緊張感ある展開と謎で先が気になるストーリー。主人公が仲間や幼馴染の為に殺人犯に立ち向かう姿がとても魅力的だった。
大切な人を奪われた主人公は、事件の犯人を追い求めて、故郷桜乃杜の謎に立ち向かう。
本作の流れとしてはこの一文で概要説明が出来るでしょう。
テンポの良いテキストとホラー&サスペンス描写が、プレイヤーの続きを読みたいという気持ちを掴むことに成功しています。
過去の人たちとの悲しい離別、新たな仲間たちとの協力、猟奇殺人犯たちとの心理戦、そしてまどかとの絆。
それらの伏線がロジカルに組まれたシナリオで、一見理不尽な世界観にも気づけば入り込んでいます。
限られた人間にしか見えない存在などのファンタジー要素を、理由を練って現実に組み込んでいるのは流石だと感じました。
ホラー描写に関しても、ただ怖いだけでなく『ありそうな』をイメージさせてくれたのは、テキストの読みやすさも大きかったと思います。
そんなストーリーであるこの作品が、他のサスペンスノベルと異なる点は、一人のヒロインの存在でしょう。
幼馴染である主人公に惹かれていた『秋津 まどか』は、非情な事件に巻き込まれその未来を奪われてしまいます。
主人公は犯人を憎み、その存在を追うことを決意します。
魂となって再会したまどかと共に。
彼女は死してなお主人公の側で彼を見守り、時には励まし、時には叱咤しながら、自分を殺害した犯人を追う主人公をサポートします。
同じ目的を持った4人のヒロインと主人公が街の謎に立ち向かう中で、幽霊である彼女は常に彼らの味方であり続けます。
主人公が一人で窮地に立たされた場合でも、幼馴染の幽霊が側にいることはプレイヤーに一つの安心感を持たせてくれています。
そんな献身的な彼女も既に命を失っているので、主人公と結ばれることはありません。
シナリオ後半で精神的に救われたまどかですが、主人公との未来は閉ざされてしまっています。
続編開発の予定が示唆されているので、主人公とまどかの絆が現実的な意味で報われることを期待しています。
全体的に今後の作品が期待できるクオリティだったと思いますので、サスペンス好きの方は是非手に取ってみてはいかがでしょうか。