に素直な気持ちを表せないゆかりのジレンマモノ
典型的なツンデレシナリオといったら語弊があるかもしれませんが、大筋はそのとおりです
いわゆる、安心して見れる「とりあえずビール」的なシナリオでしょうか
絵梨√は、幼馴染な絵梨のニブさにイラつく主人公と、主人公と恋しない理由を抱える絵梨のすれ違いモノ
もう３桁以上エロゲをやっている人にとっては、もう十数回はみたであろう展開
私の場合は最初にこの√だったのでヘコみました。次の沙夜√が凄く良いシナリオに見えました
沙夜√は、ゆかりが主人公のことを好きだと分かっているのにもかからず、恋をしてしまった沙夜の背信モノ
この√が一番のオススメです。正直なところ、ちょっと泣きそうになりました
ゆかりがカッコよすぎて……こんな子がいたら男女問わず惚れます、尊敬します。さすが次期組長
サーカスが沙夜√のような、極道・任侠モノを世に繰り出したのは予想外でした
サーカスと言えば定番のダカーポ商法で荒稼ぎしているようなイメージがあります……
しかし、新しい道の模索しようという努力が、この沙夜√には表れていたのではないかと思います
言葉遣いが徐々に変わっていくにつれる迫真の演技に飲み込まれてしまいました
そういった意味では、この作品をやってよかったのかなと思いました。収穫がありましたね
・絵、エロ
エロは綾香３回、ゆかり３回、絵梨３回、沙夜２回の合計１１回
抜きゲーではないのですから、エロの少なさを嘆いても仕方ありませんね
絵は大変素晴らしく、絵買いした方も少なくなかったのではないでしょうか
構図も特に変なところはなく、安定した画力が伺えました
それと、ＳＤ絵が可愛かったです。ＳＤ絵って立ち絵よりも好きなことってありますよね
・システム
毎回フル画面/ウインドウズ画面を選べるのはサーカスの特徴あるシステムですね
それゆえ、声の小ささもやはりサーカスでした。特に綾香のボイスはかなり音量が低かったです
オートの調節が微妙な点もやはり気になりました。オートが遅すぎる気がします
バックグラウンド不可なのも減点。そろそろエロゲ業界はバックグラウンド可をデフォルトにして欲しいです
メイン・サブヒロイン以外のキャラにはボイスすらありません
……つまり、総じて言うとシステムはよろしくないです
章の開始に毎回ある夏奈の小ネタ蘊蓄話は、特別に加点要素にしておきます。タメになったので
・総評
5800円という価格を考慮するならば、それほど駄作ではないかと思います
しかし、それはあくまで佳作の領域。個人的には沙夜√がよかったのですが、良作には届かないかな～
せっかくだから、サブヒロインを昇格させてシナリオ作ってフルプライスで良かったのでは？
ＤＣ系は初代しかプレイしたことが無いのですが、サーカスの独自路線の開発を楽しみにしたいと思います
・一言感想の羅列
①サブヒロインを昇格～とか言ったのですが、もう続編があるとか。さすが曲芸、商法がうまい……
②絵梨さんが滋養滋養うるさいです。彼女のせいで小松菜のおひたしとニンニクの醤油漬けを作りました
③さすがにメイド服を呉服屋が作るのはどうかと思う
④主人公ってどうしてこんなに女みたいなイケメンなのに動作が変態なんだろう
⑤主人公の顔が、樋上いたる原画家のＢＬゲ「ぼくらはみんな、恋をする」琴那くんにソックリ！性格は違うけど
⑥そういえば、主題歌のサントラを買ったら結局フルプライスを支払ったことになるのではないだろうか……
⑦「最後に……お嬢と……呼ばせて下さい」